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魔法学園編(本編)
107.騎士団員
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新しい朝が来る。
王城での勧誘から一夜明け、王都襲撃から数日が2日が経過した今日。
レイブは久しぶりに穏やかな休日を過ごしていた。
屋敷のソファーで横になり、なんとなく天井を見上げる。
大変な事件を終えた後だからだろう。
いつもより脱力している気がする。
ダラダラ時間を過ごしていると、そこへリルネットがやってくる。
「あれ? レイ、時間大丈夫なの?」
「ん? 何が?」
「何がって、今日お城に呼ばれてるんでしょ?」
「あーそうだったっけ」
レイブは重い腰をゆっくりと起こし、ソファーから立ち上がる。
そして大きく背伸びをした。
そんな彼を見て少し呆れたようにリルネットが言う。
「しっかりしてよ? 大変だったのはわかってるけど、遅刻したら怒られちゃうよ」
「ごめんな。そういえばアリスは?」
「アリスなら買い物に行ってるよ」
「そっか。それじゃ行ってくるよ。たぶん昼には帰ってこれると思う」
「うん、いってらっしゃい。アリスにもそう伝えておくね?」
レイブは彼女に背を向け歩きながら手を振る。
そうして家を出た後、王城にある騎士団本部へ向かった。
実は今日、騎士服の採寸と正式な加入申請をするために、アルベルトから呼び出されていたのだ。
「やぁレイブ君、待っていたよ」
「アルベルトさん、おはようございます」
騎士団本部に到着したレイブを、最初に出迎えたのはアルベルトだった。
団長自らお出迎えとは大したビップサービスだと思う。
そのまま彼に案内され、服の採寸をする部屋へ入る。
中には数着の騎士服上下が用意されており、それを着て一番サイズが合っていたものを選ぶ。
襟や袖はその後調整してもらえるそうで、採寸が終わって十数分で完成した。
白を基調としたデザインは、勇者時代の服装を思い出させる。
騎士らしい服装ではあるが若干落ち着かない気分だ。
最近まで魔王だった身としては、なんとなく白より黒の方が好き……というか安心する。
俺は着替えたまま、アルベルトが待つ団長室へ案内された。
「失礼します―――あれ?」
扉をノックし中へ入ると、アルベルト以外にもう一人の姿があった。
その人物は、皆良く知っている彼女。
「おはよう。レイブ君」
「フレンダ先輩?」
生徒会書記のフレンダだった。
彼女もレイブと同じように騎士服を着ている。
服装と状況からなんとなく察するレイブ。
「もしかして先輩も?」
「ええ、私も今日から騎士団に入ることになったわ」
フレンダは微笑みながら答える。
察したとおり彼女もレイブと同じ目的で訪れていた。
「君に伝えずにいてすまない。彼女が今言った通り、今日から彼女も入団する事になっている」
「そうみたいですね。彼女もって事は、同じ非正規団員何ですか?」
「形上はそうなるね? ただ彼女の場合、学園卒業後に正式な入団を希望してるから、多少君とは違うかな?」
「ああ、なるほど……」
レイブが視線をフレンダに向ける。
「おめでとうございます。先輩」
「ええ」
レイブが賛辞を送る。
フレンダの目標は騎士になる事。
亡き父親のように立派な騎士になろうとしている。
以前この話をした際の彼女は、父との差から劣等感を感じていた。
「最初は私なんかが―――って思ったんだけど、この間君に言われた事を思い出して決心したわ。私は私なりに最高の騎士を目指す。父とは違うかもしれないけど、多くの人を守り戦う立派な騎士に」
「そうですね。それがいいです」
どうやらあの時に感じていた劣等感は、多少解消されているようだ。
父とは違うという言葉に若干心残りを感じるが、それでも前を向いて歩き出している。
その事に俺は安心した。
「レイブ君、フレンダ君」
アルベルトが呼びかけ、二人が彼に視線を戻す。
「今日から二人とも騎士団の一員だ。国民を守る刃として活躍を期待するよ」
「「はい」」
良い返事だ。
アルベルトはそう感じている顔をする。
「それじゃさっそくで申し訳ないが、君達に受けてほしい任務がある。聞いてもらえるかな?」
「もうあるんですか?」
フレンダが言う。
「ああ、急ですまない」
「俺は構いませんよ。どんな任務なんですか?」
「これを見てくれ」
アルベルトが一枚の書類を提示する。
そこに記されていたのは、王都周辺の地図だった。
大きな赤い丸が書かれている。
「この地図に記されている地点には、周囲を砦で囲われた大規模な街がある。最近この街周辺での魔物出現数が上昇していてね? 駐屯している騎士だけでは対処しきれない数になっているんだよ」
「そんなに? それは異常ですね」
「ああ。現在原因の調査を行っているが、未だ掴めていない。調査をしている間も魔物は増え続けている。君達にはその増援に向かってほしい」
指定された期間は1週間。
その間に調査を続行し、原因の究明にあたる。
1週間のうちに対処できなかった場合、一旦増援に送った人員を帰還させ、再び大規模な部隊を編成。
魔者達の一斉掃討に移行するらしい。
「つまり俺達の役目は、1週間街を守りぬけって事ですか」
「そういう事になる」
任務内容は理解した。
しかし1週間とは長いな。
その間は俺達も街へ駐屯する必要がある。
今は講義数も減っているし、学園の授業的には問題無さそうだけど、さすがにリル達だけ残して行くのは忍びないな。
悩んでいる最中にレイブが気づく。
隣で同じ話を聞いていたフレンダが、静かにじっと地図を見つめている事に……
「先輩? どうしたんです?」
「えっ? なんでもないわ。ちょっと考え事をしていただけよ?」
「そうですか? ならいいですけど……」
フレンダの反応に違和感を感じつつも、レイブは自身の悩みを改善させる方を優先する事にした。
「アルベルトさん、一つ提案があるんですけど」
「提案?」
「はい。実は―――」
王城での勧誘から一夜明け、王都襲撃から数日が2日が経過した今日。
レイブは久しぶりに穏やかな休日を過ごしていた。
屋敷のソファーで横になり、なんとなく天井を見上げる。
大変な事件を終えた後だからだろう。
いつもより脱力している気がする。
ダラダラ時間を過ごしていると、そこへリルネットがやってくる。
「あれ? レイ、時間大丈夫なの?」
「ん? 何が?」
「何がって、今日お城に呼ばれてるんでしょ?」
「あーそうだったっけ」
レイブは重い腰をゆっくりと起こし、ソファーから立ち上がる。
そして大きく背伸びをした。
そんな彼を見て少し呆れたようにリルネットが言う。
「しっかりしてよ? 大変だったのはわかってるけど、遅刻したら怒られちゃうよ」
「ごめんな。そういえばアリスは?」
「アリスなら買い物に行ってるよ」
「そっか。それじゃ行ってくるよ。たぶん昼には帰ってこれると思う」
「うん、いってらっしゃい。アリスにもそう伝えておくね?」
レイブは彼女に背を向け歩きながら手を振る。
そうして家を出た後、王城にある騎士団本部へ向かった。
実は今日、騎士服の採寸と正式な加入申請をするために、アルベルトから呼び出されていたのだ。
「やぁレイブ君、待っていたよ」
「アルベルトさん、おはようございます」
騎士団本部に到着したレイブを、最初に出迎えたのはアルベルトだった。
団長自らお出迎えとは大したビップサービスだと思う。
そのまま彼に案内され、服の採寸をする部屋へ入る。
中には数着の騎士服上下が用意されており、それを着て一番サイズが合っていたものを選ぶ。
襟や袖はその後調整してもらえるそうで、採寸が終わって十数分で完成した。
白を基調としたデザインは、勇者時代の服装を思い出させる。
騎士らしい服装ではあるが若干落ち着かない気分だ。
最近まで魔王だった身としては、なんとなく白より黒の方が好き……というか安心する。
俺は着替えたまま、アルベルトが待つ団長室へ案内された。
「失礼します―――あれ?」
扉をノックし中へ入ると、アルベルト以外にもう一人の姿があった。
その人物は、皆良く知っている彼女。
「おはよう。レイブ君」
「フレンダ先輩?」
生徒会書記のフレンダだった。
彼女もレイブと同じように騎士服を着ている。
服装と状況からなんとなく察するレイブ。
「もしかして先輩も?」
「ええ、私も今日から騎士団に入ることになったわ」
フレンダは微笑みながら答える。
察したとおり彼女もレイブと同じ目的で訪れていた。
「君に伝えずにいてすまない。彼女が今言った通り、今日から彼女も入団する事になっている」
「そうみたいですね。彼女もって事は、同じ非正規団員何ですか?」
「形上はそうなるね? ただ彼女の場合、学園卒業後に正式な入団を希望してるから、多少君とは違うかな?」
「ああ、なるほど……」
レイブが視線をフレンダに向ける。
「おめでとうございます。先輩」
「ええ」
レイブが賛辞を送る。
フレンダの目標は騎士になる事。
亡き父親のように立派な騎士になろうとしている。
以前この話をした際の彼女は、父との差から劣等感を感じていた。
「最初は私なんかが―――って思ったんだけど、この間君に言われた事を思い出して決心したわ。私は私なりに最高の騎士を目指す。父とは違うかもしれないけど、多くの人を守り戦う立派な騎士に」
「そうですね。それがいいです」
どうやらあの時に感じていた劣等感は、多少解消されているようだ。
父とは違うという言葉に若干心残りを感じるが、それでも前を向いて歩き出している。
その事に俺は安心した。
「レイブ君、フレンダ君」
アルベルトが呼びかけ、二人が彼に視線を戻す。
「今日から二人とも騎士団の一員だ。国民を守る刃として活躍を期待するよ」
「「はい」」
良い返事だ。
アルベルトはそう感じている顔をする。
「それじゃさっそくで申し訳ないが、君達に受けてほしい任務がある。聞いてもらえるかな?」
「もうあるんですか?」
フレンダが言う。
「ああ、急ですまない」
「俺は構いませんよ。どんな任務なんですか?」
「これを見てくれ」
アルベルトが一枚の書類を提示する。
そこに記されていたのは、王都周辺の地図だった。
大きな赤い丸が書かれている。
「この地図に記されている地点には、周囲を砦で囲われた大規模な街がある。最近この街周辺での魔物出現数が上昇していてね? 駐屯している騎士だけでは対処しきれない数になっているんだよ」
「そんなに? それは異常ですね」
「ああ。現在原因の調査を行っているが、未だ掴めていない。調査をしている間も魔物は増え続けている。君達にはその増援に向かってほしい」
指定された期間は1週間。
その間に調査を続行し、原因の究明にあたる。
1週間のうちに対処できなかった場合、一旦増援に送った人員を帰還させ、再び大規模な部隊を編成。
魔者達の一斉掃討に移行するらしい。
「つまり俺達の役目は、1週間街を守りぬけって事ですか」
「そういう事になる」
任務内容は理解した。
しかし1週間とは長いな。
その間は俺達も街へ駐屯する必要がある。
今は講義数も減っているし、学園の授業的には問題無さそうだけど、さすがにリル達だけ残して行くのは忍びないな。
悩んでいる最中にレイブが気づく。
隣で同じ話を聞いていたフレンダが、静かにじっと地図を見つめている事に……
「先輩? どうしたんです?」
「えっ? なんでもないわ。ちょっと考え事をしていただけよ?」
「そうですか? ならいいですけど……」
フレンダの反応に違和感を感じつつも、レイブは自身の悩みを改善させる方を優先する事にした。
「アルベルトさん、一つ提案があるんですけど」
「提案?」
「はい。実は―――」
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