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第18章
『秩序の庭』
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光の階段を上りきった先は、カイの想像を絶する世界だった。どこまでも続く、完璧に整備された庭園。寸分の狂いもなく刈り揃えられた芝生、幾何学模様を描くように植えられた木々。だが、そこには虫一匹、鳥の声一つしなかった。
「なんて、場所だ……。美しいのに、ぞっとするぜ」
ボルガンの言う通り、そこは生命の温かみが一切ない、無機質な「秩序の庭」だった。
「侵入者を、排除します」
感情のない声と共に、庭園の木々が形を変え、光り輝く鎧をまとった守護者たちへと姿を変えた。
「来たか!数が多いぞ!」
「ですが、動きが単調ですわ!」
ルーナの言う通り、守護者たちの動きは完璧なプログラムのように、正確無比だが予測しやすかった。カイの【真理の瞳】が、その行動パターンを完全に見抜いていた。
「ガロウは右翼から!ボルガンは中央を突破しろ!」
「おうよっ!」
「フン!」
カイの指示のもと、仲間たちが躍動する。ボルガンがその怪力で守護者の陣形を崩し、ガロウがその隙を突いて一刀のもとに斬り伏せる。ルーナの魔法が、的確に援護した。彼らの連携は、もはや芸術の域に達していた。
次々と守護者を打ち破り、庭園の最奥へとたどり着く。そこに、彼女は静かに佇んでいた。
「見事です、神に仇なす者たちよ」
純白の聖騎士、セラフィナ。その金色の瞳は、以前よりもさらに冷たく、そしてどこか悲しげに一行を見据えていた。
「ですが、あなたたちの無秩序な旅も、ここで終わりです」
「あんたこそ、まだそんなことを言ってるのか!」
カイは叫んだ。
「僕たちは知ったんだ!神がやろうとしていることの、本当の意味を!」
「ええ、知っています。それは、世界を崩壊から救うための、気高き御業」
「犠牲の上に成り立つ救済など、ただの独善だ!」
言葉は、通じない。ならば、力で示すしかなかった。
最後の戦いの火蓋が切られた。セラフィナの剣技は、以前にも増して洗練され、一行を圧倒する。
「くそっ、速えぇ!」
「私の魔法が、光の鎧に阻まれて……!」
仲間たちが次々と傷つき、倒れていく。カイは、必死に瞳を凝らした。彼女の完璧な剣技の中に、ほんのわずかな「揺らぎ」を見つけ出すために。
(なぜだ……?彼女の剣筋に、迷いがある……?)
カイの瞳が、ついにその核心を捉えた。彼女の感情に浮かぶ【絶対的正義】という文字の奥に、【疑念】という小さな亀裂が見えたのだ。
「セラフィナ!あんた、本当はわかってるんじゃないのか!」
カイは、彼女の心に直接語りかけるように叫んだ。
「神のやり方が、本当に正しいことなのかって!」
「黙りなさいっ!」
セラフィナの剣が、初めて感情的に振るわれた。その一瞬の隙を、仲間たちは見逃さない。
「今だ、小僧!」
「おおおおおっ!」
ボルガンとガロウが、最後の力を振り絞ってセラフィナの体勢を崩す。
「カイ!」
ルーナの声に、カイは応えた。
「あんただって、本当はこんなこと、望んでないはずだ!」
カイの言葉が、セラフィナの心の奥深くに突き刺さる。彼女の瞳が、大きく見開かれた。
「私は……私は……」
その動きが止まった一瞬を、ガロウの刃が捉えた。セラフィナの鎧が砕け、彼女は静かにその場に膝をついた。
兜が外れ、現れたその素顔は、あまりにも若く、そして悲しみに満ちていた。
「ありがとう……。あなたたちなら……」
彼女は、カイに向かって、か細く微笑んだ。
「あの、孤独な神に……違う未来を、見せてあげられるかもしれない……」
その言葉を最後に、彼女の体は光の粒子となって消えていった。残されたのは、神の座す玉座へと続く、巨大な扉だけだった。
「なんて、場所だ……。美しいのに、ぞっとするぜ」
ボルガンの言う通り、そこは生命の温かみが一切ない、無機質な「秩序の庭」だった。
「侵入者を、排除します」
感情のない声と共に、庭園の木々が形を変え、光り輝く鎧をまとった守護者たちへと姿を変えた。
「来たか!数が多いぞ!」
「ですが、動きが単調ですわ!」
ルーナの言う通り、守護者たちの動きは完璧なプログラムのように、正確無比だが予測しやすかった。カイの【真理の瞳】が、その行動パターンを完全に見抜いていた。
「ガロウは右翼から!ボルガンは中央を突破しろ!」
「おうよっ!」
「フン!」
カイの指示のもと、仲間たちが躍動する。ボルガンがその怪力で守護者の陣形を崩し、ガロウがその隙を突いて一刀のもとに斬り伏せる。ルーナの魔法が、的確に援護した。彼らの連携は、もはや芸術の域に達していた。
次々と守護者を打ち破り、庭園の最奥へとたどり着く。そこに、彼女は静かに佇んでいた。
「見事です、神に仇なす者たちよ」
純白の聖騎士、セラフィナ。その金色の瞳は、以前よりもさらに冷たく、そしてどこか悲しげに一行を見据えていた。
「ですが、あなたたちの無秩序な旅も、ここで終わりです」
「あんたこそ、まだそんなことを言ってるのか!」
カイは叫んだ。
「僕たちは知ったんだ!神がやろうとしていることの、本当の意味を!」
「ええ、知っています。それは、世界を崩壊から救うための、気高き御業」
「犠牲の上に成り立つ救済など、ただの独善だ!」
言葉は、通じない。ならば、力で示すしかなかった。
最後の戦いの火蓋が切られた。セラフィナの剣技は、以前にも増して洗練され、一行を圧倒する。
「くそっ、速えぇ!」
「私の魔法が、光の鎧に阻まれて……!」
仲間たちが次々と傷つき、倒れていく。カイは、必死に瞳を凝らした。彼女の完璧な剣技の中に、ほんのわずかな「揺らぎ」を見つけ出すために。
(なぜだ……?彼女の剣筋に、迷いがある……?)
カイの瞳が、ついにその核心を捉えた。彼女の感情に浮かぶ【絶対的正義】という文字の奥に、【疑念】という小さな亀裂が見えたのだ。
「セラフィナ!あんた、本当はわかってるんじゃないのか!」
カイは、彼女の心に直接語りかけるように叫んだ。
「神のやり方が、本当に正しいことなのかって!」
「黙りなさいっ!」
セラフィナの剣が、初めて感情的に振るわれた。その一瞬の隙を、仲間たちは見逃さない。
「今だ、小僧!」
「おおおおおっ!」
ボルガンとガロウが、最後の力を振り絞ってセラフィナの体勢を崩す。
「カイ!」
ルーナの声に、カイは応えた。
「あんただって、本当はこんなこと、望んでないはずだ!」
カイの言葉が、セラフィナの心の奥深くに突き刺さる。彼女の瞳が、大きく見開かれた。
「私は……私は……」
その動きが止まった一瞬を、ガロウの刃が捉えた。セラフィナの鎧が砕け、彼女は静かにその場に膝をついた。
兜が外れ、現れたその素顔は、あまりにも若く、そして悲しみに満ちていた。
「ありがとう……。あなたたちなら……」
彼女は、カイに向かって、か細く微笑んだ。
「あの、孤独な神に……違う未来を、見せてあげられるかもしれない……」
その言葉を最後に、彼女の体は光の粒子となって消えていった。残されたのは、神の座す玉座へと続く、巨大な扉だけだった。
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