偽りの神話を打ち砕く者 ~最弱種族の烙印を押された俺、唯一の真実を知るチート能力で世界を救います~

酸欠ペン工場

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第19章

『機械仕掛けの神』

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セラフィナが消えた扉の先は、もはや空間と呼べる場所ではなかった。上下も左右もなく、ただ純粋な光と、無数の情報が飛び交う、世界の根源。その中心に、「それ」はいた。
「……あれが、神……」
カイは、息をのむ。性別も、年齢も、個という概念さえ超えた、黄金の光でできた巨人。創造神デミウルゴスが、静かに一行を見下ろしていた。

《よくぞ、ここまでたどり着きました。我が愛しき、不確定要素(バグ)たちよ》
声ではなかった。思考に直接、流れ込んでくる、冷徹で、そしてどこか物悲しい響き。
「てめぇが、この世界の神か!」
ボルガンが吼える。
《いかにも。私は、この箱庭の管理者。そして、あなたたちの創造主です》
その言葉に、嘘も偽りもなかった。

《あなたたちは、世界の真実の一端を知ったようですね》
神は、淡々と語り始めた。この世界が、生命の進化によって増えすぎた「情報」に耐えきれず、自壊寸前であること。
《私は、この世界を愛している。だからこそ、リセットが必要なのです。これは破壊ではない。次なる世界のための、救済なのですよ》
「ふざけるな!それが、てめぇの歪んだ正義か!」
ガロウが、大剣を握りしめた。

「私たちの未来を、勝手に奪う権利など、あなたにはありませんわ!」
ルーナが、怒りに声を震わせる。
「そうだ!誰かの犠牲の上に成り立つ平和なんて、ただの独善だ!」
カイは、神をまっすぐに見据えて言い放った。
《愚かなことを。あなたたちの言う自由こそが、世界を滅ぼす混沌なのです》
神の瞳に、初めて憐れみの色が浮かんだ。

《対話は、ここまでです。これより、最終管理シークエンスに移行します》
神がそう宣言した瞬間、世界が軋む音がした。ボルガンの戦槌が、砂となって崩れ落ちる。ルーナの魔法が、形を成す前に霧散する。
「なっ……!?」
「ワシの槌が……!」
神は、この世界の法則そのもの。彼らにとって、それはあまりに絶望的な事実だった。

「くそっ!なら、この牙で!」
ガロウが、理を超えた速度で神に肉薄する。だが、その刃が届く寸前、彼の存在そのものが、まるで最初からそこにいなかったかのように、掻き消えた。
「ガロウ!?」
《無駄なことです。この世界では、全てが私の掌の上》
次の瞬間、ガロウは何事もなかったかのように、元の場所に出現していた。神は、ただ時を巻き戻したのだ。

「それでも……!」
「俺たちは!」
「諦めませんわ!」
仲間たちが、決死の覚悟で神に挑む。消されては戻され、攻撃しては無に還る。それは、勝利の可能性など欠片もない、あまりにも無力な抵抗だった。だが、彼らはカイのために、ほんの一瞬の隙を作ろうとしていた。

(だめだ……。このままでは、みんなが……!)
仲間たちの魂が、すり減っていくのがわかる。カイの心が、絶望に染まりかけた、その時だった。彼の【真理の瞳】が、世界のさらに奥深くにある、根源の理を捉えた。
(これは……運命の、流れ……?)
無数の光の糸が絡み合い、一本の太い流れとなって、「世界の滅び」という結末へと向かっているのが見えた。

(この糸を、断ち切れば……!未来は、変えられる……!)
それは、神ですら想定していなかった、禁忌の領域。カイの瞳が、金色に輝きを増す。
「これが、僕の最後の力……!」
《何をする気です……!?やめなさい!》
神が、初めて焦りの色を見せた。カイは、その声を聞いていない。彼は、仲間たちが作ってくれた、刹那の瞬間に全てを賭けた。

カイは、神に向かって手を伸ばしたのではない。その先にある、世界の運命そのものを掴むために、手を伸ばした。
「お前の決めた筋書き通りになんて、なるものか!」
【真理の瞳】最終能力――「運命干渉(フェイト・インターフェア)」。
神が定めた絶対の理に、最弱と言われた人族の少年が、今、その手をかけようとしていた。
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