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57話 緑の刃
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ヴィセア帝国皇女、ルーリエ・ヴィセアは恵まれた才を生まれ持った。
帝国十二勇士たる祖母から受け継がれた優れた魔力精製能力、恵まれた教育環境により教えこまれた魔法の技術。
フィジカルの面においても、最低限の鍛錬しか行っていないにも関わらず身体能力は標準的な帝国兵士に匹敵する。
しかし、彼女の自己肯定の低さは祖父たる皇帝も頭を悩ませる程であった。
私なんて、は彼女の口癖である。
何故それまでに卑屈に育ったのか。
答えは簡単で、周りに恵まれ過ぎた。
人類最強、アークライトとロリエル。
普通の人間は、彼らと自分を比べたりはしない。
雲の上の存在、なにせ人類最強だ。
ルーリエは彼らと自分を見比べて、己の至らなさに絶望してしまった。
そうして、彼女は下を向く事に慣れてしまう。
「ルーリエ! 君なら出来る! 」
そもそも、彼らの力量を真に理解し自分と比べれると言うのが、彼女の非凡さを証明すると言うのに。
「くそ! 流石にあからさま過ぎたな! いっぱい来るぞ! 」
エルヴィンが選んだ戦法は、ルーリエが魔法を行使するまでの時間を全力で稼ぐと言うものだった。
「エルヴィン! 後ろもちゃんと見て! 」
「無茶言うなよ! 」
見え透いた作戦だ。
事実、思惑を完全に見抜いた緑の刃はルーリエを集中的に狙い始める。
和也らも全力でそれを迎撃するが、どうしたって場数が違う。
徐々に追い詰められていった。
「宙に満ちる……ッ! 」
詠唱を行おうとしたルーリエの頬に、鮮血が飛び散って付着した。
彼女を守ろうと飛び出したエルヴィンの物だ、彼は槍を振るってゴブリンを遠ざける。
「え、エルヴィン様」
「詠唱に集中して欲しいっす! こちらは心配しないで! 」
無茶を言う、集中なんて出来るはずがないのに。
想い人が自分を守る為に傷付くのを、彼女はまだ必要と割り切れない。
だが、しなければならない。
彼女の魔法のみが状況を打開しうる唯一の手段であり、そして何より……
エルヴィンとドロシーが此処に居るのは、ルーリエの我儘が原因だから。
「ルーリエ! 何の為に此処に来たすか! 俺らに言ってくれた言葉はウソだったんすか! 」
「う……」
和也は、と言うか殆どメンバーはルーリエがエルヴィンに同行する為に一向に加わったと思っている。
皇帝すら、彼女は自らの意思では無くエルヴィンの意思で出発したと思っていた。
だが、実際は違う。
ルーリエは自ら和也の一行に加わる事を決意した。
この無謀な大義無き喧嘩に、彼女は自ら名乗りを挙げたのだ。
帝国十二勇士であるとか、皇女であるとか、そう言った義務感からの理由もあるには……ある。
しかし、それらは余りに純だ。
和也の喧嘩に相乗りするなんて、そんな正統な理由では到底思い付かない。
「……宙に満ちる無よ」
ルーリエの原動力は憧れだった。
「……約定の祈り手が、謹んでお願い申し上げます」
羨ましい、素晴らしい、誇らしい。
ああなりたい。
「ギッ!ギィアー! 」
地下空洞に満ちるマナが、全てルーリエに吸収されていく。
彼女の類稀なる魔力精製能力により、それらは片端から魔力に変換され、杖へ充填される。
震える大気のマナに、ゴブリンは警戒の声を挙げた。
攻撃は更に激化し、指揮を取っていた緑の刃も自ら和也らに切り込んでいく。
侵入や偵察、工作を得意とするゴブリンは基本、直接の戦闘は不得意な傾向にある。
だが、緑の刃についてはその苦手な筈の正面戦闘についても十二分に熟達にしていた。
「……!? 」
和也の瞳に映る鮮やかなグリーン。
閃光が瞬き、気付けば裂けた額から血が零れ出ていた。
血に霞む視界。
微かに老いたゴブリンが傍を通り過ぎて行くのが見える。
「あああくそ! 抜かれた! 」
「任せて」
追い縋ろうとした和也に、背後から三匹のゴブリンが襲いかかる。
辛うじて身は守るも、緑の刃を取り逃してしまった。
ドロシーが鋭くフォローに回る。
「ギィ」
「うそ、なんでナイフで」
ドロシーの愛用する槍は帝国に広く普及する物で、何よりも間合いの広さと扱い易さを重視している。
長きに渡る戦いの歴史で洗練された槍は、魔物人間問わず数多くの血を吸って来た。
当然、ナイフ一本で捌ける物では無い。
しかし、緑の刃は無茶を可能にする。
ただ、圧倒的な技量によって槍は弾かれた。
なんの変哲も無い、ただ鮮やかな緑の刃が全ての障害を通り抜け……
とうとう、魔法を行使する為に詠唱するルーリエの元に辿り着いた。
「……どうか、私の求る奇跡をお与え下さい」
目の前に刃を向けられても、ルーリエは眉一つ動かさずに詠唱を続ける。
緑の刃は感嘆の息を少しだけ漏らし、刃を振り上げる。
容赦無く、下方より頸動脈を狙い澄ました刃。
ルーリエは寸前、微かに首を動かして刃を肩で受け止めた。
「ギッ」
即死では無い、と言うだけだ。
抉るように抜き取られた傷跡から、夥しい量の血が溢れ出る。
「……何よりも早く、貫き、押し通る。眩き光、有り得ざる奇跡を」
ルーリエは和也が羨ましい。
彼の生い立ち、この世界に来てからの顛末、全てを聞き、同情した。
生まれた時から望まざる力を与えられ、縛られ。
異世界に連れ込まれ、何の因果も無い争いに巻き込まれ。
そして全てを失った。
そんな彼が、自らの意思と力で突き進む。
こうなりたい。
嫉妬とも表現出来る、負の感情を彼に抱いた。
「ルーリエ! 」
だから勝手に着いて来た。
帰れと言われても帰らない。
燃えるような痛み、愛する人が傷付く恐怖。
前言を撤回し、全て投げ出して逃げたくなる衝動を、ただ意地だけで耐えて。
「魔導三十六条光」
君の我儘に付き合わせて欲しい、と言ってくれた愛する人の為に。
「ギィ……ミゴト」
杖に装填された魔力が爆ぜた。
眩い閃光共に、三十六条の光線が射出される。
まず緑の刃を貫き、その後に分散した光線はゴブリンの部隊を貫かんと殺到した。
逃げるゴブリン、隠れるゴブリン、立ち向かうゴブリン。
光線は分け隔てなく全てのゴブリンを追尾して貫いていく。
勝敗は決した。
和也らの勝利条件はルーリエの魔法発動まで時間を稼ぐ事。
彼らは完璧にその任務をやり遂げたのだ。
そして……数十秒経ち、最後の光線が最後のゴブリンを貫いて戦闘は完全に決着する。
「爺や」
魔導三十六条光。
ルーリエの扱える魔法の中で最も破壊力に優れたこの光線は、小さな身体を持つゴブリン相手に充分過ぎるダメージを与えていた。
この魔法の真髄は細やかなコントロールにある。
必中の速度、防御不可の破壊力を持ちながら、この光線はゴブリンをたったの一匹も殺してはいない。
徹底的に、完膚無く、ボコボコにされたものの、生きている。
「満足か? 」
間近で光線を受けた緑の刃は、苦しそうに咳き込んでナイフを握る
しかし、鮮やかな緑の刀身は半ばから砕け散っていた。
「爺や、俺を拾ってくれてありがとう」
「ギ……」
満足そうな笑みを浮かべ、緑の刃が目を閉じる。
他のゴブリンも同じだ、何処か安らかな顔で、皆眠りに落ちる。
「……最期に俺って分かったりとか。無いよね、そんな都合の良い事無い、よね」
「カズヤ様、彼らは……」
寂しそうな顔をする和也を見ていられずに声をかけそうになったルーリエだったが、大きな揺れで尻餅を付いた。
血が足りず、上手く立ち上がれない。
「ルーリエ! 手当をするっすから、じっと……この揺れは」
「上でもどんぱちやってるね。皇女殿下の手当が終わったら、直ぐに上に向かおう」
帝国十二勇士たる祖母から受け継がれた優れた魔力精製能力、恵まれた教育環境により教えこまれた魔法の技術。
フィジカルの面においても、最低限の鍛錬しか行っていないにも関わらず身体能力は標準的な帝国兵士に匹敵する。
しかし、彼女の自己肯定の低さは祖父たる皇帝も頭を悩ませる程であった。
私なんて、は彼女の口癖である。
何故それまでに卑屈に育ったのか。
答えは簡単で、周りに恵まれ過ぎた。
人類最強、アークライトとロリエル。
普通の人間は、彼らと自分を比べたりはしない。
雲の上の存在、なにせ人類最強だ。
ルーリエは彼らと自分を見比べて、己の至らなさに絶望してしまった。
そうして、彼女は下を向く事に慣れてしまう。
「ルーリエ! 君なら出来る! 」
そもそも、彼らの力量を真に理解し自分と比べれると言うのが、彼女の非凡さを証明すると言うのに。
「くそ! 流石にあからさま過ぎたな! いっぱい来るぞ! 」
エルヴィンが選んだ戦法は、ルーリエが魔法を行使するまでの時間を全力で稼ぐと言うものだった。
「エルヴィン! 後ろもちゃんと見て! 」
「無茶言うなよ! 」
見え透いた作戦だ。
事実、思惑を完全に見抜いた緑の刃はルーリエを集中的に狙い始める。
和也らも全力でそれを迎撃するが、どうしたって場数が違う。
徐々に追い詰められていった。
「宙に満ちる……ッ! 」
詠唱を行おうとしたルーリエの頬に、鮮血が飛び散って付着した。
彼女を守ろうと飛び出したエルヴィンの物だ、彼は槍を振るってゴブリンを遠ざける。
「え、エルヴィン様」
「詠唱に集中して欲しいっす! こちらは心配しないで! 」
無茶を言う、集中なんて出来るはずがないのに。
想い人が自分を守る為に傷付くのを、彼女はまだ必要と割り切れない。
だが、しなければならない。
彼女の魔法のみが状況を打開しうる唯一の手段であり、そして何より……
エルヴィンとドロシーが此処に居るのは、ルーリエの我儘が原因だから。
「ルーリエ! 何の為に此処に来たすか! 俺らに言ってくれた言葉はウソだったんすか! 」
「う……」
和也は、と言うか殆どメンバーはルーリエがエルヴィンに同行する為に一向に加わったと思っている。
皇帝すら、彼女は自らの意思では無くエルヴィンの意思で出発したと思っていた。
だが、実際は違う。
ルーリエは自ら和也の一行に加わる事を決意した。
この無謀な大義無き喧嘩に、彼女は自ら名乗りを挙げたのだ。
帝国十二勇士であるとか、皇女であるとか、そう言った義務感からの理由もあるには……ある。
しかし、それらは余りに純だ。
和也の喧嘩に相乗りするなんて、そんな正統な理由では到底思い付かない。
「……宙に満ちる無よ」
ルーリエの原動力は憧れだった。
「……約定の祈り手が、謹んでお願い申し上げます」
羨ましい、素晴らしい、誇らしい。
ああなりたい。
「ギッ!ギィアー! 」
地下空洞に満ちるマナが、全てルーリエに吸収されていく。
彼女の類稀なる魔力精製能力により、それらは片端から魔力に変換され、杖へ充填される。
震える大気のマナに、ゴブリンは警戒の声を挙げた。
攻撃は更に激化し、指揮を取っていた緑の刃も自ら和也らに切り込んでいく。
侵入や偵察、工作を得意とするゴブリンは基本、直接の戦闘は不得意な傾向にある。
だが、緑の刃についてはその苦手な筈の正面戦闘についても十二分に熟達にしていた。
「……!? 」
和也の瞳に映る鮮やかなグリーン。
閃光が瞬き、気付けば裂けた額から血が零れ出ていた。
血に霞む視界。
微かに老いたゴブリンが傍を通り過ぎて行くのが見える。
「あああくそ! 抜かれた! 」
「任せて」
追い縋ろうとした和也に、背後から三匹のゴブリンが襲いかかる。
辛うじて身は守るも、緑の刃を取り逃してしまった。
ドロシーが鋭くフォローに回る。
「ギィ」
「うそ、なんでナイフで」
ドロシーの愛用する槍は帝国に広く普及する物で、何よりも間合いの広さと扱い易さを重視している。
長きに渡る戦いの歴史で洗練された槍は、魔物人間問わず数多くの血を吸って来た。
当然、ナイフ一本で捌ける物では無い。
しかし、緑の刃は無茶を可能にする。
ただ、圧倒的な技量によって槍は弾かれた。
なんの変哲も無い、ただ鮮やかな緑の刃が全ての障害を通り抜け……
とうとう、魔法を行使する為に詠唱するルーリエの元に辿り着いた。
「……どうか、私の求る奇跡をお与え下さい」
目の前に刃を向けられても、ルーリエは眉一つ動かさずに詠唱を続ける。
緑の刃は感嘆の息を少しだけ漏らし、刃を振り上げる。
容赦無く、下方より頸動脈を狙い澄ました刃。
ルーリエは寸前、微かに首を動かして刃を肩で受け止めた。
「ギッ」
即死では無い、と言うだけだ。
抉るように抜き取られた傷跡から、夥しい量の血が溢れ出る。
「……何よりも早く、貫き、押し通る。眩き光、有り得ざる奇跡を」
ルーリエは和也が羨ましい。
彼の生い立ち、この世界に来てからの顛末、全てを聞き、同情した。
生まれた時から望まざる力を与えられ、縛られ。
異世界に連れ込まれ、何の因果も無い争いに巻き込まれ。
そして全てを失った。
そんな彼が、自らの意思と力で突き進む。
こうなりたい。
嫉妬とも表現出来る、負の感情を彼に抱いた。
「ルーリエ! 」
だから勝手に着いて来た。
帰れと言われても帰らない。
燃えるような痛み、愛する人が傷付く恐怖。
前言を撤回し、全て投げ出して逃げたくなる衝動を、ただ意地だけで耐えて。
「魔導三十六条光」
君の我儘に付き合わせて欲しい、と言ってくれた愛する人の為に。
「ギィ……ミゴト」
杖に装填された魔力が爆ぜた。
眩い閃光共に、三十六条の光線が射出される。
まず緑の刃を貫き、その後に分散した光線はゴブリンの部隊を貫かんと殺到した。
逃げるゴブリン、隠れるゴブリン、立ち向かうゴブリン。
光線は分け隔てなく全てのゴブリンを追尾して貫いていく。
勝敗は決した。
和也らの勝利条件はルーリエの魔法発動まで時間を稼ぐ事。
彼らは完璧にその任務をやり遂げたのだ。
そして……数十秒経ち、最後の光線が最後のゴブリンを貫いて戦闘は完全に決着する。
「爺や」
魔導三十六条光。
ルーリエの扱える魔法の中で最も破壊力に優れたこの光線は、小さな身体を持つゴブリン相手に充分過ぎるダメージを与えていた。
この魔法の真髄は細やかなコントロールにある。
必中の速度、防御不可の破壊力を持ちながら、この光線はゴブリンをたったの一匹も殺してはいない。
徹底的に、完膚無く、ボコボコにされたものの、生きている。
「満足か? 」
間近で光線を受けた緑の刃は、苦しそうに咳き込んでナイフを握る
しかし、鮮やかな緑の刀身は半ばから砕け散っていた。
「爺や、俺を拾ってくれてありがとう」
「ギ……」
満足そうな笑みを浮かべ、緑の刃が目を閉じる。
他のゴブリンも同じだ、何処か安らかな顔で、皆眠りに落ちる。
「……最期に俺って分かったりとか。無いよね、そんな都合の良い事無い、よね」
「カズヤ様、彼らは……」
寂しそうな顔をする和也を見ていられずに声をかけそうになったルーリエだったが、大きな揺れで尻餅を付いた。
血が足りず、上手く立ち上がれない。
「ルーリエ! 手当をするっすから、じっと……この揺れは」
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