菫青石が輝くとき

ゆい

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ーーーアシェルsideーーー


アレクセイ達の捜索は難航していた。土砂を掘り返すのも大変だが、埋まっていた魔物も一緒に掘り返してしまい、更には土石流を免れた魔物と一緒に討伐を並行しておこなわくてはいけなかった。


「アルサスさん、いかずちを流しても、埋まっている魔物って倒せないの?」

僕は、ヒュンと、剣で魔物を一刀両断にして倒していく。

「難しいね。土に雷が流れて、ダメージをあんまり与えられないね。」

アルサスさんは、氷魔法で尖った氷の塊を魔物に打ち込んでいく。

「もう、数が多くて、面倒なんですけど。」

「本当に、めんどくさ。」

と、副団長の3人で来る魔物、埋まっていた魔物を倒していく。
副団長は楽しそうにバッタバッタと切り倒しているんだけど。あれ?実は戦闘狂だった?
副団長・アルサスさんと共闘できる僕への騎士たちからの視線は、尊敬と畏怖が入り混じっていた。冒険者達からは、尊敬だけなんだけどね。この違いって、なんだろ?


他の動ける騎士・魔法師・冒険者達は、騎士団長・魔法師団長の指揮の下、土砂の撤去をしていた。
魔法を使って撤去をしても良いが、村一つを飲み込んだ大規模な土石流であったから、土魔法でもすぐには掘り起こせなかった。
それに無理に掘り起こしても、他の場所が崩れたら二次災害が起きる。
地道に安全に手作業とちょっとずつの土魔法で、作業を進めていく。



「おお、アシェル、強くなったなぁ。」

と、暢気な声で言う副団長。

「結婚してから僕が弱くなってしまったら、セイ君を連れ戻す算段をしていたのは知っていますよ。」

「なんだ知っていたのか。つまらん。……弱い婿はいらんからな。」

と、悪い顔で言う副団長。

「副団長は、アルサスさんに勝ってから言ってください。僕、魔法はアルサスさんに勝ちましたよ?」

ふふんと、ドヤ顔をしながら僕は言う。

「結界はノーカンだから!」

と、アルサスさんが叫ぶ。

「それ、ズルいですよ!普段から色々罠を仕掛けてくるのに!全部突破している時点で勝ちでしょ?!」

僕は、嫁いびりならぬ、婿いびりを姑からされている。
たまにオルスト家に来ては、魔法のトラップ(異空間ご案内やベタベタ液体が降ってくるなど)を、副団長が計画して、アルサスさんが仕掛けている。
父上も何故か許可を出しているし。…アルサスさん達に押し切られたんだろうな。
僕の魔力しか感知しないトラップであるから、他の人への被害が出てないことは有り難いけど。

「いやいや、「大事な息子と結婚したんだから、まだまだ!!」」

2人で婿いびりを楽しんでいるようだ。2人のセリフも息が合っているし。仲は良いのはいいけど、方向性が違う気がする。

「あんまりやり過ぎると、……セイ君に嫌われますよ?」

「「!!」」

「僕、セイ君には黙っていたけど、その内つるっと僕の口が滑るかも?それか、セイ君といる時に発動するかも?セイ君、巻き込まれちゃうよなぁ。」

「……。それはイヤだな。セイに嫌われたくないな。」

「ギル!アシェルの姑息な手に乗るな!それにセイの名前を出したところで、手を引く僕ではない!」

と、声高に言うアルサス。なんだか、アルサスが劇の悪役っぽくて、笑えるんですけど。

「ええっ。そろそろ婿いびり止めましょ?孫の顔、見れなくなりますよ?」

「はっ!孫!もしかして!」

と、期待した顔をするアルサスと副団長。

「まだですけど、今の環境だと、安心して子育てできませんよ。オルスト家、僕の代で終わりかなぁ。父上も母上も悲しむだろうなぁ。……母上にも孫の顔見せたかったなぁ。」

「くっ!リナ先輩の名前を出しやがって。俺がリナ先輩に頭が上がらないことを知っていて。」

悔しそうな顔をする副団長。

「ギルは、リナイエル様には本当にお世話になっていたからねぇ。…仕方ない。婿いびりは止めるか。」

同じく悔しそうな顔をするアルサス。
僕は、『よっしゃあ!』と心の中で歓喜する。それと同時に母上に感謝をする。そして、母上もよくこの2人の面倒をみれていたよなと、尊敬もする。
もちろんこんな会話をしながらも、3人で魔物を次々と倒していく。





「なぁ、なんで、あんなに喋りながら、一撃で魔物を倒せんだ?」

「知らん。副団長も副部長も規格外なんだから、俺らでは理解できん人達だと思え。」

「てか、アレクセイの婿様、民間人ですよね?」

「あの2人が認めるからには、婿様もやっぱり規格外になるだろ?それより、手を動かせ。」

「……うっす。」

と、こんな会話があったとは、3人は露知らず。

結婚したとは言え、アレクセイ人気は衰えずで、虎視眈々と婿・嫁の座を狙っていた者達もいたが、アシェルのあまりの強さに、本人が知らないうちに狙っていた者達を蹴散らしたのであった。
仮にアレクセイと結婚できたとしても、義両親(騎士団長・魔法師団長より強いという噂の2人)からのいびりが付いてくると聞いて、アレクセイとどうにかなりたいと思う人は、この日を境にいなくなったという。





あらかたの魔物が片付いたけど、未だアレクセイ達の結界まで、掘り起こせないでいた。

「ギル、本当にここら辺なのか?」

と、騎士団長が副団長に聞いてくる。

「って、聞いたんだけど。おい、アシェル!ここらで合っているのか?」

と、僕が呼ばれる。

「合っているはずです。セイ君に渡した僕の魔力は、ここら辺から感じますよ。」

「なら、もう少し下かな?」

「う~ん、ちょっと待ってください。」

僕は地面に手をつけて、自分の魔力を探す。
目を閉じて、正確な位置を探る。
1m、2m、…。

「大体、ここらの2m下辺りですね。岩や木があるみたいなので、周りも一緒に撤去しないと、結界を解いたら、中に雪崩れ込む可能性がありますね。」

「結界はどのくらい持ちそうか?」

「さっきセイ君に魔力を渡したから、2日は大丈夫です。でも、土石の圧力がどのくらいか予測出来ないから、消費量がどのくらいかわからないので、なるべく早めが良いに越したことはありません。それに体力より、精神的に閉鎖空間は危険だって言われてますし。」

「そうだな。」

「騎士だけなら、心配はいらないと思うけど。」

「ちょっと待った!魔力譲渡だと!」

と、言ってきたのは魔法師団長。僕の肩を掴み、ガクガクと僕の肩を激しく揺らしながら聞いてくる。

「え、えぇ、魔力、譲渡、しま、した。」

揺らされているから、答え方が変になってしまった。

「だから、どうやって!離れていてどうやって譲渡できるんだ!」

あまりにも揺らされて答えられない僕。
気の毒に思った騎士団長、副団長が魔法師団長を羽交い絞めにして、引き離してくれた。

「ケホッ、宝石を使いました。同じ宝石で作られたカフスボタンをセイ君が持っているので、それを通じて渡したんです。」

「……そんなことができるのか?!!」

「昔、アルサスさんに習いましたよ?ね、アルサスさん。」

「…教えたっけ?あれ?……理論上の話だけしか、しなかったような?あれれ?」

「そうでしたっけ?…実践でも使えましたね。成功しましたね。」

「……できるもんだねぇ。まず、宝石を2つに分けることは少ないし、小さな宝石に術印を施せる人はいないから、無理だと思ったんだよ。……でも、ここにいたねぇ。」

と、アルサスさんは呆れながら僕を見て言う。

「術印はどんなものだ!詳しく!!」

と、食い気味でくる魔法師団長。
でも僕は、早くアレクセイを見つけたかった。

「いいから、セイ君達の捜索しませんか?人命が掛かっているんですよ?」

それには騎士団長他周りの人達も同意する。
魔法師団長も周りの冷たい視線で、冷静さを取り戻してくれて、謝ってくれた。
けれど、術印は諦めてくれないみたいで、全部が終わったら教えて欲しいと、念押しにお願いをされたのだった。







土石を掘り起こしても、中々結界に辿り着けなくて、周りの人達も疲れが滲み出てきたし、陽も沈みかけてきた。
団長達が『今日はここまでにするか』と話し合っていたら、一人の騎士が、

「団長!ここ!土石の下から光が漏れて見えます!」

と、大声で叫んだ。
日が暮れてきて暗くなってきていたから、反対に見つけることができた。
周りから安堵の声が漏れる。
僕もほっと一息を吐く。
そしてあともう一踏ん張りとなった。





アレクセイに会えるまでもう少し。
早くアレクセイに会いたい!


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