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グレイスさんになれて幸せだわ(リリィside)
私は、アイザックとお義母様の愚痴をずっと聞かされている。
「アレクサンダー様は酷い! 人でなしだ」
とお義母様が嘆くと
「職場の上司のカシアスは最悪だ! あれは絶対、嫌がらせだ。同僚も意地悪ばかりするんだ」
と、アイザックは涙さえ浮かべて憤っていた。
「昨日は、同僚に新しい仕事の内容を教わってやるように指示されたのだ。けれど、その同僚は早口で簡単な説明だけしてメモをとる暇もなかった。手順も、途中から教えたり肝心な部分を、はしょったりして説明しやがって! そうして、俺ができないと、わざと大きな声で『さっき教えたばかりのことが、なぜできないのかな?』と言いやがる! 伝達事項も、なにもかも、私が知らされていないことが多すぎる気がする・・・・・・酷い・・・・・・これは虐めだ。私はストレスで頭がハゲそうだ。髪は男だって大事なのに。」
アイザックは、ついには本格的に泣き出した。つられて、お義母様まで号泣し出す。
「私が、なぜ、ケンカっ早い『呆け老人』と噂されているのよ? 酷いじゃないの? 私はこんなに心優しい穏やかな人間なのに。せっかく、マイケル様の縁者になれて、ちやほやされていたのに、これでは台なしよ」
「そうだ。そうだ! 私には、もっといい職場に行かせてくれと頼んでくれ。あそこでは、私の能力は発揮できない! もう、あんな職場には行かない。私にはもっと偉くなる権利がある。そうだろう? マイケル様の妹の夫なんだから!」
二人して、私に期待の眼差しを向けてくる。仕方ない。お兄様のところに行ってこよう。マイケル様は私の言うことなら、大抵なんでも聞いてくれる。私のことを、全然、疑っていない。
翌日、子供を、抱っこして馬車に乗りカリブ伯爵家に向かった。アレクサンダー様の馬車も止っていて屋敷に入ると大歓迎された。
「やぁ、グレイス。よく来たね! 珍しいお菓子をアレクサンダーが持ってきたところだ。皆で食べよう」
私がお茶を入れる様子を、アレクサンダー様がじっと見つめている。あんな美男子に見つめられたら照れちゃうわ。もしかして、アレクサンダー様は私に気があるのかもしれない。うふふ。
「お兄様、アイザックが上司のカシアス様と同僚から虐められているそうです。なんとかしてもらえませんか?」
「えぇ? そんなはずはないだろう? カシアスはいつもアイザックが優秀だと褒めているよ? アイザックは外で勤めたことがないのだろう? 新人は、最初は厳しく指導されるのが当たり前だよ?」
あぁ、確かにそうだわ。新人はどの世界でも最初は辛いはずだわ。アイザックは甘えているのだわ。
「あぁ、あとお義母様が、このあいだの歌劇の劇場の件で、アレクサンダー様が酷いと嘆いておられました」
今度は、アレクサンダー様に顔を向けて私は可愛らしく口をとがらせた。
「あぁ、あれはすまなかったねぇ。劇場の手違いで、私達の席を間違えて案内してしまったらしい。グレイス達も帰らないで、一緒に見たら良かったのに。それと、私の若い従者は優しい忠義者ばかりだが口が悪くてね。申し訳なかったね」
アレクサンダー様は、眉尻を下げて私を優しく見ていた。あぁ、そういうことなら仕方がないと思う。けれど、お兄様の親友なら、もう少し気をつけて欲しいわ。
「アレクサンダー様、許してさしあげますわ。けれど、これからは気をつけてくださいね。だって、レイラ男爵家はマイケル様の親戚なんですから! 私は貴方の大親友の妹ですよ」
私は、アレクサンダー様に怒ってみせた。
「あぁ、マイケル・カリブ伯爵は私の唯一無二の大親友だ。その妹のグレイスは、至宝と思っているよ」
アレクサンダー様は、酷く真面目な顔をしておっしゃった。
間違いないわ! 私は、アレクサンダー様に恋されている! どうしよう? 人妻なのに!
嬉しくて恥ずかしくて、頬をそめた。
私は、お兄様に、とりあえず念を押すことも忘れない。
「お兄様。もっと良い職場にアイザックを移してください。あの人は、とても優秀なんですから。それにカリブ伯爵の縁の者なら役職にも就けるはずでしょう? でないと、私が社交界で恥をかきますわ。大事な妹に恥をかかせたくないでしょう?」
私は、上目遣いで目を潤ませてお願いをした。お兄様は、にこにこしている。
「あぁ、なんでもグレイスのお願いは聞こう。世界一大事な妹だからね」
ほら? マイケル様は私を溺愛している。大事にしてくれる兄がいるって、こんなに最高なんだ!
あぁ、今日もマイケル様からお小遣いを貰いたいな。マイケル様は、遊びに来ると毎回、お小遣いをくれるから大好きだわ。
「お兄様! この子の新しい帽子が欲しいのです。この子はカリブ伯爵の甥ですよ? もっと良いお洋服も着せてあげたいですわ。あぁ、そう言えば、お兄様は結婚しないの? このまま独身で跡継ぎがいなければ、この子がカリブ伯爵でしょう?」
私は素敵な未来を思い描いて、にっこりした。お兄様は朗らかに笑い、アレクサンダー様は、なにがそんなにおかしかったのだろう。大笑いしていた。きっと、私の言い方がかわいらしかったからだと思う。
あぁ、グレイスさんになれてとても幸せだわ!
「アレクサンダー様は酷い! 人でなしだ」
とお義母様が嘆くと
「職場の上司のカシアスは最悪だ! あれは絶対、嫌がらせだ。同僚も意地悪ばかりするんだ」
と、アイザックは涙さえ浮かべて憤っていた。
「昨日は、同僚に新しい仕事の内容を教わってやるように指示されたのだ。けれど、その同僚は早口で簡単な説明だけしてメモをとる暇もなかった。手順も、途中から教えたり肝心な部分を、はしょったりして説明しやがって! そうして、俺ができないと、わざと大きな声で『さっき教えたばかりのことが、なぜできないのかな?』と言いやがる! 伝達事項も、なにもかも、私が知らされていないことが多すぎる気がする・・・・・・酷い・・・・・・これは虐めだ。私はストレスで頭がハゲそうだ。髪は男だって大事なのに。」
アイザックは、ついには本格的に泣き出した。つられて、お義母様まで号泣し出す。
「私が、なぜ、ケンカっ早い『呆け老人』と噂されているのよ? 酷いじゃないの? 私はこんなに心優しい穏やかな人間なのに。せっかく、マイケル様の縁者になれて、ちやほやされていたのに、これでは台なしよ」
「そうだ。そうだ! 私には、もっといい職場に行かせてくれと頼んでくれ。あそこでは、私の能力は発揮できない! もう、あんな職場には行かない。私にはもっと偉くなる権利がある。そうだろう? マイケル様の妹の夫なんだから!」
二人して、私に期待の眼差しを向けてくる。仕方ない。お兄様のところに行ってこよう。マイケル様は私の言うことなら、大抵なんでも聞いてくれる。私のことを、全然、疑っていない。
翌日、子供を、抱っこして馬車に乗りカリブ伯爵家に向かった。アレクサンダー様の馬車も止っていて屋敷に入ると大歓迎された。
「やぁ、グレイス。よく来たね! 珍しいお菓子をアレクサンダーが持ってきたところだ。皆で食べよう」
私がお茶を入れる様子を、アレクサンダー様がじっと見つめている。あんな美男子に見つめられたら照れちゃうわ。もしかして、アレクサンダー様は私に気があるのかもしれない。うふふ。
「お兄様、アイザックが上司のカシアス様と同僚から虐められているそうです。なんとかしてもらえませんか?」
「えぇ? そんなはずはないだろう? カシアスはいつもアイザックが優秀だと褒めているよ? アイザックは外で勤めたことがないのだろう? 新人は、最初は厳しく指導されるのが当たり前だよ?」
あぁ、確かにそうだわ。新人はどの世界でも最初は辛いはずだわ。アイザックは甘えているのだわ。
「あぁ、あとお義母様が、このあいだの歌劇の劇場の件で、アレクサンダー様が酷いと嘆いておられました」
今度は、アレクサンダー様に顔を向けて私は可愛らしく口をとがらせた。
「あぁ、あれはすまなかったねぇ。劇場の手違いで、私達の席を間違えて案内してしまったらしい。グレイス達も帰らないで、一緒に見たら良かったのに。それと、私の若い従者は優しい忠義者ばかりだが口が悪くてね。申し訳なかったね」
アレクサンダー様は、眉尻を下げて私を優しく見ていた。あぁ、そういうことなら仕方がないと思う。けれど、お兄様の親友なら、もう少し気をつけて欲しいわ。
「アレクサンダー様、許してさしあげますわ。けれど、これからは気をつけてくださいね。だって、レイラ男爵家はマイケル様の親戚なんですから! 私は貴方の大親友の妹ですよ」
私は、アレクサンダー様に怒ってみせた。
「あぁ、マイケル・カリブ伯爵は私の唯一無二の大親友だ。その妹のグレイスは、至宝と思っているよ」
アレクサンダー様は、酷く真面目な顔をしておっしゃった。
間違いないわ! 私は、アレクサンダー様に恋されている! どうしよう? 人妻なのに!
嬉しくて恥ずかしくて、頬をそめた。
私は、お兄様に、とりあえず念を押すことも忘れない。
「お兄様。もっと良い職場にアイザックを移してください。あの人は、とても優秀なんですから。それにカリブ伯爵の縁の者なら役職にも就けるはずでしょう? でないと、私が社交界で恥をかきますわ。大事な妹に恥をかかせたくないでしょう?」
私は、上目遣いで目を潤ませてお願いをした。お兄様は、にこにこしている。
「あぁ、なんでもグレイスのお願いは聞こう。世界一大事な妹だからね」
ほら? マイケル様は私を溺愛している。大事にしてくれる兄がいるって、こんなに最高なんだ!
あぁ、今日もマイケル様からお小遣いを貰いたいな。マイケル様は、遊びに来ると毎回、お小遣いをくれるから大好きだわ。
「お兄様! この子の新しい帽子が欲しいのです。この子はカリブ伯爵の甥ですよ? もっと良いお洋服も着せてあげたいですわ。あぁ、そう言えば、お兄様は結婚しないの? このまま独身で跡継ぎがいなければ、この子がカリブ伯爵でしょう?」
私は素敵な未来を思い描いて、にっこりした。お兄様は朗らかに笑い、アレクサンダー様は、なにがそんなにおかしかったのだろう。大笑いしていた。きっと、私の言い方がかわいらしかったからだと思う。
あぁ、グレイスさんになれてとても幸せだわ!
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