これってゲームじゃなかったの?

アノンドロフ

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VR体験してみた。

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 朝食を済ませ、要りそうなものを肩掛けカバンに突っ込んでから近所の広場へと向かう。
 今日はそこでちょっとしたイベントがあって、今話題のVRの体験ができるブースも出ている。そう、クラスの男子に聞いた。こんな田舎だ。近くで体験できる機会なんて、今を逃せばしばらくないだろう。
 広場の近くまで行くと、楽しげな音楽が響いてきた。ちょうど特設ステージでライブが行われているようだ。これなら、目当てのブースにはあまり人がいないだろう。
 通りに並んだ出店を眺め、お昼ご飯に何を買って帰ろうか考えながら、「VR体験!」と書かれたのぼりが立っているテントへと向かった。
 思っていた通り、係りの人以外誰もいない。退屈だったのか、私を見るなり顔を輝やかせた。
「いらっしゃいませ! VR体験ですか?」
 私は「はい」と答えてからテント内を見渡す。パイプ椅子が何脚かあって、端のほうではフランクフルトが売られている。値段がちょっと高い。
 係りの人の案内通り椅子に座り、説明を聞く。

 体験時間は十分。その間でVRゲームをプレイする。ジャンルはRPG。

 説明を聞いている間に、VRのゴーグルみたいなあれとゲームソフトが山積みになっているのを発見した。たぶん、体験後に紹介されるのだろう。どうしよう。そんなにお金持ってきてない。欲しいけれど買えない。
 後でお金を取りに家に帰ろうか悩んでいると、説明が終わったのか頭にすっぽりとゴーグルをつけられた。
 真っ暗だ、と思った瞬間。目の前が色鮮やかな色彩へと変わった。
 草原だ。
 本物にしか見えないぐらいの、草原だ。
「……」
 なぜだろう。匂いも風も感じるのだが。
 おそらく、あまりにも本物そっくりな風景に、脳が誤作動を起こしているのだろう。
「すごい……」
 これが技術の進歩……すごすぎて逆に怖い。
 ぼーっと見とれていると、視界の隅で何かが光った。
 そこに目を向けると、視界が半透明の文字列で埋め尽くされた。
「これ……ステータス? かな?」
 とりあえず、読んでみる。面倒だけど。

 瀬戸内 奈々(セトウチ・ナナ)Lv1
 HP:300  MP:600
 耐久:100  筋力:10 (MAX)
 敏捷:100  魔力:600
 【武器召喚】【武器成長】【成長補正】
 武器適性:   魔法適性:

 ふむふむ、なるほど。MPと魔力が高いね。
 そして、筋力が他に比べてめちゃくちゃ低いね。しかも、MAXってついてるね。
 ……。
 ……。
「マジですか!」
 これって、成長しても筋力低いままってことだよね?! ってことは、斬ったり刺したりできないってことだよね?! そういうことだよね?! 
 うわ~、残念。ばっすんばっすんしたかったのにな~。つらい。
 パラメーター的に、私は魔法使いになるようだ。物理攻撃したかったな。
 こればっかり見ててもしょうがないので、一旦閉じてフィールドを歩いてみることにしよう。

 クエスト「旅の支度」(クリア条件:ステータスを確認する)をクリア!
 クエスト「旅立ち」(クリア条件:チュートリアルを終える)が解放されました!
 チュートリアルを開始します。

 ……チュートリアルが始まるそうだ。目の前に赤い矢印が伸びている。ここに行けということなのだろう。
 指示された通り歩いていくと、獣っぽい魔物が現れた。
 ……これを倒すの? なにも武器持ってないよ?
 とりあえず魔物から距離をとって様子を見る。いきなり襲ってくることはなさそうだ。

「これから、スキルの説明を始めます」

 目の前に魔物がいるためか、音声つきでナビが始まる。

「【武器召喚】 武器を異次元から呼び出すスキル。一度に呼び出せる数、種類は無制限。
 【武器成長】 【武器召喚】で呼び出せる武器を成長させる。常時発動。
 【成長補正】 レベルが上がりやすくなる。常時発動。パーティーメンバーにもかけることが可能。
それでは、【武器召喚】を使って武器を呼び出し、魔物を倒してください」

 えーと……つまり? 武器はスキルで出せると? そういうこと?
 ……どうやって使ったらいいの? 
「……スキル名言わないとだめ?」
 ……言ってみる?
「ぶ……【武器召喚】……」
 選択肢が現れる。すべて武器の種類だったので、一番上にあった「剣Lv1」を選んだ。
 アクションゲームではいつも槍を選んでいるが、自分自身で扱うならば槍よりも剣の方が扱いやすいだろう。敵に当たる可能性が増える。
 ……このゲームってほとんどリアルに近いの。だから普段やってるゲームとは勝手が違うの。だからこんなこと言ってるの。オゥケィ?
 両手で柄をしっかり握りしめ、魔物へと接近する。そして、力一杯降り下ろした。
「当たった……!」
 当たった。確かに、当たった。しかし、まだ倒せていない。
 襲いかかってくる魔物をなんとか避け、もう一度切り裂く。
 それを繰り返すこと、五回。
 やっと倒せて、魔物がエフェクトを撒きながら消えていく。
「私……どんだけ弱いの……」
 こんな弱さで、これからやっていけるのだろうか。すごく不安になってきた。
 ……いや、ちがうちがう。これはただ体験しているだけ。ずっとプレーし続ける訳じゃあない。
 間違えて、現実だと思ってしまった。
 さっきの魔物からドロップしたものを拾い集めてカバンの中に入れ、赤い矢印の指している方へ向かう。
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