日記(読書感想含む)

青空太郎

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「狭小住宅」 新庄 耕 著 を読んで。

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ネットフリックス「地面師たち」の原作の著者新庄耕氏のデビュー作。

地面師たちシリーズ3冊も読んだが、これが一番面白く読めた。
本書p103にも出てくるように、現代版「蟹工船」。
ただ、そこから成長と葛藤の壁にぶつかる。

以下、印象に残った部分のコピぺ。
ーーーーーーー

課長は次の日からほとんど毎日のように同行するようになった。多くは言わなかったが、間違った言動があれば必ず指摘した。
駒沢通りは使うな、駒沢通りを平気で走る奴が売れたためしがない。路地でスピードを落とすな、慎重な運転は不安の表れだ、不安そうにしてる奴から買いた
いと思うか。検討してくださいなんて言うな、検討もしないし買いもしない、自信がないって言ってるようなもんだろ。売るんじゃない、買わせるんだ、客は自分が買いたいと思わない限り買わない――。
砂漠に水をこぼすように、言われたこと一つひとつが頭に染み入ってくる。今までバラバラに散らばっていた知識の断片が少しずつ繋がっていくようだった。

納得することが日に日に増えていくと、営業に対する姿勢も前のめりになっていくのが自分でもわかった。
覚えるべきことは意識して覚えるようにした。

(略)(成長後)


課長の言う通り、どれだけ時間を費やしても徒労に終わるだけだ、心底そう思えた。頭を下げて詫び、これ以上納得してもらえそうな物件は案内できないことを伝えた。
藤沢さんは、嘲るような笑いを浮かべた。しかし、その目だけは憤りに満ちていた。
「いいんだよ、後輩だと思ってこっちが期待しすぎた。悪い悪い、頭のお前には無理な話だった。一応、先輩だから忠告しといてやるけど、お前染まりすぎてるよ、驕りや欺瞞が顔に表れてる。金にたかって欲に塗れる人生もいいけど、もう少し考えた方がいいよ」
藤沢さんは夫人の手をとって、その場を去っていった。
ハンドルは何とか操れても、頭の中は乱れていた。途中途中、自分が今どこを走っているのかわからなくなる。
前方の信号が黄から、やがて赤に変わった。かろうじてブレーキを踏み、車を停めた。歩行者が交差し、視界を埋める。おりた瞼の裏を切れ切れの想念がかすめてゆく。
後続からクラクションが鳴る。ふと、次の案内に意識が向いた。この案件は、今日でクロージングする予定でいた。が、失敗すればおそらくは目標が未達になる。一刻も早く店舗に戻って準備をする必要があった。

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