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マイケルsideー元侍従と接触してみた
私は、レイラ男爵家の侍従だった男に接触した。この男は酒好きで、週末は必ず行きつけの酒場に現れるらしい。私は、黒髪のカツラをかぶり、だて眼鏡に口ひげをつけた。酒場は薄暗いし、私がマイケル・カリブ伯爵だとバレることはまずない。
酒場に着くと、カウンターの隅でその男が背を丸めて安酒を飲んでいた。私は、ボックス席に陣取り、店主にその男に最高級のブランデーを出すように指示した。
「私の奢りだと言ってくれ。あいつは、亡くなった兄貴によく似ている」
もちろん、私に兄貴などいない。口からでた出任せだ。その男は、すぐに奢られたブランデーのグラスを持って、ボックス席までお礼を言いにやって来た。
「ここで、会ったのもなにかの縁だ。一緒にここで飲もうじゃないか?」
誘うと、大喜びでそこに座り自分から身の上話を始めた。酔っ払いは、尋問の手間が省けてありがたい。レイラ男爵家のことを言い始めたときには、内心ほくそ笑み、もっとしゃべれ!とエールをおくった。
「私は、レイラ男爵家の侍従だったんですよ。あそこは、少し前までは準男爵家だったのに、グレイス様のお兄様のカリブ伯爵の力で、今は『我が世の春』ですよ。しかし、カリブ伯爵もバカだな」
「カリブ伯爵かい? あぁ、愚か者だよ。嫡男のくせに家出する男なんてバカとしか思えない」
私は、反省の意味も含めてそう言った。気をよくした元侍従が、さらに口を滑らせた。
「本物のグレイス様は、そりゃあーーお綺麗な方でしたよ。上品で華やかで。それも、気にくわなかったんでしょうな。あの強欲ババァ達は、グレイス様に子供ができないことを理由に、”子供も産めない役立たず”と罵倒しました。
あれは、見ていて辛かったなぁ。『子供を産ますために買ったんだ』と言うババァには天罰が下ればいいと思いましたよ」
私は、その言葉に同意を示す意味でもう一杯、ブランデーを奢ってやった。
「そのうち、飯もろくに食わせないようになってね。当主が愛人を連れて来て、グレイス様は雑用女にされたんです。それと同時に昔からいた使用人のほとんどが入れ替えられましたよ。私は、いきなりクビになったんですよ。まったく酷い話だ。今のグレイス様は多分、あの愛人だと思いますね」
「ほぉ、面白い話だな。じゃぁ、本物のグレイスはどこにいるのだろうか?」
「さぁ、わかりません。私は、辞めさせられて、その後のグレイス様は知らないんですよ。あ、でも一度だけそこの侍女と話をしたことがあったな。ババァがグレイス様に灰色の染料を頭からかけたと言っていました。むごいことをするじゃぁありませんか! 私は、クビになって良かったですよ。あんな胸くそ悪いババァはいないです!」
灰色の染料だと? この世界では『髪は女の命』とまで言われているんだぞ! あのクソババァは、絶対許さないからな!
「おそらく、グレイス様はあいつらに殺されて、裏庭にでも埋められているかもしれない。そんなことすら平気でしそうな極悪人ですよ。あるいは、娼館にでも売られたかもしれないです。世の中はおかしいですよ。そんな極悪人が得意気な顔をして、グレイス様の兄上の恩恵をうけている。カリブ伯爵は大バカ者だ!」
あぁ、間違いない。私は、大バカ者だ。妹がそんな辛い目にあっていたことも知らず、冒険者として面白楽しく旅をしていたのだから・・・・・・
「君は気にいったよ。私の屋敷に今から来なさい。正式に雇おう。私がその大バカ者だ」
私は男に、ニヤリと笑いかけたのだった。
酒場に着くと、カウンターの隅でその男が背を丸めて安酒を飲んでいた。私は、ボックス席に陣取り、店主にその男に最高級のブランデーを出すように指示した。
「私の奢りだと言ってくれ。あいつは、亡くなった兄貴によく似ている」
もちろん、私に兄貴などいない。口からでた出任せだ。その男は、すぐに奢られたブランデーのグラスを持って、ボックス席までお礼を言いにやって来た。
「ここで、会ったのもなにかの縁だ。一緒にここで飲もうじゃないか?」
誘うと、大喜びでそこに座り自分から身の上話を始めた。酔っ払いは、尋問の手間が省けてありがたい。レイラ男爵家のことを言い始めたときには、内心ほくそ笑み、もっとしゃべれ!とエールをおくった。
「私は、レイラ男爵家の侍従だったんですよ。あそこは、少し前までは準男爵家だったのに、グレイス様のお兄様のカリブ伯爵の力で、今は『我が世の春』ですよ。しかし、カリブ伯爵もバカだな」
「カリブ伯爵かい? あぁ、愚か者だよ。嫡男のくせに家出する男なんてバカとしか思えない」
私は、反省の意味も含めてそう言った。気をよくした元侍従が、さらに口を滑らせた。
「本物のグレイス様は、そりゃあーーお綺麗な方でしたよ。上品で華やかで。それも、気にくわなかったんでしょうな。あの強欲ババァ達は、グレイス様に子供ができないことを理由に、”子供も産めない役立たず”と罵倒しました。
あれは、見ていて辛かったなぁ。『子供を産ますために買ったんだ』と言うババァには天罰が下ればいいと思いましたよ」
私は、その言葉に同意を示す意味でもう一杯、ブランデーを奢ってやった。
「そのうち、飯もろくに食わせないようになってね。当主が愛人を連れて来て、グレイス様は雑用女にされたんです。それと同時に昔からいた使用人のほとんどが入れ替えられましたよ。私は、いきなりクビになったんですよ。まったく酷い話だ。今のグレイス様は多分、あの愛人だと思いますね」
「ほぉ、面白い話だな。じゃぁ、本物のグレイスはどこにいるのだろうか?」
「さぁ、わかりません。私は、辞めさせられて、その後のグレイス様は知らないんですよ。あ、でも一度だけそこの侍女と話をしたことがあったな。ババァがグレイス様に灰色の染料を頭からかけたと言っていました。むごいことをするじゃぁありませんか! 私は、クビになって良かったですよ。あんな胸くそ悪いババァはいないです!」
灰色の染料だと? この世界では『髪は女の命』とまで言われているんだぞ! あのクソババァは、絶対許さないからな!
「おそらく、グレイス様はあいつらに殺されて、裏庭にでも埋められているかもしれない。そんなことすら平気でしそうな極悪人ですよ。あるいは、娼館にでも売られたかもしれないです。世の中はおかしいですよ。そんな極悪人が得意気な顔をして、グレイス様の兄上の恩恵をうけている。カリブ伯爵は大バカ者だ!」
あぁ、間違いない。私は、大バカ者だ。妹がそんな辛い目にあっていたことも知らず、冒険者として面白楽しく旅をしていたのだから・・・・・・
「君は気にいったよ。私の屋敷に今から来なさい。正式に雇おう。私がその大バカ者だ」
私は男に、ニヤリと笑いかけたのだった。
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