2代目魔王と愉快な仲間たち

助兵衛

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19話 異世界、初めての街

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小難しい話は他所でやろうぜ!

そんなこんなでここは馬車!
ガトンゴトンガトンゴトン!
道が悪いのか車輪が悪いのか揺れまくる車内。

荷台に乗るは魔王、呪詛神紅禍獣命あかかものみことの縛り手、進藤和也。
気不味すそうに気色悪くも膝を擦り合わせていた。
愛想笑い決まってんね!

同乗するは和也の鎮め手兼妹、進藤愛歌。
これまた居心地が悪そうに視線をあっちへこっちへ。
笑顔引き攣ってんよ!

同じく同乗者、というより監視者として帝国十二勇士、アークライト・シーザー辺境伯。
気不味さの原因はこの人、顰めっ面で腕を組み、無言を貫いているもんだからピリピリしてしょうがない。
肩幅広いから隣の和也が窮屈そうだ!

そんでもって最後の同乗者、ってか輸送物品、ドラゴンの鋭く睨む者さん。
この度は人間形態。
七色に輝く鎖で簀巻きにされて無様でしょうがない。
あと羽と尻尾が馬車内の面積半分を占領してる、狭い。
そういえば今回のドタバタ大抵てめぇのせいだな!

「あ、あの席変わんないすか? お爺ちゃん肩幅広……俺壁に押し付けられてんよ。てかその鎧ゴツゴツしてて痛い脱いで? 」

「ならん」

「一応お客さんって扱いに決まったんでしょ~? 鎧脱ごうよー」

「脱がん」

「お、お兄様。シーザー様はかなり譲歩をして下さってるかと、大人しく致しましょう? ね? 飴ちゃんあげますから」

「扱いが小学生じゃん。ありがとう。お爺ちゃんもいる? 」

「いらん」

「1人だけ文字数縛ってんの?? 」

こんな感じで、安全線の砦からずーっとかれこれ3時間この調子。
和也が持ち前の馬鹿っぽい明るさで場を和まそうとしても、愛歌が可愛らしく機嫌を取ってもお爺ちゃんはこの有様である。

とはいえ、アークライトとて人間、空気を和らげようと尽力するのを感じ、これではいかんと雰囲気を緩めようとすれば。

「ふん老いぼれめ石のように硬い頭を解すためにでもその飴とやらを食うがよい程よく柔らかい方が食いでがあるというものだ」

「貴様……未だ状況が呑み込めておらんと見える」

「ま、まーまー! お爺ちゃんほら! この子の口の悪さは今に始まったもんじゃないじゃーん! 」

「赤子のようにあやされて無様だな十二勇士勇者の腰巾着めプラプラぶら下がってろプラプラとなあ魔王」

白い火の粉がチラチラと舞う。

「お爺ちゃーん! 馬車、てかみんな燃えるよ! 」

鋭く睨む者が挑発し、アークライトもらしくなく熱くなってしまうものだから収拾が付かない。

終戦から40年。

人類が虐げられてきた歴史から考えればさらに、何千年分深い。
そこから生じる怨恨は、和也の想像よりずっと深い。

和也は内に死を司る神を宿している。

が、その神が暴れた時和也はまだ産まれておらず、記録でしか当時を知りえない。

この紅禍獣命あかかものみことは死、という物についての理解を与えてくれるが、それもまた記録を閲覧していると変わらない。

進藤和也は所詮、平和ボケした一般人だ。
精神は年齢と比べ幼く、経験は浅く、ある程度思慮こそ持ち合わせているが気が使える程度。

何千年も殺し殺され、奪い奪われをしてきたこの世界の魔物と人類の関係性を正確には把握し切れずにいた。

馬鹿だし。

「その、帝都? へはどのくらいで着くのお爺ちゃん」

「……今日の正午には大きな街に着く。転移魔法陣を使えばもう目と鼻の先だ。夕方には、帝都に入れるだろう」

ゴブリンやらオーク、果てはドラゴンの首魁を務める和也、今更ファンタジーな新用語が出てきた所で驚きを表に出すことは無い。

「ふ、ふーん? 転移? 魔法陣? へーファンタジーじゃん」

手が気持ち悪い暗いワキワキして頬がにやけているが、本人は出していないつもり。

「お兄様、それにしてもそのTシャツとジャージで行くのですか? その、鋭く睨む者さんに至ってはジャージの上だけですし……しかもボロボロですし」

「あー、やっぱりダメだよねえ。お爺ちゃん正装じゃないと不味い場所かなあ」

遡ること数日前、和也が起こしてしまったフィーバーの収拾がようやく付いてきた辺りで、和也らは帝都へと客人として招かれた。

理由は簡単、アークライトとしても帝国としても和也の思惑をしっかり掌握しておきたかったから。
愛歌は何かあった時のセーフティ、鋭く睨む者はそもそもこの騒動の落し所である契約を行うために。

砦にあった契約を行うための道具は鋭く睨む者のマナに触れた時点で粉々に砕け散ってしまった。
渾身のドヤ顔をする彼女を引っぱ叩いて簀巻きにして、もっと強力な道具のある帝都へ連れて行くという事で今に至る。

しかし、帝都、帝都である。
帝国の帝都なのだから、きっと首都に違いない。

当然な事なのだが和也が言うと馬鹿っぽい、なんでやろうね。

「過去、不潔な身なりで城を歩いた者がその場で切り捨てられた事がある」

「げーっ! 蛮族なんか繊細なんか訳分かんないな」.

よく物語の主人公が王様に失礼かまし、大物っぷりをアピールするシーンがあるがそんな度胸、和也には無かった。
和也の脳裏には切り捨て御免! なんぞ言われながらアークライトお爺ちゃんに殴り殺されるイメージがありありと浮かぶ。

「騒ぐな、安心しろ。その次の街で、お前たちの服を揃える。ドラゴンは、そのままでよかろうがお前はな……そこの妹、アイカに聞く所によるとそれは部屋着らしいではないか」

「一張羅だぞふんすふんす」

「……運動着としても使えるやい」

「部屋着として使っているなら部屋着であろう。見事な技術による衣服だが、楽な装いである事は分かる。故に、着替えてもらう」

両手をモミモミスリスリ。

「お代は? 」

「……私が払ってやる」

「お爺ちゃあん! 」

抱き着こうと両手を広げた和也を、指一本で抑えて壁にめり込ませるアークライト。

「お爺ちゃんと呼ぶな、私には別にしっかりと孫娘がいる」

「えー」

「きっとお前の悪い所をこれでもかと引き継いだ偏屈なガキンチョなのだろうそうに決まっている魔王もきっとそう思ってるに違いないぞどうせ貰い手もなく婆になるまで独り身な孫娘だろう」

「黙って? 」

鋭く睨む者に猿轡を嵌める。

「むごごむふぁふぁお! 」

「うわぁこれは……これでエッチだぞ」

馬車全焼、あるいは消滅の危機を救う事十数回。
未だに鎧から白い炎が漏れ出ているアークライトをビクビク宥めながら、馬車が止まるのを感じた。
御者が誰かと言葉を交わしているのが聞こえる。

「着いた、ここが安全線に最も近い都市、マリーナだ」

和也は尻を叩く衝撃が数十分前からかなり収まっているのを思い出し、舗装技術で文明レベルを推察しようとするも諦めた。
馬鹿なので。

「お兄様お兄様、みんなが見てますよ」

窓、ってか光入れ用の格子の嵌まった穴に額を押し当てながら愛歌が和也の膝を叩く。

「どれどれ? うお、本当だ、有名人になった気分だな」

穴から覗くと何十もの目と目が合う。
ヒソヒソと耳打ちし合っている者もいれば、手を振っている者もいる。
概ね、好感情らしい。

「これ軍の馬車でしょ? 人気あるんだね」

「民意は極力反映するようにしている」

まるで英雄、スターになった気分だ。
実情はそのスターに連行される敵のボスとその部下なんだけども。

「知り合いの服屋の前に下す、私は先に都市長と話を付けておく。良いか、店で待っているのだぞ、決して馬鹿な真似はするな、部下を見張りに付けるからな、絶対に馬鹿な事はするんじゃないぞ。無理か、いや部下を行かせる、私が見張ろう」

「信用ねえな! 」

何十人も殺してから生き返らせたのだから、信用どころの問題では無い。
愛歌は思ったが、言わずに置いた。
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