あなたと生きたい。吾子

青葉めいこ

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20 三年ぶりの再会

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 翌日、私、タスク、レオン、リリ、ミーヌ、トオルは、王都に向かった。アンディと話し合うためだ。

 ミーヌとトオルには何度も「来なくていい」と言ったのだが、二人の気持ちを変えられなかった。

 前世からの縁と……今生の自分がした事でトオルは私とタスクに対してミーヌ同様「守らなくては」という気持ちがあるようだ。

 ミーヌにしてもトオルが私とタスクに対して、そんな気持ちだからというだけでなく前世の縁故に自分も私やタスクと無関係でいられないと思っているようなのだ。前世の記憶があっても表出している人格が今生ミーヌなら彼女は「お母さん」ではない。私とタスクの事は放っておいてくれて構わないのに。

 王都に向かう前に、南門のゲートハウス宛に辞表を送っておいた。アンディとの話し合いによっては、また彼の元で生活できるかもしれないし、できなくてもオザンファン侯爵領に戻るつもりはない。

 元々、旅に耐えられるほどタスクが成長したら国を出るつもりだった。アンディ達と二度と会わないように。予定より少し早いが、話し合いの結果によっては国を出るつもりだ。

 列車と車で二時間ほどで王都にある三年前まで私が暮らしていたやしきに到着した。

 邸の玄関前で我知らず繋いでいたタスクの手をぎゅっと強く握っていた。

 いくら中身が「彼」でも、あの冷静沈着なアンディや荒事が苦手なウジェーヌがいきなりタスクを襲うとは思わない。

 けれど、話し合いによっては、あるいは――。

 その時は、私がタスクを守る。

 三年前に私は今生の家族ともいうべき彼らよりタスクを選んだのだ。

 望まない行為の結果出来た子であるだけでなく、前世から何のためらいもなく私を殺そうとし、将来私を殺すだろう彼を――。

「大丈夫だ。ジョゼ」

 タスクもぎゅっと私の手を握り返してきた。

「君の危惧する事にはならない」

「え?」

 タスクの言葉に驚いていると扉が開かれた。

「お帰りなさい。ジョゼ」

 三年ぶりのテノールの美声とともに内側から扉が開かれた。

 ブルノンヴィル辺境伯でなくなってからアンディも私を敬称なしで呼ぶようになった。

「……アンディ」

 三年という年月は成長期だったレオンとリリを大人にしたが、すでに大人だったアンディは一見肉体的には変わらない。ただ美しさが増しているだけだ。

「ジョゼ。無事でよかったです」

 レオンのように勢いよくではなかったがアンディも出会うなり私を抱きしめてきた。冷静沈着な彼には珍しい行動だが、それだけ私の身を案じ実際に触れて確かめたいのだろう。

「……心配かけて、ごめんなさい」

 アンディの広い胸に頭を預けて私は言った。

「……本当に祐だな」

 アンディの隣にいるウジェーヌは、その変わらぬ端正な美貌に微妙な表情を浮かべてタスクを見下ろしている。

 レオンは戻る前日に、アンディとウジェーヌに私が見つかった際の事を電話で話していた。

「ああ。まさかまたこうして会うとは思わなかったがな」

 幼い容姿にはそぐわない言い方だがウジェーヌは気にしない。中身が「彼」だと分かっているからだ。

「……二度と会いたくなかったよ」

 ウジェーヌは、ちらりと私を見た。明らかにその目は「なぜ、生まれた時に殺さなかった?」と問いかけるものだ。

 ウジェーヌとしては不思議でならないのだろう。

 タスクが「祐」であれば、いずれ自分達を殺しにくるのは分かりきっている。

 だのに、「なぜ、無力な赤ん坊のうちに殺しておかないのか?」と。

 唯一の人にしか価値を見出せず、また男であるウジェーヌには理解できないだろう。

 望まない行為の結果でも、お腹の中で十月十日育て死ぬ思いで産んだのだ。

 母としての情が芽生える。

 殺せるはずがない。

 前世から自分を殺そうとし、将来自分を殺す「彼」であってもだ。

「では、俺を殺すか?」

 まさかタスクがそう言うとは思わなかった。

「は?」

「タスク?」

 ウジェーヌは間抜けな声を上げ、私は怪訝そうにタスクを見下ろした。

「いくら俺でも、このガキの体では抵抗できない。今なら、お前でも簡単に殺せるぞ?」

 タスクはウジェーヌを試している訳ではないのだろう。

 荒事が苦手なウジェーヌだが、伊達に《マッドサイエンティスト》(狂科学者)というコードネームで呼ばれていた訳ではない。自らの手を汚す事に、ためらいなど覚えない。

「そんな事」

「させないわ」と続けようとした私を遮るように、タスクが言った。

「だが、そうする前に、話し合ってくれるのだろう?」

 会った瞬間、襲われずにすんだので充分話し合いの余地はあるとタスクも考えたのだ。

「勿論だ。そのために、ジョゼとお前に戻って来るようにレオンに言付けた」

 アンディはそう言うと、玄関前で話すのも何だからと私達を応接室に促した。























 





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