（完結）お姉様、嫁ぎ先を交換しませんこと？

姉編

６－３ 結婚式その３

「そんなことは想定内ですとも。クリスティン用のも実はあつらえてあったのよ？　今から急いで着てきなさい。一緒にここで式をしてしまえばいいわ」

　お母様は侍女達に指示をしてクリスティンを連れて行かせ、私は宝石や髪飾りは私の物を使っていいと許可をだした。私はこの展開に自然と顔がほころび、ケンドル様に何度もお礼を言った。

「カリスタが嬉しいのなら、私も嬉しいよ。貴女がいつもそのように微笑んでいられるような家庭と国をつくるのが、私のつとめだからね」

　私はもしかしたらとんでもなく果報者かもしれない。このケンドル様はおっしゃったことは必ず実行する男性だ。


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　ウェディングドレスを着て嬉しそうに微笑むクリスティンが私のところに来て抱きついてくる。

「お姉様の苦労を少しも知らないで、ごめんなさい。あたしは優秀なお姉様が羨ましかった。それだけ努力してきたってことなのに、自分は努力もしないで妬んでばかりいたんだ。今はとても反省しているの」

　珍しくそんなまともな意見を言ってきたから、私とお母様はびっくりして思わず『なにか変なものでも食べたの？』と聞いてしまった。

「ううん。毒入りの紅茶を飲みそうになったのと、ベッドに仕掛けられた針で背中を刺されただけよ。あとは大丈夫だったみたい。寝室に持ち込んだ媚薬はイグナ様に取り上げられて、無理矢理飲まされたけど元気よ」

　クリスティンの言葉に私は胸が潰れる思いだ。私ならば紅茶は飲まないし針にも刺されず、そこにいるイグナ王の心臓をひと突きにできただろう。持ち込んだのが媚薬だったからいいようなものの、毒薬であれば死んでいたはずだ。

　私の怒りの表情にケンドル様はすぐさま気がつき、きっぱりと宣言した。

「もしもこの先、クリスティンが老衰以外の理由で死ぬことがあったらエメラルド王国はこの世からなくなるだろう」　

　ケンドル様の言葉にイグナ王はひざまづいたのだった。

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　ケンドル様は皇帝となり私に皇太子のウェズリーが産まれると、当然のように翼がはえていた。機嫌がいいとコウモリの翼を広げて庭園を飛び回るものだから侍女達は捕まえるのに必死だ。

　私とケンドル様はその様子を笑いながら見ていた。なんの心配もない安住の地がここにある。私のお腹にはまた新しい命が宿りケンドル様はかいがいしく私の世話をする。

「カリスタの欲しいものはあるかい？　貴女の望みはなんでも叶えよう！」

　私はこの上なく優しい夫に口づけた。なんの不足もない最高の幸せがここにはある。

　　　これ以上欲しいものは、ひとつもないわ！



完


🌷おまけ


「ケンドル様。大変！　皇女にも翼があるわ！」

「あれ！　本当だ。やれやれこれではワイバーンだらけになるね」

　側に仕えていた戦闘侍女達が朗らかな笑い声をたてたのだった。