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冒険の始まり
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この世界では、全ての魔法が使えるもの──つまり、オールラウンダー(魔法)のことを賢者と呼ぶらしい。
賢者は、おもに政治に関して王様に進言するのが役割なのだそうだ。
魔法屋のおばあさんが城に向かって走っていく間にそれをリタさんに聞いて、すぐに逃げ出した。
だって私、政治とか分かんない。
魔法屋のおばあさんには悪いけれど、恐らく私には務まらないだろう。
それよりも、私はリタさんと冒険がしたい。
「リタさん、さっきので私、魔法使えるようになったかな?」
「はい、もう使えると思いますけど……まさか、今から行くつもりですか!?」
「うん!」
「待ってください! まだ、武器が……」
「それは大丈夫! ちょっとだけ戦ってみたいの」
リタさんに、ちょうどいい狩り場を案内してもらった。私が最初にいたところと同じ場所だった。
えっと、リタさんの武器適性はたしか剣とダガーだったっけ……。
「リタさん、剣でいい?」
「はい、お願いします」
ここに来るまでのあいだに、私のスキルの話はしていた。
【武器召喚】で剣を呼び出し、リタさんに渡す。あとは……。
「ナナちゃん、あっちにホーンマウスの群れがいました!」
「了解! 【氷結】」
【氷結】は氷系の魔法のひとつ。モンスターの周囲を凍らせ、動けなくさせることができる。
地面ごと足が凍りついて動けなくなったホーンマウスに向かって、リタさんが剣を振る。
「セイッ」
さすがは筋力300。一度攻撃を当てるだけで倒してしまった。
いいなー、私も戦いたい。私にも、筋力それくらいあったらなー。まあ、MAXだからしかたないけど。私にはもう、魔法を使うのになれるぐらいしかない。
そんなことを思いながら、モンスターを狩ってアイテムを拾うことを繰り返すこと数時間。
少し戦ってやめようとしていたけど、予想以上にサクサク倒すことができて、レベルも三つ上がって。私もリタさんも、夢中になりすぎていた。
日も落ちてきたから一旦戻ろうかと言おうとして、辺りを見渡すとそこは森の中。モンスターを探すうちに、こんなとこまで来てしまったのだ。
夜になるまでに、はやくここからでないといけない。
「リタさん」
戻りましょう。という言葉は出てこなかった。
私の後ろから、なにかが来る音が聞こえたからだ。茂みの音だけでなく、足音がこんなに響いてくるということは、相当大きなモンスターなのだろう。
「ナナちゃん、この森、たしか熊のモンスターが」
熊。
「それじゃ、この足音は……」
「おそらく」
リタさんは剣を抜く。剣先が、震えている。
「この足音の主は、私たちを狙ってます。モンスターの血の臭いに誘われているのでしょう。そんな状況で、私たちが近くの街まで逃げてしまったら」
「……街まで、熊がついてくるかも」
リタさんは、こくりとうなづいた。
「援護、お願いしますね」
木々の向こうから現れたのは、本当に熊のモンスターだった。体長3メールはありそうだ。
「【氷結】!」
これまでと同じように、魔法で凍らせようとしたがだめだった。無理矢理足を動かして、何事もなかったかのようにこちらに向かってくる。
「えっと、【鋼の守り】! 【目眩まし】!」
モンスターの動きを止める代わりに、リタさんに防御力をあげる魔法をかける。あと、効くかはわからないけどモンスターに強烈な光を当ててみる。
モンスターの注意が、光の方へと向いた。
「リタさん!」
「はい! 【風刃】」
風魔法とともに、リタさんの刃がモンスターの足を切る。しかし。
「硬い……!」
リタさんの与えたダメージは、わずかなものだった。
モンスターの目が、リタさんの方へ向く。唸る。足を踏み出す。
ヤバいヤバいヤバいヤバい!
あのままだと、リタさんが! リタさんがやられてしまう!
どうしよう、もう一度【目眩まし】を使う? だけど、二度も効いてくれないよね。
あと私にできることは簡単な支援魔法と武器召喚だけ。オールラウンダーって呼ばれても、まだレベルの低い私ができることは限られている。
……いや、待てよ? 私にも、戦う術はあるじゃない。
「【武器召喚】【神経毒】【暴風】【ファイアーストーム】!」
指定は剣とダガーと槍と斧。それをたくさん。全部に毒を付与する魔法を掛けて、モンスターに向かって発射。
足りない威力は風魔法と火魔法で補う。
これが、私の思い付いた最大の攻撃。できるかどうかはわかんなかったけど、モンスターの両膝を地面に着かせることはできた。あとは。
「【ファイアーフォース】【円舞】」
標的から逃れたリタさんが、炎をまとって舞うように熊の首を切り落とした。赤いエフェクトが、炎とともに弾けた。
「ナナちゃんが【武器召喚】って言ったとき、本当に驚きました」
ドロップしたアイテムを回収しながら、リタさんはそう言う。二人とも、無事だ。
「まさか、あんな風に攻撃するなんて……」
「私も、リタさんがあんなに強いなんて」
「心得持ってますから」
自慢気に、胸をそらすリタさん。
「心得……魔法の心得もあるのかな……」
「噂は聞いたことがあります。たしか、魔法をたくさん使うと得られるとか」
なるほど。今はそれを目指して頑張るか。魔法のレパートリーも増えるかも知れないしね。
クエスト「魔法使いへの道」(クリア条件・・・【魔法の心得】の取得)を開始します……
賢者は、おもに政治に関して王様に進言するのが役割なのだそうだ。
魔法屋のおばあさんが城に向かって走っていく間にそれをリタさんに聞いて、すぐに逃げ出した。
だって私、政治とか分かんない。
魔法屋のおばあさんには悪いけれど、恐らく私には務まらないだろう。
それよりも、私はリタさんと冒険がしたい。
「リタさん、さっきので私、魔法使えるようになったかな?」
「はい、もう使えると思いますけど……まさか、今から行くつもりですか!?」
「うん!」
「待ってください! まだ、武器が……」
「それは大丈夫! ちょっとだけ戦ってみたいの」
リタさんに、ちょうどいい狩り場を案内してもらった。私が最初にいたところと同じ場所だった。
えっと、リタさんの武器適性はたしか剣とダガーだったっけ……。
「リタさん、剣でいい?」
「はい、お願いします」
ここに来るまでのあいだに、私のスキルの話はしていた。
【武器召喚】で剣を呼び出し、リタさんに渡す。あとは……。
「ナナちゃん、あっちにホーンマウスの群れがいました!」
「了解! 【氷結】」
【氷結】は氷系の魔法のひとつ。モンスターの周囲を凍らせ、動けなくさせることができる。
地面ごと足が凍りついて動けなくなったホーンマウスに向かって、リタさんが剣を振る。
「セイッ」
さすがは筋力300。一度攻撃を当てるだけで倒してしまった。
いいなー、私も戦いたい。私にも、筋力それくらいあったらなー。まあ、MAXだからしかたないけど。私にはもう、魔法を使うのになれるぐらいしかない。
そんなことを思いながら、モンスターを狩ってアイテムを拾うことを繰り返すこと数時間。
少し戦ってやめようとしていたけど、予想以上にサクサク倒すことができて、レベルも三つ上がって。私もリタさんも、夢中になりすぎていた。
日も落ちてきたから一旦戻ろうかと言おうとして、辺りを見渡すとそこは森の中。モンスターを探すうちに、こんなとこまで来てしまったのだ。
夜になるまでに、はやくここからでないといけない。
「リタさん」
戻りましょう。という言葉は出てこなかった。
私の後ろから、なにかが来る音が聞こえたからだ。茂みの音だけでなく、足音がこんなに響いてくるということは、相当大きなモンスターなのだろう。
「ナナちゃん、この森、たしか熊のモンスターが」
熊。
「それじゃ、この足音は……」
「おそらく」
リタさんは剣を抜く。剣先が、震えている。
「この足音の主は、私たちを狙ってます。モンスターの血の臭いに誘われているのでしょう。そんな状況で、私たちが近くの街まで逃げてしまったら」
「……街まで、熊がついてくるかも」
リタさんは、こくりとうなづいた。
「援護、お願いしますね」
木々の向こうから現れたのは、本当に熊のモンスターだった。体長3メールはありそうだ。
「【氷結】!」
これまでと同じように、魔法で凍らせようとしたがだめだった。無理矢理足を動かして、何事もなかったかのようにこちらに向かってくる。
「えっと、【鋼の守り】! 【目眩まし】!」
モンスターの動きを止める代わりに、リタさんに防御力をあげる魔法をかける。あと、効くかはわからないけどモンスターに強烈な光を当ててみる。
モンスターの注意が、光の方へと向いた。
「リタさん!」
「はい! 【風刃】」
風魔法とともに、リタさんの刃がモンスターの足を切る。しかし。
「硬い……!」
リタさんの与えたダメージは、わずかなものだった。
モンスターの目が、リタさんの方へ向く。唸る。足を踏み出す。
ヤバいヤバいヤバいヤバい!
あのままだと、リタさんが! リタさんがやられてしまう!
どうしよう、もう一度【目眩まし】を使う? だけど、二度も効いてくれないよね。
あと私にできることは簡単な支援魔法と武器召喚だけ。オールラウンダーって呼ばれても、まだレベルの低い私ができることは限られている。
……いや、待てよ? 私にも、戦う術はあるじゃない。
「【武器召喚】【神経毒】【暴風】【ファイアーストーム】!」
指定は剣とダガーと槍と斧。それをたくさん。全部に毒を付与する魔法を掛けて、モンスターに向かって発射。
足りない威力は風魔法と火魔法で補う。
これが、私の思い付いた最大の攻撃。できるかどうかはわかんなかったけど、モンスターの両膝を地面に着かせることはできた。あとは。
「【ファイアーフォース】【円舞】」
標的から逃れたリタさんが、炎をまとって舞うように熊の首を切り落とした。赤いエフェクトが、炎とともに弾けた。
「ナナちゃんが【武器召喚】って言ったとき、本当に驚きました」
ドロップしたアイテムを回収しながら、リタさんはそう言う。二人とも、無事だ。
「まさか、あんな風に攻撃するなんて……」
「私も、リタさんがあんなに強いなんて」
「心得持ってますから」
自慢気に、胸をそらすリタさん。
「心得……魔法の心得もあるのかな……」
「噂は聞いたことがあります。たしか、魔法をたくさん使うと得られるとか」
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