たとえばこんな恋模様

響 恭也

文字の大きさ
9 / 14

入籍にいたる過程・・・いろいろすっ飛ばしました

しおりを挟む
 家に帰宅してスマホから佳代さんにメッセージを送る。いつもの習慣になりつつあるやり取り。普段はすぐに「おかえり」ってメッセージが来るんだけど、今日は珍しく電話が鳴った。

「あ、もしもし、ゆーくん、ちょっとお話したいことがあって」
「うん、どうしたの?」
「ちょっと知らせたいことがあってね」
「どんな話?なんか怖いな」
「んー、いい話、なのかな?」
「うん、聞かせてくれる?」
「えっとね、赤ちゃん、できたの」
「え?えええええええええええええええええええええええええええええ??」
「あ、ごめんね、迷惑だった?」
「やったああああああああああああああああああああ!」
思わず大声で叫んでしまった。けどふつう叫ぶだろ!?
「きゃっ!?」
驚かせてしまって申し訳ない。けれどうれしかったから仕方ない。
「とりあえず明日有給とる!待ってて!」
「あ、あの、ゆーくん?」
「うれしい。すっげえ嬉しい。胸がなんかあったかい、これって幸せってことだよね?」
「うん、うん。そうだね。わたしもいますごく幸せ」
「あははは、夢みたいだ。佳代さんがお嫁さんで、子供も生まれるって」
「夢じゃないよ。わたしはちゃんといるよ」
「そうだね。とりあえず明日はそっち行くから」
「あ、うん、待ってるね」

 電話を切った。思わず飛び跳ねる。一人で騒いでいると、ドアがノックされた。アパートの大家さんだ。
「あ、ごめんなさい、うるさかったですよね」
「いいけど何かあったのかい?やったーとか聞こえたけども」
「えーとですね、婚約者がいるんですが」
「ああ、この前来てたお嬢さんね。奇麗な人じゃない、このこの」
「あははは、それでですね。赤ちゃんができたと連絡がありまして」
「あら、それはおめでたいね。あ、けど、まだ籍入れてないのかい?」
「そうなんですよ。結婚準備中でして。けどそうも言ってられないですよね」
「そうだね。早く行っておあげなさい。喜ぶよ」
「はい、お騒がせしてすいませんでした」
「はい、おやすみなさい」

 とりあえず上司にメールを送る。返事はないが、明日朝一で電話すると決めて布団に入る。心臓の音が響く、テンション上がりすぎて眠れない。けど無理やり目を閉じる。けど眠れない。とりあえず子供の名前を考えることにした。あーでもない、こうでもないと考えているうちに俺の意識は眠りに落ちていった。
 スマホの音で目を覚ます。上司から電話だ。申請やっとくからとっとと規制しろとのありがたいお言葉だった。着替えて電車に飛び乗る。最寄駅からバスに乗り換えて1時間。初夏の故郷は相変わらず海風が潮の香りを運んできていた。バス停を降りるとお迎えが来ていた。母と佳代さんだ。思わず二人そろって抱きしめてしまう。母はあきれたような、佳代さんは満面の笑みを浮かべていた。

「えっと、まずは籍を入れましょう」
「いいの?」
「いやまって、順番が変わっちゃったのは事実だけどさ」
「だって、あのその・・うー」
「佳代ちゃん。わたしはね。娘もほしかったの。だから、お嫁さんに来てくれたらうれしいな」
「はい、ありがとうございます、おばさん」
「違うわよ?」
「え?」
「ママって呼びなさい!」(ドヤァ
「わかったよ、ママ」
「気色悪い!」
「ひどい、何だこの差は」
「あはははは。えっと、おかあさん。末永くよろしくお願いします」
「うん、じゃすぐ役場いって書類もらいましょ。証人欄は病院行ってきなさい」
「あ、そうだね。わかった」
「あ、お父さんに言ってなかった」
「え?それはひどくない?」
「・・・てへ?」
「あー、かわいいから許す」
「あー、あー、オアツイコトデスネー」
「母さん、すねてもかわいくない」
「いいもん、お父さんはかわいいって言ってくれるもの」
「ゆーくん、20年後もかわいいって言ってくれる?」
「当り前じゃないか!」
「とりあえず、その所かまわずいちゃつく習性は私とお父さんの影響かねえ?」
「「いちゃなんかついてません!」」

 病院へ向かう。おじさんはまだ入院していた。婚姻届けに俺と佳代さんの名前を記入する。そしておじさん・・・お義父さんに証人欄を買てもらえるよう頼んだ。最初は疑問の表情を浮かべていたけど、佳代さんに赤ちゃんができたことを伝えると、泣き笑いの表情で、おめでとうと言ってくれた。ちょっと震える手で記入してもらい、役場に出しに行く。窓口は顔なじみの近所のおばちゃんで、もちろん噂話などは回っており、ややにやにやしつつ書類を受理してくれた。
 今後のことだけど、佳代さんは出産まではこちらに住む。生まれた後で、俺のほうで、家族向け住居などを探すことにした。
 俺たちの先行きには、明るい未来しか見えなかったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

忖度令嬢、忖度やめて最強になる

ハートリオ
恋愛
エクアは13才の伯爵令嬢。 5才年上の婚約者アーテル侯爵令息とは上手くいっていない。 週末のお茶会を頑張ろうとは思うもののアーテルの態度はいつも上の空。 そんなある週末、エクアは自分が裏切られていることを知り―― 忖度ばかりして来たエクアは忖度をやめ、思いをぶちまける。 そんなエクアをキラキラした瞳で見る人がいた。 中世風異世界でのお話です。 2話ずつ投稿していきたいですが途切れたらネット環境まごついていると思ってください。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

処理中です...