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魔王時代編
9.新魔法を作ろう
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俺とエレナは旅を続けていた。そして遂に、目的地である旧魔王城へ到着する。
「わかってたけど、ずいぶんボロボロだな」
「そうね」
俺は城を見上げながら感想を口にした。この城を見ていると懐かしさを感じる。勇者だった俺は、ここで初代魔王に最後の戦いに挑んだのだ。その影響で、城はすでに半壊してしまっていた。
ただ、残っている部屋もいくつか確認できる。住居として使えなくも無かったので、俺達は一旦ここを拠点とすることにした。
今でもエレナとの修業は続いている。メインの戦闘訓練で着々と成果を上げる中、新魔法の開発にも手をかけていく。エレナが俺に尋ねてきた。
「どんな魔法を作りたい?」
「どんな……か」
俺は魔王城に残された古い本を眺めながら考えていた。
この頃の魔法には、七〇〇年後の未来ほど種類が無かった。加えて単調なものが多く、決して多彩とはいえない。断じて技術的に遅れているわけではなかったが、発展もしていなかった。いや、正確には発展する必要が無かったというべきだろう。
勇者により形勢が逆転する以前は、魔族が数で圧倒的に有利な状況にあった。さらに魔族の方が魔法適正が高く、保有する魔力量も多かった。複雑な魔法を考えるより、高威力の魔法を使えたほうが簡単に勝つことができたのだ。
「具体的にはまださっぱりだけど、種類を増やしたいとは思ってる」
「種類を?」
「ああ、戦う手札は多いほうがいいと思って」
「そういうことね」
種類を増やせば戦略の幅が広がる。魔王として圧倒的な強さを手に入れるため、どんな状況にも対抗できる手段を持つことは大切だと感じた。
さっそく新魔法作りへ取り掛かる。作り方は非常に難しく、単純な術式でも一から作ろうと思えば三日はかかる。まず作りたい魔法をイメージする。次にそれを文章に起こす。必要な魔力量、威力、範囲、性質……様々な情報を記していく。最後に術式として魔法陣に書き換え、実態に使って成功すれば完成である。
そうして俺が最初に作った魔法が、【雷魔法:天雷】である。単純な魔法だが、初めてで完成に一週間かかってしまった。作った直後に、近くの岩山へ試し撃ちをすることにした。
「ふぅ……【雷魔法:天雷】!」
雷雲が漂う空から、一筋の雷撃が降り注ぐ。雷は一撃で岩山を吹き飛ばした。その瞬間、全身が身震いするほど感動した。この時の感動を、俺はこの先忘れないだろう。俺はすっかり魔法作りにはまり、気が付けば五〇種類を越える魔法を生み出していた。
「わかってたけど、ずいぶんボロボロだな」
「そうね」
俺は城を見上げながら感想を口にした。この城を見ていると懐かしさを感じる。勇者だった俺は、ここで初代魔王に最後の戦いに挑んだのだ。その影響で、城はすでに半壊してしまっていた。
ただ、残っている部屋もいくつか確認できる。住居として使えなくも無かったので、俺達は一旦ここを拠点とすることにした。
今でもエレナとの修業は続いている。メインの戦闘訓練で着々と成果を上げる中、新魔法の開発にも手をかけていく。エレナが俺に尋ねてきた。
「どんな魔法を作りたい?」
「どんな……か」
俺は魔王城に残された古い本を眺めながら考えていた。
この頃の魔法には、七〇〇年後の未来ほど種類が無かった。加えて単調なものが多く、決して多彩とはいえない。断じて技術的に遅れているわけではなかったが、発展もしていなかった。いや、正確には発展する必要が無かったというべきだろう。
勇者により形勢が逆転する以前は、魔族が数で圧倒的に有利な状況にあった。さらに魔族の方が魔法適正が高く、保有する魔力量も多かった。複雑な魔法を考えるより、高威力の魔法を使えたほうが簡単に勝つことができたのだ。
「具体的にはまださっぱりだけど、種類を増やしたいとは思ってる」
「種類を?」
「ああ、戦う手札は多いほうがいいと思って」
「そういうことね」
種類を増やせば戦略の幅が広がる。魔王として圧倒的な強さを手に入れるため、どんな状況にも対抗できる手段を持つことは大切だと感じた。
さっそく新魔法作りへ取り掛かる。作り方は非常に難しく、単純な術式でも一から作ろうと思えば三日はかかる。まず作りたい魔法をイメージする。次にそれを文章に起こす。必要な魔力量、威力、範囲、性質……様々な情報を記していく。最後に術式として魔法陣に書き換え、実態に使って成功すれば完成である。
そうして俺が最初に作った魔法が、【雷魔法:天雷】である。単純な魔法だが、初めてで完成に一週間かかってしまった。作った直後に、近くの岩山へ試し撃ちをすることにした。
「ふぅ……【雷魔法:天雷】!」
雷雲が漂う空から、一筋の雷撃が降り注ぐ。雷は一撃で岩山を吹き飛ばした。その瞬間、全身が身震いするほど感動した。この時の感動を、俺はこの先忘れないだろう。俺はすっかり魔法作りにはまり、気が付けば五〇種類を越える魔法を生み出していた。
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