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2 初恋のジャックの為なら魔物討伐に行くわ
アイラは相変わらず魔法と剣術にのめり込み、ぐんぐんとその腕前は上達していく。最早、魔法の師も剣術の師も遙かに凌ぐようになったのである。
「あぁ、お前が男ならば宮廷魔法使いにもなれたろうに。騎士団にだって容易に入団できたし、ジャスミン子爵家の誉れになれただろうに……昇爵だって思いのままだったに違いない……」
父のアルフィーのぼやきは日常的なものとなり、兄のハリーは屈辱に顔を歪ませるのである。そのような時には決まって母のルビーが舌打ちをし、妹のリリーはクスクスと笑うのだった。アイラはこれほどの才能を持ってしても、女というだけで活躍の場を与えられず誰からも認められない。父のぼやきの対象でしかないのだった。
ルワンガ国の成人は16歳。この頃になると貴族の子女は婚約をし始め、18歳にはほぼ結婚するというのが通常の流れであった。アイラもジャックも16歳を迎えたが、ちょうどその頃ルワンガ国では魔物が大発生をするという凶事が起こった。辺境の地からかつてのないほどのが魔物が出現し、国王陛下は以下のような告知をしたのである。
ーー16歳以上の腕に自信のある者(男女は問わない)は、魔物討伐に参加せよ。その活躍に応じて報償を授けよう。特に功績を挙げた者には爵位を与える。魔術を駆使する者、剣術に秀でた者よ、魔物討伐に今こそ大集結せよ!ーー
末端の貴族や冒険者、平民でも腕に自信のある者達は自らの立身出世の為に奮起した。
その中にジャックも名乗りをあげたのだった。
もちろん、ジャスミン子爵家の者は大賛成した。ジャックが活躍すればジャスミン子爵家の手柄になるからだ。ジャックは庭師の子供とはいえ、ジャスミン子爵家の執事見習いとして王家が管理する貴族別使用人記録簿に記されている。使用人の手柄は主の名誉に繋がる。
ただ、アイラとジャックの父親だけは顔を曇らせた。魔物討伐の半数は生きて帰って来られないデーターがあるからだ。
「なんでわざわざそんなものに参加するの? 命を無駄にしちゃダメよ。こういうことは騎士爵の次男や三男、宮廷魔法使いを目指している人達が行くものよ」
いつもの森での魔法の修練の後、2人っきりで向かい合えばアイラは責めるようにジャックに問いかけた。
「僕はどうしても実らせたい恋があるんだ。相手は貴族令嬢でとても身近な女の子だよ。彼女にプロポーズしたいのさ。それには爵位がいるしお金もいる。このままの使用人の立場だと大事な人を守れないんだ」
ジャックはアイラをまっすぐ見つめてそう言った。少しだけ頬を染めて照れくさそうに微笑んだジャックにアイラの心は躍った。
「その……好きな女の子って……すごく身近な子なのね?」
「あぁ、そうだよ。同じ屋根の下にいるけれど僕は使用人、彼女はお嬢様さ。だからその女性の為にも命を賭ける必要があるんだよ」
ジャックのキラキラした瞳はアイラを捉えて離さない。
(いつも一緒にいる……同じ屋根の下……それって、きっと私のことよね? 私に求婚する為に命を賭けてくれるって思っていいよね……)
アイラの心の中に燦々と輝く陽光が注がれる。初恋が実る瞬間を夢見て、ジャックが自分の目の前に跪きプロポーズしてくれる光景までが眼に浮かんだ。
(私も協力しなきゃ。そうだ! あの愛読書には確か興味深い事が書いてあったわ)
アイラはジャックと屋敷に戻り、自室にしばらく籠もっていた。隅から隅まで読み尽くした魔物辞典のような分厚い書物を夢中でめくる。そこには……
★魔物を支配する方法
魔物はその魔物より上位の魔物の魔粉を降り注ぎ呪文を唱えることによって支配することができる。
魔粉は魔物を炎魔術で焼き尽くし「天聖より生ずる激炎よ! 魔を焼き尽くし変じて希珍物となれ! 巨臼、出でよ! 魔の焦遺体を粉となせ!」と詠唱することによりできる。
これは……が詠唱することにより可能となる。……がなす……炎魔法は……と呼ぶ。
魔粉は魔物に振り注ぐことにより支配できる。詠唱する言葉は「魔物に宿し魂よ、上位魔物の魔粉を浴びよ! 浄化新生! 絶対服従隷属魔法! 鋼の楔を打ち込め! 全魔物の頂点、魔天竜の名の下に!」
これにより、下位の魔獣を操ることができる。これは…………が操る……炎魔法により可能となる。
[※注意……は破けていたりインクのシミで一部が読めないという意味となります。]
所々読めない部分があったが大体の意味はわかった。アイラは炎・風・水属性の魔法を操ることができた。主軸は炎でその力は強大であった。
(私ならできるかも。この絶対服従隷属魔法を完成させたら爵位がもらえるほどの手柄になるはず……)
「私も行くわ。ジャックの助けになりたいのよ」
アイラはジャックに討伐の出発三日前に宣言したのだった。
ジャスミン子爵家では二日間にわたって家族会議が開かれた。当初はアイラを止めた当主アルフィーだったが、その強い意志を挫けさせることはできなかった。
「妹のアイラも使用人の息子ジャックですら魔物討伐に行くというのに、嫡男のお前が行かないのは物笑いのタネになるぞ」
アルフィーは息子ハリーに、そう言わざるを得なかった。
「大事な跡取り息子を行かせるのは断腸の思いだが仕方がないな」
そう言い募るアルフィーはハリーを失う恐怖で顔を青くしている。
「なんてこと! アイラ! 兄上を守りなさい。ジャスミン子爵家の大事な跡取り息子ですからね! 自分の命に代えても守りなさい!」
ハリーを特に溺愛しているルビーはアイラに厳命したのだった。
「アイラ! 僕はお前が行くなどと決めなければこのようなことに巻き込まれなかったのだぞ! いいか? 僕を守れよ! わかったな」
ハリーは心底行きたくないという面持ちで、憎々しげにアイラに恨み節を吐いたのだった。
「あぁ、お前が男ならば宮廷魔法使いにもなれたろうに。騎士団にだって容易に入団できたし、ジャスミン子爵家の誉れになれただろうに……昇爵だって思いのままだったに違いない……」
父のアルフィーのぼやきは日常的なものとなり、兄のハリーは屈辱に顔を歪ませるのである。そのような時には決まって母のルビーが舌打ちをし、妹のリリーはクスクスと笑うのだった。アイラはこれほどの才能を持ってしても、女というだけで活躍の場を与えられず誰からも認められない。父のぼやきの対象でしかないのだった。
ルワンガ国の成人は16歳。この頃になると貴族の子女は婚約をし始め、18歳にはほぼ結婚するというのが通常の流れであった。アイラもジャックも16歳を迎えたが、ちょうどその頃ルワンガ国では魔物が大発生をするという凶事が起こった。辺境の地からかつてのないほどのが魔物が出現し、国王陛下は以下のような告知をしたのである。
ーー16歳以上の腕に自信のある者(男女は問わない)は、魔物討伐に参加せよ。その活躍に応じて報償を授けよう。特に功績を挙げた者には爵位を与える。魔術を駆使する者、剣術に秀でた者よ、魔物討伐に今こそ大集結せよ!ーー
末端の貴族や冒険者、平民でも腕に自信のある者達は自らの立身出世の為に奮起した。
その中にジャックも名乗りをあげたのだった。
もちろん、ジャスミン子爵家の者は大賛成した。ジャックが活躍すればジャスミン子爵家の手柄になるからだ。ジャックは庭師の子供とはいえ、ジャスミン子爵家の執事見習いとして王家が管理する貴族別使用人記録簿に記されている。使用人の手柄は主の名誉に繋がる。
ただ、アイラとジャックの父親だけは顔を曇らせた。魔物討伐の半数は生きて帰って来られないデーターがあるからだ。
「なんでわざわざそんなものに参加するの? 命を無駄にしちゃダメよ。こういうことは騎士爵の次男や三男、宮廷魔法使いを目指している人達が行くものよ」
いつもの森での魔法の修練の後、2人っきりで向かい合えばアイラは責めるようにジャックに問いかけた。
「僕はどうしても実らせたい恋があるんだ。相手は貴族令嬢でとても身近な女の子だよ。彼女にプロポーズしたいのさ。それには爵位がいるしお金もいる。このままの使用人の立場だと大事な人を守れないんだ」
ジャックはアイラをまっすぐ見つめてそう言った。少しだけ頬を染めて照れくさそうに微笑んだジャックにアイラの心は躍った。
「その……好きな女の子って……すごく身近な子なのね?」
「あぁ、そうだよ。同じ屋根の下にいるけれど僕は使用人、彼女はお嬢様さ。だからその女性の為にも命を賭ける必要があるんだよ」
ジャックのキラキラした瞳はアイラを捉えて離さない。
(いつも一緒にいる……同じ屋根の下……それって、きっと私のことよね? 私に求婚する為に命を賭けてくれるって思っていいよね……)
アイラの心の中に燦々と輝く陽光が注がれる。初恋が実る瞬間を夢見て、ジャックが自分の目の前に跪きプロポーズしてくれる光景までが眼に浮かんだ。
(私も協力しなきゃ。そうだ! あの愛読書には確か興味深い事が書いてあったわ)
アイラはジャックと屋敷に戻り、自室にしばらく籠もっていた。隅から隅まで読み尽くした魔物辞典のような分厚い書物を夢中でめくる。そこには……
★魔物を支配する方法
魔物はその魔物より上位の魔物の魔粉を降り注ぎ呪文を唱えることによって支配することができる。
魔粉は魔物を炎魔術で焼き尽くし「天聖より生ずる激炎よ! 魔を焼き尽くし変じて希珍物となれ! 巨臼、出でよ! 魔の焦遺体を粉となせ!」と詠唱することによりできる。
これは……が詠唱することにより可能となる。……がなす……炎魔法は……と呼ぶ。
魔粉は魔物に振り注ぐことにより支配できる。詠唱する言葉は「魔物に宿し魂よ、上位魔物の魔粉を浴びよ! 浄化新生! 絶対服従隷属魔法! 鋼の楔を打ち込め! 全魔物の頂点、魔天竜の名の下に!」
これにより、下位の魔獣を操ることができる。これは…………が操る……炎魔法により可能となる。
[※注意……は破けていたりインクのシミで一部が読めないという意味となります。]
所々読めない部分があったが大体の意味はわかった。アイラは炎・風・水属性の魔法を操ることができた。主軸は炎でその力は強大であった。
(私ならできるかも。この絶対服従隷属魔法を完成させたら爵位がもらえるほどの手柄になるはず……)
「私も行くわ。ジャックの助けになりたいのよ」
アイラはジャックに討伐の出発三日前に宣言したのだった。
ジャスミン子爵家では二日間にわたって家族会議が開かれた。当初はアイラを止めた当主アルフィーだったが、その強い意志を挫けさせることはできなかった。
「妹のアイラも使用人の息子ジャックですら魔物討伐に行くというのに、嫡男のお前が行かないのは物笑いのタネになるぞ」
アルフィーは息子ハリーに、そう言わざるを得なかった。
「大事な跡取り息子を行かせるのは断腸の思いだが仕方がないな」
そう言い募るアルフィーはハリーを失う恐怖で顔を青くしている。
「なんてこと! アイラ! 兄上を守りなさい。ジャスミン子爵家の大事な跡取り息子ですからね! 自分の命に代えても守りなさい!」
ハリーを特に溺愛しているルビーはアイラに厳命したのだった。
「アイラ! 僕はお前が行くなどと決めなければこのようなことに巻き込まれなかったのだぞ! いいか? 僕を守れよ! わかったな」
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