(完結)初恋の勇者が選んだのは聖女の……でした

青空一夏

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7 嘘つき達の末路ー因果応報その2

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「うわぁ、こっちに来るぞ! 来るな! 来るなぁーー!!」

勇者と聖女を護衛していた精鋭のはずの騎士達は、剣を放り投げ逃げまどう。やみくもに剣を振り回し奇声をあげる者もいたが、ただやかましいだけである。

「うおぉおおーー!! こんな魔物なんて怖くないぞぉおおーー。きえぇええぇぇぇええーー。うぉりやぁああーー」

そんな奇声だけで魔天竜を倒せるわけもなく魔天竜の吐く青白い炎は、なんと男達の尻に命中し文字通り、尻に火がついた形で走り回る始末であった。

「ひぃいいぃいーー! 熱い、熱い! 熱いよぉおおーー! 母ちゃぁーーん、助けてぇえーー。神様、助けてぇえーー」

「うひゃーー。尻が熱い。焦げる、焦げるぅううぅうーー」

元魔物討伐隊の無様な様子に民衆達は呆れかえり、子供達は腹を抱えて大笑いしだした。

「あっははは。お尻に火がついて逃げてるだけで戦いもしないよ。あんなのが騎士様なんておっかしいよ。強いなんて嘘だね!」

「そうだ、あいつらは嘘つきだ! 勇者様も聖女様もなんとかしろよ!」





ジャックは魔天竜にオオトカゲの魔粉を浴びせかけると、
「魔物に宿し魂よ、上位魔物の魔粉を浴びよ! 浄化新生!・・・・・・」

アイラに教わった呪文を詠唱しようとするが、そんなものが効く相手ではない。魔天竜はオオトカゲより上位の魔神とも崇められる存在なのだ。

「やっぱり駄目か。ならば炎の魔法を・・・・・・炎の竜巻・・・・・・」
詠唱途中で魔天竜は容赦なく青白い炎をジャックに吐きかけた。咄嗟にジャックは隣のリリーを庇い、背中一面にその炎を浴びる。

「きゃぁーー! ジャックが死んじゃう! 誰か助けてぇええーー。助けてぇええーー!」
聖女は涙と鼻水でグチャグチャとなった顔を兄のハリーに向けた。

ところがハリーはここにいるはずもないアイラの名前を呼んで助けを求めていたのだった。
「アイラぁぁあああーー!! 助けろ! 僕を助けろぉおお。いつものように早く助けに来いよぉおおおおおお」

その声に反応した魔天竜は向きを変えハリーの正面から炎を浴びせた。そして、すっかりその身体を焼き尽くすと用は済んだとばかりに天を駆け巡り、巨大な身体の美しい鱗を陽光に煌めかせ隣国の方角に飛び去っていったのだった。





魔天竜が優美な姿で去った後に残されたのは、尻に大火傷を負った騎士達と背中に大火傷を負った瀕死の偽物勇者。自慢の顔に大火傷を負った偽物聖女。そして、焼け焦げた死体となったハリー・ジャスミンであった。

「なんだい! 勇者でも聖女でもないじゃないか! あいつらは皆大嘘つきだ!」
「そうだ、そうだ! わし達民衆を騙した極悪人だぁーー!」
民衆が憤り勇者達に石を投げ、罵倒を浴びせる。



一連の勇者達の様子を見ていた国王陛下は凄まじい怒りで額に青筋を浮かばせた。
「大嘘つきめ! 余を騙したな! つまりは魔物退治の功績者はアイラ・ジャスミンだったということか? おい、偽物勇者よ! オオトカゲを魔粉にしたのはアイラなのか?」

ジャックは苦痛に顔を歪めながら国王陛下の問いに頷き、その場に崩れる。
「あぁ、嘘なんてつくんじゃなかった・・・・・・アイラの手柄だったのに・・・・・・でも、リリーは守れたよ。リリー、ごめんよ」

「ちょっと、全然守れてないわよ! 私を見てよ! 顔が痛くて堪らないわ。熱くて焼けるようよ。こんなんじゃぁ助かっても嬉しくない!」

「ふん、安心しろ! 余に嘘をついた大罪人が生きていられると思うか? 死んだ者は森に打ち捨て供養は無用だ。怪我をした者の手当も必要ない! 大嘘つきは即刻、死刑だ。引っ捕らえろ!」

「いやぁあああーー。やめてよ、離してぇええ! 私は嘘なんてついてない! お兄様が勝手に聖女だって言ったのよ。私は悪くない! 被害者よ」

「リリー・ジャスミンよ! お前には口がある。兄の言葉を否定して真実を話すことはできたはずだ。それをしないで黙認したんだ。同罪だろう? そこのジャックも自らが勇者とは言わなかったが、ハリー・ジャスミンの言葉を明確に否定もしなかった。人の責任にするのはやめろ! 騎士に昇格した者達も嘘の報告を余にしたのだ。 自業自得だ」

リリーや尻を焦がした騎士達は項垂れて後悔の涙を流すのだった。
 




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