月の女神様は魔王様の妻になる

青空一夏

文字の大きさ
1 / 1

月の女神様は魔王様の妻になる

しおりを挟む
月の女神様のアリーシャは銀髪にアメジストの瞳をもつ絶世の美女だった。

彼女は天界の生活に飽きると、下界に降りていき村娘の格好で遊ぶのが好きだった。

ある日、下界に遊びに行くと、王宮の庭でウサギを追って遊んでいる子どもを見つけた。

その子はアリーシャを誘って庭園を散歩し、薔薇の花を摘んでくれた。

「この薔薇の花をあなたに捧げます。あなたの前では薔薇の花も色あせて見えますね」

アリーシャは嬉しくて、時間が経つのも忘れるほどだった。

「世界一美しい貴方。僕はいずれ王になるカークです。僕の妃になっていただけたら、あなたにあげましょう」
綺麗な顔立ちの少年はひざまずいて求婚をした。

アリーシャは何も言わずに天界に帰っていった。





その様子を天界から眺めていた太陽神の息子は翌日、アリーシャのもとを訪ねた。

太陽神の息子はまばゆい金髪にブルーサファイアの瞳の天界いちモテる男神様だ。

アリーシャのもとに来たときも、取り巻きの女性を数人つれていた。

「地上、天界、魔界の全ての女性いち美しいアリーシャ。私の妃になってくれたら、貴女にあげよう」

アリーシャは首を横に振った。





アリーシャが天界と魔界の狭間に落ちたとき魔王が来て助けてくれた。

魔王は醜い顔と角を生やしている大男だった。

「魔界にようこそ。月の女神。しばらくここにいて、魔界を照らしてくれると助かる」
アリーシャはしばらく魔界を照らし、魔王は別れ際にアリーシャが最も欲しい言葉を言った。

「俺が知っている女のなかで一番美しい人、俺は魔界の王だから太陽のもとで駆け回ることや、天界で美しい景色を楽しませることも出来ない。この闇の世界で君にあげられるものはなにもないが、を永遠に捧げよう」


アリーシャはなにも言わず天界に帰った。

頬をピンクに染めて目を輝かせながら‥‥





天界に戻ったアリーシャは侍女とメイドと従者に言った。

「さぁ、お引っ越しよ!これから私は魔界に住むわ」

たくさんのドレスと宝石はペガサスがひく馬車に積まれ魔界へと降りていく。





「帰ってきましたわ。私の旦那様」
魔王のもとに降り立った月の女神様はにっこりとして魔王の膝の上に座った。


「嬉しいけれど、俺でいいのかい?」


「もちろんよ!」


そう、月の女神様は夜の世界を支配する女王様だ。

すでに彼女はこの世の半分は持っているのだから、欲しいものはただ一つ。

永遠に変わらない愛をもつ男の心。







閑話


「女神様、本当にあの恐ろしい顔の男でいいのですか?」

長年仕えている侍女やメイドが顔を曇らせて不安げに問うた。

月の女神は笑っただけでなにも言わなかった。

一年もすると魔王の醜い顔が驚いたことに、それほど不細工には見えなくなってきた。

それどころか、好ましい容姿にさえ見えてきたのだ。

「女神様!魔法でも使ったのですか?それとも、私たちの目がどうかしてしまったのでしょうか?」
今まで、恐ろしい、醜いと怖がっていた侍女やメイドが首を傾げていた。

「魔法なんて使わないわ。魔王様の優しい心がそう見せてくれるだけよ」


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

半日だけ侍女になった美貌の公爵令嬢は世界を手に入れる?

青空一夏
恋愛
美貌の公爵令嬢カトリーヌは、夜会で一間惚れした男爵家の三男カート様に会うために侍女に変装します。さぁ、侍女になったカトリーヌは‥‥お転婆の美しい公爵令嬢の半日だけの大冒険?

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました

ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!  フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!  ※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』  ……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。  彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。  しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!? ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています

答えられません、国家機密ですから

ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

処理中です...