2代目魔王と愉快な仲間たち

助兵衛

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71話 異世界転移チートで無双なやつ

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人類圏大陸を東西に区分する安全線。
魔物の侵攻を食い止め監視する為の堅牢な要塞が幾つも存在する、人類の最重要拠点。

数ある要塞のうちの1つ。
赤龍山と呼ばれる邪龍の住まうエリアを監視する要塞の直ぐ西。

風変わりな少女が道を塞ぐ様に座り込んでいた。

進藤愛歌、異世界より来たり勇者の後継として十二宝具に見出された二代目魔王の妹である。

「アイカ……冗談では済まされんぞ」

愛歌は帝国より貸与された7つの宝具に身を固め、辺境伯アークライト・シーザーの鋭い視線を真正面から受け止めた。

アークライトの後ろには完全武装の帝国兵士が数千人、更に勇者教の精鋭も含め、人類における最大戦力がここ、安全線に集結していた。
彼らと、彼らを指揮するアークライトの鋭い視線を受けても愛歌は表情1つ変えずに、先程言った言葉を繰り返す。

「お帰りください」

「……カズヤは魔王を殺せたのか」

「お兄様は魔王様と共に、魔物の国を作るべく各地を奔走しております。帝国や人類の方々には決してご迷惑はおかけしません」

「それが通ると? 」

「通すんですよ」

愛歌は聖剣を抜き放つ。

数十年使い手が現れなかった勇者の象徴、理由はともかく、威厳すら感じさせる刃の輝きに帝国兵士は息を飲んだ。

「魔王は殺す。カズヤがケリをつけたいと言うから協力したが、魔王と手を組むとは思いもしなかった」

アークライトは表情を厳しくして距離を詰める。

「無理ですよ。魔王様はアークライト様でも太刀打ち出来ません、今はお兄様も朱厄獣命の力を取り戻しまた。そして、私を倒してここを通る事も出来ません」

空気が張り詰める。
号令を待つ兵士らの静かな闘志が息遣いと共に感じられる様だった。

しかし、それも愛歌には関係ない。

「そういえば、お兄様からアークライト様へ、そして帝国の皆様へ伝言があります」

「……」

アークライトにはもう、敵と判定した以上言葉を交わす気の無い。

「ここからは趣旨を変える。オレツエーで行くそうです、これは私達の世界の専門用語みたいなもので……」

聖剣を、炎を吹き出させ始めたアークライトに突き付けた。
装備した7つの宝具全てを起動し、臨戦態勢に入る。

「滅茶苦茶強いお兄様や魔王、そして私で好き勝手やるって意味です」

「総員戦闘開始! 陣形を組め! 」

「かかって来なさい、ぶっ飛ばしてやる」





さて、安全線で愛しの妹が愛歌無双をしている最中。
進藤和也もまた、ひとつの戦場に赴いていた。

とはいえ、殴る蹴るで解決出来ることは大抵してしまった末の、比較的平和的な話し合いと言う名の戦場である。

「緊張するな……」

「大丈夫だぞカズヤ何も心配する事はない私がついているからなでも無理をする事はないんだぞ落ち着いてからだって遅くはないんだ」

珍しく、服装を正した和也が緊張した面持ちで立っていた。
心配そうに見上げる月を見る者を撫でる。

「いや大丈夫。いつかは行かないといけなかった……避けては通れない道だ」

和也と月を見る者が見据えるは天高く聳え立つ山脈。
大陸において最大にして最高度を誇るこの山脈は竜皇山脈と恐れられ、その名の通り……竜の王が住まうとされていた。

「あいつは話が分かるやつだがちょっと頑固だでもきっと根気よく話せば分かってくれるんだ100年くらい」

「ドラゴン基準で言わないで」

魔物を説得(物理)していく上で、決して無視する事が出来ない超常の存在、それがここに住まう竜皇だ。
効率を求めて別行動となった魔王は、同じくらい格の高い魔物の説得に向かっている。
口下手な魔王の事だ、今頃交渉が決裂してボコボコにしている事だろう。

「よし……いくか」

「がんばるぞカズヤ」



「娘さんを……俺に下さい! 」

「あげてやってくれ! 」

えぇ……

と、言う顔で竜皇。
とてつもなく巨大な、山脈の一部も見間違うような巨体のドラゴン。

月を見る者とはまた違う、白く発光する鱗はこの世の物とは思えない程に美しく、神々しい。
何十もある羽を折り畳み、丁寧に頭を近付けてくれても尚、和也からすればあまりに巨大な彼に。

「絶対幸せにします! 娘さんを下さい! 」

「あげてやってくれ! 」

和也は恋人のお義父さんに懇願するかの如く頭を下げていた。

ちょっと待てぃ、ドラゴンには親も子も、生殖活動という概念すら存在しないんじゃないか?
そう、存在していないのである。

つまりはこの竜皇、月を見る者の父親という訳では無い。
ちなみに、父親代わりという事でも無い。

竜皇とは魔物の頂点、魔王誕生以前から存在する超越者であり最長老の竜。
全てのドラゴンの転生に関わっていると言われており、ドラゴンの父祖とも言えるのだ……とか、魔王が言うもんだから。

この有様だ。

「お願いします! 幸せな家庭を築いてみせます! 」

「築かせてやってくれ! 」

「待て……異世界の者、そして我が眷属よ。全く話が見えない」

そりゃそうだ、見える訳が無い。

強大で異質な力を感じ取り警戒しつつ待ち構えていたら、いきなり娘をくれとか抜かすのだ。
ちなみに初対面だ、和也とも月を見る者とも。

「実は今、魔物達の国を作ろうとしていまして。その上で竜皇さんにも話を通しとかなきゃなって……あ! 別に、誰かに迷惑かけたりしなきゃ従えとか言わないんで! 」

強大にして異質な者。
進藤和也の言う内容は概ね、ここに彼が来るまでに知っていた事だ。

勝手にすればいい、それが竜皇の考えである。
好きにしろと追い返したら良いのだが、彼の言葉の一部が気にかかった。

「もし私が人や、君達の作る国を害すると言えばどうする? 」

「え! ぶっ飛ばしますけど……」

むん! と和也は力こぶを作る。
大したことは無い。

「うちの国の方針が、誰かの嫌がる事をしちゃいけません、なんですよ」

「私がそれをすれば、討ち滅ぼすと言うのか」

「まさか! 殺すとかそんな物騒な話じゃないですよ。教えるんです、協調とか共感の大事さとか……道徳」

竜皇が笑う。
峰々が怯えるように震え、呼応する様に近くで何度も雷が落ちた。

「バカを言うな異世界の者! 私を教育すると! 私だけでない、他の魔物を躾けると!? 身の程を知れ! 」

「バカて言う方がバカなんですよ! 俺はやりますよ」

竜皇は和也を見下した眼で睨み、威嚇を兼ねて翼を広げる。
正面から見据える和也は、宗教画の様な神々しさと、力強さをその身にヒシヒシと感じた。

「今まで、何度かそういう者が現れた。しかし、未だに魔物は欲望の獣である。100年後、お前は多くの者に笑われているであろうな」

今まで数多くの聖人、賢者、超人が生まれ、和也と似たような事を宣った。
そして、反発した魔物に殺されていった。

どうせ、この者もそうなるのだ。

しかし、和也は不遜な態度を崩さない。

「でもその人たちって俺より弱かったんですよね、別にお行儀良く教え諭そうなんて思っちゃいないです。しばき回して、叱ります」

「あくまで実力で無理矢理と言うことか……不遜な。力により形成された不条理を、更に強大な力で正そうなど……」

「出来るからやるって言ってんですよ」

竜皇が立ち上がり、鬱陶しい暗雲を羽ばたいて吹き飛ばした。
徐々に戦闘態勢に入る父祖を見て、月を見る者もまた、真紅の竜となり万全の構えで和也の側に控える。

「ならば、まずは私を圧して見せよ! その不遜が過信では無いと示して見せよ! 」

馬鹿みたいに巨大な竜が、馬鹿みたいに吠えるもんで。
後半は人間の和也には聞き取れない音域となっていた。

ただ、必要な部分は聞き取れた、それで十分だ。

「上等だクソジジイ! ぶっ飛ばしてやるぜ! 」


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