ニャンだって~!猫人ハンターのハンター道

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プロローグ

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 切り立った崖、その下に倒れていた俺は思わず叫んだ。

「ニャンじゃこりゃー!」

 手についた大量の血、それに驚いたわけではなく、その手自体に驚いたのだ。

「に、肉球!に猫の手!」

 そう猫の手、ただその時は冷静ではなかったためその手が通常の猫の手より大きいことには気が付かなかった。

 俺はどうして猫の手に……は!そうか!これはフルダイブVRゲームだ!

「ニャンだ、ゲームしながら寝落ちしてたのかニャーは……ニャー」

 最初の「ニャンだ」のニャンはあえてわざとそう言ったけど、最後の「ニャーは」の部分は俺はと言っているつもりだった。

「ニャーはニャー……」

 そう俺は“俺”と言おうとすると“ニャー”と言ってしまうことに気が付いたのだ。

「そうか、これもゲームの設定だ!」

 そうだった、フルダイブVRゲーム『ハントイズライフ~ハンターの頂へ~』を俺はやり尽くしていたけど、ロールプレイング機能は使ったことがなかった。

「そうに違いない、ニャーは基本オフしてプレイしてたけど、きっとお酒を飲んだ勢いでキャラメイクして忘れてしまったやつのデータに違いない」

 ま、俺……お酒飲まないんですけどね!

「とりあえず、ここはマップのどの辺だ?」

 俺は咄嗟にマップを開こうと指を鳴らす。しかし、その猫の手では音はでない上にマップも出なかった。もちろん音が出ないからマップが出ないことはない。

「あれ?操作設定さえいじっているのかもしれないな~」

 俺が困惑しながらマップを開こうとしていると、崖上から聞きなれない声が響いてくる。

「……コ!……ン……コ!」

「ん?なんか声が聞こえる気がする……でもHILはオフラインでNPCもテキスト表示されるはず」

 モンスターの声は収録されているものの、人の声はオフライン環境故にスペックによってオンオフされる。俺はもちろん格安スペックだからオフされているのだが。

「……ン~コ!」

「間違いない!人の声だ!」

 俺は天を見上げて叫んだ。

「ここだ!ここにいるぞ!」

 すると崖上からこちらを覘き見る影が現れ、その次にはそれが予想外にも飛び降りた。

「嘘だろ!この高さをか!」

「ウ~ン~コ~!」

 ドンと着地した相手の見た目にまず驚く。

「ね、猫!」

 猫が二足歩行で服着てウンコって叫びながら飛び降りて来た……やだ何このホラー。

「ウンコ!探したぞ!」

「……え~と、そのウンコってのは?」

 もしかしていじめられっ子設定なのか!そんなロールプレイ俺は望んでいないんだが。

「何言っているだ?ウンコってのはお前の名前だろ?ニギニギ・ウンコ、それがお前だ」

 ニギニギしちゃった!ウンコニギニギしちゃった!

「……ニャーの名前がウンコ?ニギニギ・ウンコだって?」

「お前……自分の名前が分からないとか、ひょっとしてニャーのことも分からないのか?」

「……すまぬ」

「ニャーはタマタマ・タンゴだ!お前の親友だろうが!」

 あぶね!タマタマときたから危い単語が並ぶかと思ったぞ!オンラインゲームなら即バンだぞ!

 頭は混乱しているものの、もう一つ俺は違和感を覚えた。それはグラフィックが綺麗すぎる、猫のヒゲ、毛の一本一本があまりにも。

「それよりも!あいつはどうした?お前と一緒にタンツの奴がいただろ!」

 俺の記憶が無いことの方が大事だろ!それよりもって無理あるだろ!

「……いや、ニャーが気付いた時にはここには誰も」

「くそ!だったらベルガモガに食われたんだな……だったら巣だ!今から巣に向かうぞ!」

 ベルガモガ?巣?もう少し落ち着いて話をしたいんだがどうだ?タマキン。

 そんな心の声も猫には届かず、タマタマは俺に地面から何かを拾って手渡して言う。

「お前の武器だ!これからベルガモガを狩る!手伝ってくれウンコ!」

 手伝いたいのはやまやまだけど!状況とか!ウンコとか!色々どうにかならないのか!

 そうして俺は何もかもが理解できないまま、タマタマという猫に連れられベルガモガというやつを狩りに行くらしいんだが……まじ不安しかない。
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