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今日一日で、大量の情報を知ることになった。
前世の記憶って言っても、グルグル先生だけだし。
聞きたいことは山ほどあるけど、もう頭がパンク状態。
わかったことだけを紙に書き、その日はいつもより早く寝ることにした。
フェリックス様の心の声。
あんなにテンション高めとは、知りたくはなかった。
普段無口だから、余計にギャップが激しい。
『だいちゅき』の意味が分からない。
私の嫌がることをしている時点で、私は嫌われていると思っていたんだけど。
あれ?実は、嫌われていなかったの?
しかし『ノイたん』はないよ。……切実にやめてほしい。
『【~~たん】は推しに使われることが多いです』
「そこで答えないで?!質問したことだけに答えて!頭の中、勝手に読まないで!あと、『推し』って何?!」
その夜から奇妙な相棒との生活が始まった。
何故かわからないけど、AI指輪をすぐに受け入れることができてしまった。
受け入れられた自分にびっくりだよ !
口調が前世に引っ張られていることに気付かなかった。
翌日はまだ頭が混乱していたが、いつも通り起きて、寮の朝食を食べて、仕事に行く。
職場に着くなり、部長やリスト、先輩方が私の体調の心配をして、あれこれと聞いてきた。
「みんな、急にどうしたの?」
と、リストに聞く。
「今、お前に抜けられるとマズいんだ。昨夜お前が帰った後、急ぎの依頼が持ち込まれたんだ。鑑定しても術式が分からないんだ。今この部で一番術式に詳しいのはお前だろ?だから、みんな頼りにしているんだよ」
「…なるほど」
結局【魔法具の為の心配=私の心配】だったらしい。
「で、どんな魔法具?」
「財務部の贋金判別装置DXくん」
「……マジか」
「マジカ?お前何言ってんの?」
「あ、気にしないで」
「ああ、うん。で、基板の組み込まれている蓋が開かなくて、部長が術式を解析したけど、部長にすら解けなくて。こっちにあるから」
リストに誘導され、ついて行った隣の部屋のテーブルに装置が載っていた。
目算幅40㎝×奥行30㎝×高さ40㎝の装置だった。
上部に口があり、ここに硬貨を入れる。内部で硬貨の白金・金・銀・銅の含有量を調べて、贋金を判別できる装置なのである。
それが昨日から動かなくなったらしい。
月に1回は、装置の動力となる魔石の交換をきちんと行っているので、魔石切れではないとのことだった。
魔石を確認すれば、確かに魔石にはまだ十分に魔力がある。
「で、ここの背面にある蓋なんだけど、封の術式が解けないんだ」
私は魔力を流して術式を浮かび上がらせる。
「部長が言うには、ここの部分の印がわからないって」
リストが部長が解析してくれたところまでを事細かに説明してくれた。
印とは、大昔に使われていたと言われる古代文字を繋げて、一つの意味となる。更に印をいくつも繋げてできるのが術式だ。術式は大抵三重丸か四重丸で、丸と丸の間に古代文字が入っている。その一つ一つの印を理解して、術式に魔力を流すと、術式が発動する仕組みとなっている。
今回のは、術式が発動しないと蓋が開かないようになっているのだ。
「んん?なんか見たことあるけど、思い出せないな。でも、何を意味する印なのか、わかると、蓋が開くんだよね」
と、リストに確認すれば、頷いてくれた。
今はもう使われていない古代文字。古代文字の辞書なんかは、もう王宮にしかない。
辞書と言っても不完全なものらしい。
今使われている術式は、生活用品にしか使えない術式しか流通していない。
石板や金属板に彫られた術式は、板が損傷しない限りは使い続けられるが、紙や魔法で描かれた術式は、1回限りの効力しかない。
今回は魔法で描かれた術式なので、解けない限りは永遠に術式が掛かり続けていることになる。
昔の大戦の時に大半の古代文字に関する本は消えたと、授業で習った。
それでも、今でも術式は使われている。
結局、術式に代わる便利なものは未だに作られていないという証明だ。
それでも術式を学び、新たな術式を開発する人、または古代文字に魅入られた人が、生活水準の向上の一手を担っているのだろう。
『印の意味は、【責任者】を意味しています。しかし、印の文字を間違えたまま術式を組み入れたようです』
と、指輪が教えてくれた。もちろん頭の中で。
突然のことで驚いたが、隣にリストがいるので、下手に喋れない。
『大丈夫です。考えていることは読み取れますので』
大丈夫の意味を知りたい!個人情報ダダ洩れ!!
でも【責任者】っていうことは、下っ端の私では開けられないってことだよね?
『正解です。責任者に指名された際に、鍵になる何かを預かっているはずです』
……指輪ではないよね?
『不正解です。私には開けられますが、少々面倒くさいです』
指輪って、時々人間より人間臭いな。
…ってか、開けられるんかい!本当に万能だな!
……ってことは、財務部の部長を引っ張ってくるしかないということか。
『正解です』
と、答えてくれたところで、指輪はまた沈黙する。その後はまた何も話さなくなった。
指輪が折角教えてくれたので、この件はさっさと解決させよう。
「リスト、…意味がわかった。部長のところに報告に行くよ」
「……早くない?大丈夫?」
「大丈夫です」
と、私達は魔法具部の部屋に戻り、部長に術式の説明と、財務部長の呼び出しをお願いした。
前世の記憶って言っても、グルグル先生だけだし。
聞きたいことは山ほどあるけど、もう頭がパンク状態。
わかったことだけを紙に書き、その日はいつもより早く寝ることにした。
フェリックス様の心の声。
あんなにテンション高めとは、知りたくはなかった。
普段無口だから、余計にギャップが激しい。
『だいちゅき』の意味が分からない。
私の嫌がることをしている時点で、私は嫌われていると思っていたんだけど。
あれ?実は、嫌われていなかったの?
しかし『ノイたん』はないよ。……切実にやめてほしい。
『【~~たん】は推しに使われることが多いです』
「そこで答えないで?!質問したことだけに答えて!頭の中、勝手に読まないで!あと、『推し』って何?!」
その夜から奇妙な相棒との生活が始まった。
何故かわからないけど、AI指輪をすぐに受け入れることができてしまった。
受け入れられた自分にびっくりだよ !
口調が前世に引っ張られていることに気付かなかった。
翌日はまだ頭が混乱していたが、いつも通り起きて、寮の朝食を食べて、仕事に行く。
職場に着くなり、部長やリスト、先輩方が私の体調の心配をして、あれこれと聞いてきた。
「みんな、急にどうしたの?」
と、リストに聞く。
「今、お前に抜けられるとマズいんだ。昨夜お前が帰った後、急ぎの依頼が持ち込まれたんだ。鑑定しても術式が分からないんだ。今この部で一番術式に詳しいのはお前だろ?だから、みんな頼りにしているんだよ」
「…なるほど」
結局【魔法具の為の心配=私の心配】だったらしい。
「で、どんな魔法具?」
「財務部の贋金判別装置DXくん」
「……マジか」
「マジカ?お前何言ってんの?」
「あ、気にしないで」
「ああ、うん。で、基板の組み込まれている蓋が開かなくて、部長が術式を解析したけど、部長にすら解けなくて。こっちにあるから」
リストに誘導され、ついて行った隣の部屋のテーブルに装置が載っていた。
目算幅40㎝×奥行30㎝×高さ40㎝の装置だった。
上部に口があり、ここに硬貨を入れる。内部で硬貨の白金・金・銀・銅の含有量を調べて、贋金を判別できる装置なのである。
それが昨日から動かなくなったらしい。
月に1回は、装置の動力となる魔石の交換をきちんと行っているので、魔石切れではないとのことだった。
魔石を確認すれば、確かに魔石にはまだ十分に魔力がある。
「で、ここの背面にある蓋なんだけど、封の術式が解けないんだ」
私は魔力を流して術式を浮かび上がらせる。
「部長が言うには、ここの部分の印がわからないって」
リストが部長が解析してくれたところまでを事細かに説明してくれた。
印とは、大昔に使われていたと言われる古代文字を繋げて、一つの意味となる。更に印をいくつも繋げてできるのが術式だ。術式は大抵三重丸か四重丸で、丸と丸の間に古代文字が入っている。その一つ一つの印を理解して、術式に魔力を流すと、術式が発動する仕組みとなっている。
今回のは、術式が発動しないと蓋が開かないようになっているのだ。
「んん?なんか見たことあるけど、思い出せないな。でも、何を意味する印なのか、わかると、蓋が開くんだよね」
と、リストに確認すれば、頷いてくれた。
今はもう使われていない古代文字。古代文字の辞書なんかは、もう王宮にしかない。
辞書と言っても不完全なものらしい。
今使われている術式は、生活用品にしか使えない術式しか流通していない。
石板や金属板に彫られた術式は、板が損傷しない限りは使い続けられるが、紙や魔法で描かれた術式は、1回限りの効力しかない。
今回は魔法で描かれた術式なので、解けない限りは永遠に術式が掛かり続けていることになる。
昔の大戦の時に大半の古代文字に関する本は消えたと、授業で習った。
それでも、今でも術式は使われている。
結局、術式に代わる便利なものは未だに作られていないという証明だ。
それでも術式を学び、新たな術式を開発する人、または古代文字に魅入られた人が、生活水準の向上の一手を担っているのだろう。
『印の意味は、【責任者】を意味しています。しかし、印の文字を間違えたまま術式を組み入れたようです』
と、指輪が教えてくれた。もちろん頭の中で。
突然のことで驚いたが、隣にリストがいるので、下手に喋れない。
『大丈夫です。考えていることは読み取れますので』
大丈夫の意味を知りたい!個人情報ダダ洩れ!!
でも【責任者】っていうことは、下っ端の私では開けられないってことだよね?
『正解です。責任者に指名された際に、鍵になる何かを預かっているはずです』
……指輪ではないよね?
『不正解です。私には開けられますが、少々面倒くさいです』
指輪って、時々人間より人間臭いな。
…ってか、開けられるんかい!本当に万能だな!
……ってことは、財務部の部長を引っ張ってくるしかないということか。
『正解です』
と、答えてくれたところで、指輪はまた沈黙する。その後はまた何も話さなくなった。
指輪が折角教えてくれたので、この件はさっさと解決させよう。
「リスト、…意味がわかった。部長のところに報告に行くよ」
「……早くない?大丈夫?」
「大丈夫です」
と、私達は魔法具部の部屋に戻り、部長に術式の説明と、財務部長の呼び出しをお願いした。
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