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8 私の結婚はこれからだけど・・・・・・まずは姪っ子と甥っ子を(フローレンス視点)

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フローレンス視点


私が帰国すると公爵家の令息、嫡男でさえも、隣国の王族、我が国の王族までもが縁を結ぼうと押し寄せてきたの。私はその一人一人に丁寧に応対し、順番にお見合いのようなものをする羽目になったわ。

でも、どの方も隣国の有名な学園を良い成績で卒業したことに価値があると褒め称えてくださり、私自身に目を向ける方が少ないように思う。彼らに見えているのは本当に私なのかな? 

しとやかな歩き方も紡ぎ出す言葉の上品なアクセントもすっかり私のものになっていた。学園では貴族の令嬢といえど侍女やメイドに全てを任せっきりにしてはいけない、と教えられた。屋敷をしっかり管理できる為に家事一般は勉強させられたし、帳簿の付け方も教わった。刺繍も縫い物も料理だって完璧だ。おまけに各国のマナーを覚え数カ国の言語で日常会話はできるようにと語学もしごかれた。

これなら平民になっても市井でたくましく生きることもできるし、王族にまじって優雅な暮しもできるだろう。生きる選択肢が広まった私が出した結論は・・・・・・しばらくはお姉様の子供の家庭教師をすることだった。

だって、私が帰国してすぐに産気づいたお姉様がかわいい三つ子の赤ちゃんを産んだから! 男の子一人(クリスフォード)と女の子が二人(チェルシーとリリー)はすっごく可愛い! 私はこの姪と甥にすっかり夢中になった。結婚はしばらくしなくていいと思うくらいに。

だって、この女の子達がもしも私に似てへそ曲がりウサギだったら私が全力で更生させなきゃならないものね!


――それから数年後のポピンズ家での一族の集まりの場でーー

「いけません! お母様がそうやって甘やかすとお姉様の子供達が皆ネザーランドドワーフになっちゃうわ! チェルシーはリリーの髪を引っ張らないの!」
私は早速注意をするけれど、怖い顔はできない。だって、子供達の可愛さに頬を緩めてしまうから。ネザーランドドワーフそっくりな子供達は何をしてもウサギが悪戯しているようにしか見えなくて全く憎めないのよ。

やっとお姉様の気持ちがわかった、と今は嬉しいやら困るやらで悩んでいる。でもここは心を鬼にして怒らないとね。
「こら! リリーもチェルシーもいい加減に大人しく座っていなさい! リリーはチェルシーのリボンを欲しがってはいけません! だってリリーの花の髪飾りはそのドレスにあわせたとても素敵な世界でひとつのものよ。チェルシーのリボンもチェルシーの今のドレスとお顔にあわせたものなの。今しているものが一番似合っていて一番可愛く見えるわよ」

「そうなの? これは世界でひとつなんだねぇ? あたしは一番素敵なものを持っているのね?」
リリーが髪飾りを触ってにっこりと微笑んだ。

「そっか。あたしのリボンはドレスとお揃いでお顔にあわせた一番似合うものなんだね?」
チェルシーは頭のリボンをそっと大事そうに撫でた。

私達はもうすでに一番いいものを持っているのかもしれない。それに気がつけばきっといつもお姉様のように笑っていられる。



୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧

次回、最終回です。
フローレンスの恋です。



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