一人になってしまった回復術師は世界を救う

新兎丸

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30話

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   テラは洞窟内のイングベルトの家で研究を手伝わされていた。
毎日のように体を調べられモンスターを倒してレベル上げをさせられ攻撃魔法の効果を調べられた。
   10日余りが経った時テラはようやく自分の目的がメルと合流する事にあったのを思い出す。

「大賢者様そろそろ僕は勇者を探しに行かなければならないのですが…」

「勇者?
勇者達ならとっくに王都に戻ったぞ。
そんな事よりお主の体について大体の事が分かったぞ」

「えっ!メル達はもう行っちゃったんですか!」

「そんな事はどうでも良い!
それよりお主が攻撃魔法を使えるのはな命を削っておるからだ。
正確に言えば本来攻撃魔法を使えないのに無理矢理体の中の心臓から1本の新しい魔力を通す道を作って魔力を外部に通しておるのだ。
   しかしそんな魔力の通し方は普通では有り得ない事でお主は攻撃魔法を使う度に命を削っておる。
だから今後攻撃魔法は使うんじゃないぞ」

「そんな…攻撃魔法を使えないと僕は困るんです!」

「それならお主の命はそう長くは無いだろう。
多分持って2~3年ぐらいだろう。
長く生きたければ攻撃魔法を使わない事だ」

「大賢者様なんとかなりませんか?」

「他にもサンプルがあれば何か思い付くかもしれんがお主1人では厳しいのう」

「そうですか…」

「新しい魔力を通す道が出来たのはお主の努力の成果だろうし誇っても良いと思うぞ。
ただ魔法使いや賢者なら簡単に出来ることだというのが何とも言えんがな」

「そうすると僕はまだメルの力になる事は出来ないのか…」

   テラの目からは涙が零れ落ちていた。
今まで必死に修行した成果が自らの命を縮めてしまうことになるなんて露ほどにも思っていなかったのだ。
   現在のテラの戦い方も攻撃魔法を攻撃や牽制に使ってメイン武器なのにそれが今後使えないとなるとテラにはどうして良いか分からなかった。

「そんなお主にこんな物をやろう」

   イングベルトは曲線を描く刃をした短剣をテラに渡す。

「これは昔に吾輩がゼルマルの牙から作った短剣だ。
攻撃力は大してないが頑丈なのだぞ。
攻撃魔法が使えないならこの短剣で頑張ってみろ!」

「ゼルマルさんの牙で作った短剣…
ありがとうございます」

   テラは短剣をまじまじと見つめる。
攻撃魔法が使えない今は自分に出来るのは短剣による攻撃しかないと考えたのだ。

「ドラゴンの牙で作れば魔力も流れるのではと思って作ったが失敗してしまった物だが頑張れよ。
吾輩は大魔王の事で忙しいから気を付けて帰るのだぞ。
帰りはこの家の裏にある階段を使えば楽に地上と行き来出来るからな」

「えっ…そんないきなり…
まさかこの洞窟に階段があるなんて…
って大魔王って何の事ですか?魔王とは違うのですか?」

「魔王なんぞ大魔王の部下の1人に過ぎんわ!
そもそも大魔王が魔族を生み出しその中から大魔王が魔王を選んでおるのだ」

「つまり魔王じゃなく大魔王を倒さないとこの世界は救われないって事ですか?」

「うむ。
なのに大魔王が影に隠れておるから誰も吾輩の話を信用せんのだ。
魔王など倒しても幾らでも変えが効くというのにな」

「そんな…」

「まあ真の支配者が表に出て堂々としていると考えてる者が愚かなのだがな。
お主も吾輩が戯れ言を言っていると思えばいいのだ。
ただし本当の事が分かった時には遅いだろうがな」

「大賢者様が遊びでそんな事言うとは思えません!
だから僕は大賢者様の言う事を信じたいと思います!」

「好きにするが良い。
しかし今の所確証と言えるものは何も無いぞ。
さてそろそろ吾輩は大魔王について研究せねばならんから研究室に戻るがお主はどうするのだ?」

「僕は………攻撃魔法を使えなくなった訳ですしここに居ても良いでしょうか?」

「吾輩の邪魔をしなければ構わんがここでどうするのだ?」

「ここで攻撃魔法じゃなく他に僕の戦う方法がないかと探してみようと思います。
ここなら大賢者様の本などがありますから何かヒントがあるかもしれないので…」

「ふむそういう事なら良いだろう。
ただし吾輩の研究は邪魔するなよ!」

「はい!」

   テラは攻撃魔法が使えないと言われ次なる自分の武器を探す事にした。
メルと早く合流したいのだが今の自分ではメルの力になれないと判断したのだ。

(メル…僕も頑張るからね)


   それから1週間後イングベルトとテラに別の所から連絡が入る。
イングベルトには王都のギルドからだった。

「セラスの剣が魔王討伐に向けて出発致しました。
つきましては大賢者様も勇者と共に魔王に向かって頂きたいと王とギルドマスターからでございます」

「はぁー何度言えば分かるのだ…
魔王なんて小者を倒すより大魔王を倒さなくちゃならんと何度も言っとるだろうが!」

「その件に関しましては魔王討伐が済んだ後にじっくりと話し合いたいと王からのお言葉です」

「吾輩は魔王討伐など行かんぞ!
大魔王の事で忙しいからな!」

   そう言ってイングベルトは話すのをやめ部屋を出てってしまった。

「やはりそうですか…
では私の口からは王に言えないので大賢者様の口から直接王に申し上げて頂けますか?
大賢者様聞いてますか?
大賢者様…」

   イングベルトが出てった部屋にギルドの職員の声が空しく響き渡っていた。

   一方テラにはゼルマルから連絡が来ていた。

『 お主はいつまでそこに居るのだ?
勇者パーティーに合流するのではなかったのか?』

「お久しぶりですゼルマルさん。
勇者パーティーに合流するには今の僕では力不足なので大賢者様の所で色々と試している所です」

『なんだつまらんな。
 こちらの方では勇者が魔王討伐に旅立ったと噂になっておるぞ』

「その話は先程大賢者様からお聞きしました。
ですが本当の敵は大魔王なんですよね?」

『 ほう…何故そう思う?』

「大賢者様が必死になって調べる程ですから僕は大魔王が居ると思ってます」

『 なるほどな。
だが居るか居ないか分からない大魔王など探しても時間の無駄だ。
だから吾輩の所に来て何か面白い事でもやってくれんか?』

   その時横にいたイングベルトがテラからドラゴンストーンを奪い取り話し始める。

「ゼルマルよ、どうやらその口振りでは大魔王の事を知っておるようだな。
古いよしみでそろそろ話してはくれんか?」

『 むっ!イングベルトよ居たのか…
吾輩の口から言えることなんてありはせんよ。
だから諦めて吾輩の暇つぶしに付き合え!』

「なかなか強情だな。
しかし魔王討伐に向けて勇者達が旅立ったとなれば大魔王も何かしらアクションを起こすかも知れん。
そうなれば吾輩は絶対に大魔王を見つけてやるからな!」

『 …無茶はするなよ』

   ゼルマルからの話はそれで終わった。
今の話を聞いてテラは大魔王が居ることに確信を深めるのであった。

「大賢者様!
今のお話ですとやはり大魔王は居るのですね。
でもゼルマルさんは何故か隠したがっている」

「そうじゃ。
ドラゴン達は何故か話してくれないが確実に大魔王の事を知っておる。
吾輩は謎がある事は許せん質でな…
絶対に大魔王について解明してみせるのだ!」

「僕も出来る限り協力します!
それにしても大賢者様とゼルマルさんって話し方が似てますね」

「似てて当然じゃ!
奴は吾輩の話し方が偉そうだとか言って真似しておるのだからな」

「そうだったのですね…
なんかゼルマルさんらしい理由ですね」

「真似されるこっちは不愉快だがな」

   テラはこの時から大魔王についてイングベルトの協力をする事になった。
テラはイングベルトの今までやった大魔王の研究成果を見せてもらい大魔王について勉強するのであった。

(メル…僕は大魔王について調べるから魔王は頼んだよ…)

   この時テラとメルの道が重なることはなくなった。
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