何もしない悪役令息になってみた

ゆい

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本編

12

呼び方がわからないから、『陛下』って言ったら、『大叔父様がいい』と返ってきたので、『大叔父様』と呼ばせてもらえることになった。祖母と顎のラインは似ていたけど、全体の形が似ている。目の色や鼻の形、口の大きさなどパーツが似ていないから、そう見えていたみたい。

「リアムは、顔はアムールにそっくりだな。瞳は紫か。珍しいな。」

今度は僕が頭を撫でられている。前皇帝陛下の大きな手は、優しく僕の頭を撫でてくれる。

「瞳は母からです。」

「そうか。儂の瞳は緑色だ。」

「緑色って……エメラルド?翡翠?」

「ははっ!瞳の色を宝石に例えるのは、流石、アダマス王国生まれだな。」

「そうなんですか?」

「我が国では色でしか認識していないからな。さて、儂の瞳はなんだと思う?」

「う~ん。お祖母様はガーネットやルベライトみたいに深い色の紅い瞳ですので、大叔父様は、多分エメラルドです。透き通っていて、でも深い緑色。」

「そうか。アムール、答えはなんだ?」

あれ?自分で答えないの?でも自分の瞳の色なんて、鏡でよく見ないとわからないよね。僕も言われるまで、紫って思わなかったもの。

「昔はエメラルドでした。今は瞳の色が少し薄くなっているようで、ペリドットのような黄緑色になってきましたね。」

「だ、そうだ。」

瞳の色が変わるって、本当に異世界なんだぁと変なところで実感した。って、目の病気とかじゃないのよね?後で聞いてみよう。

「むぅ、半分ハズレましたか。残念です。」

「しかし、アダマス出身の者がモテる理由がわかった。瞳の色を宝石に例えるのは、その気がなくとも、コロッと落ちてしまうな。」

前皇帝陛下は、多分祖父を見ながら言っているのだろう。祖父から居た堪れない雰囲気が出ている。

「この国では、伴侶や婚約者や恋人に自分の瞳の色の宝石を送ったりはしないのですか?」

僕は聞いてみる。

「金や銀などの鉱山はあるけど、宝石の出る山はこの国にはないな。この国では、宝石は本当に高価で、貴族でも特別なことがなければ、買い求めないぞ。しかもほとんどがアダマス産だ。」

「そうなんですね。」

経済学で学んだ通りの内容で、帝国周辺国の宝石はアダマス産が主流であった。
アダマス王国が豊かなのは、宝石のおかげだから、家名に宝石の名前がつけられている。

「リアムは宝石を送り合うような相手がいるのか?」

「いえ、いません。目が見えない僕では、何の旨味もないですし。」

「…旨味って。学園入学前なのによく難しい言い回しができるなぁ。偉いなぁ。」

と、また頭を撫でられる。

「…10歳です。(小声)」

「ん?なにか言ったか?」

「僕、10歳です!!」

と、ちょっと涙目になって、僕は叫んだ。
耳元で叫ばれて、前皇帝陛下もびっくりした。
『こらっ!』ってお祖母様に怒られたけど、不敬でも、年齢はきちんと正さないと今後また同じことを言われてしまう。
それに僕ってそんなに小さい子に見えるのかなぁ。顔が似ている祖母もそうだったのかなぁ?

「お祖母様、質問です!」

「先に兄上に謝りなさい。」

「大叔父様、大声出してごめんなさい。お祖母様!」

ぺこりと謝って、祖母に聞いてみる。

「で、何?」

「お祖母様も10歳の時に7~8歳に間違えられていましたか?」

「「ブフッ!!」」

前皇帝陛下と祖父がふいた。

「そうそう、アムールは15になっても、10歳くらいに間違えられたな。」

「私と出歩くと、『歳の差夫夫ですね』とか、『息子さんですか?』と言われるよ。同い年なのに。若い時はまだ、ちょっと歳上の夫だったが。」

祖父の落胆した声に、

「僕も15歳になっても、10歳くらいにしか見えないんだ。」

更に落胆した僕の声が響く。
遺伝て言われてしまえば、それまでだけど、でも年相応には見られたいよ。

「リアムは、私似が嫌なの?」

「嫌じゃないです!お祖母様の綺麗なお顔は素敵です。でもいつまでも幼い子に見られて、みんなから幼児扱いされるのが、嫌なんです。」

「「「幼児扱い。」」」

「屋敷内しか歩けないから、お祖父様やお祖母様みたいに筋肉がないし、運動できないし。お祖父様達はすぐに抱っこするし。僕も筋肉が欲しいです!」

「ブッ!」

前皇帝陛下がふいた。

「そうか、リアムが心配で移動する時は、ついつい抱っこしていたからな。」

祖父は本当に可愛い孫のためならと、何でもしてしまうから。

「リアムはいい筋トレになったのに。」

祖母の言葉にカチンとくる。

「お祖母様だけ、筋トレ狡いです。僕もしたいです!」

「はいはい。できるところから始めようか。」

祖母は呆れながらも、約束をしてくれた。

「ところで、大叔父様はどこが悪いんですか?」

「どこってわけもないのだが、倦怠感が酷くてな。口内からも出血したりで、原因がわからないんだよ。」

…あれ?なんか聞いたことがある。なんだっけ?……国民的アニメでみた記憶がする。
なんだっけ?海賊のヤツ……。

「ああ!船乗りの病!」

「おお、リアムは凄いな。まさに医師の診断を言い当てるなんて!」

また頭を撫で撫でされる。

「大叔父様、柑橘類です。オレンジとかレモンとか食べるんです!」

「ほぉ。」

「柑橘類の酸っぱいのが、薬になるんです!」

「なるほど。」

「リアム、どこの知識なの?そんなことは医学書でも読んだことないよ。」

確かにこんな知識は出回っていない。しかも僕が読んでもらっている本は限られている。…いや、アレにそれっぽいことが書かれてあった。そして、リオネル様達と話し合いをしたんだ。

「『勇者の冒険譚』です。航海の途中、具合が悪くなった仲間を助けるために、立ち寄った島で、レモンの果実水を飲んだら、治ったってありました。病名は書かれていませんでしたが、一番元気な剣士が病気にかかったので、リオネル様達と何の病気か調べたんです。そしたら、船乗りの病が一番それに近くて。」

ちゃんとリオネル様と色々と調べたんだよ。その時はアニメのことなんて思い出さなかったけど、柑橘類の酸っぱいのが効果あるんじゃないかってサイラス様が気が付いたんだ。
サイラス様の領地は海に面しているから、父君と話し合って検証してみるって言っていたし。まだ結果まで聞いていないから、検証途中だと思うんだ。

「でも、柑橘類が効くとはわからないでしょ?」

「でも、試して欲しいです。良くなってもらいたいです。」

ビタミンCとか言ったところで尚更理解してもらえないけど、でも摂取してもらいたい。

「……なら、試すだけ試そうか。もう医師達も色々と手は尽くしたが、良くはならなかったから。」

「兄上がそう言うのなら。」

祖母の声は仕方ないなっていう感じだ。

「大叔父様、信じてくれてありがとうございます。」

僕は、頭の上の前皇帝陛下の手を両手でぎゅっと握る。『ありがとう』と『快癒しますように』と気持ちを込めて。


前皇帝陛下と祖父と祖母が3人でおしゃべりをしながら、僕は前皇帝陛下に抱っこされた。祖父と同じくらい、いやそれ以上に大きなお身体で、小さい僕なんかすっぽりと包まれる。
体温の温もりで、段々と瞼が落ちていく。
まずいって思う前に、すーっと眠ってしまった。

「おや、リアムは寝たぞ。」

「馬車には慣れていないから、疲れが溜まっていたし。」

「寝顔もアムールそっくりだな。」

前皇帝陛下はリアムの頭を撫でる。

「医師の診察は?」

「一応受ける予定にいます。この子自身は期待していませんけど。」

「もう見ることを諦めたのか。……いや、諦めてないな。先程も確信を持って、柑橘類を勧めてきた。実証されていないから、説明できないだけで、リアムは効くことを。」

「兄上、…それって…。」

祖母は、手で口を押さえる。その後の言葉は口にしたくないみたいだ。

「可能性の話だ。」

「…アル、私には、話が見えないのだが。」

「あ、ああ。後で説明する。」

少し顔色を悪くなった祖母と眠ってしまった僕を横抱きをした祖父は、前皇帝陛下の宮から下がった。


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