偽りの神話を打ち砕く者 ~最弱種族の烙印を押された俺、唯一の真実を知るチート能力で世界を救います~

酸欠ペン工場

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第20章

『神なき世界の最初の日』

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カイの指先が、世界の理そのものである「運命の糸」に触れた。凄まじい反発と、魂が焼き切れるほどの激痛が彼を襲う。
《やめなさい!世界が、崩壊する!》
神の悲鳴のような声が、思考に直接響き渡った。
「違う!これは、新しい世界が生まれる音だ!」
カイは最後の力を振り絞り、その光り輝く糸を、強く、強く引きちぎった。

パツン、と。音ではない音が、世界の中心で響いた。絶対的な理を失い、黄金に輝いていた神の巨体に、無数の亀裂が走る。
《ああ……。これが、自由……。なんと、混沌で……美しい……》
神の声から、これまで感じられた冷徹な意志が消え、初めて聞く穏やかな響きが感じられた。
《あなたたちは、この先の茨の道を、自らの足で歩むのですね》
その言葉を最後に、神の体は無数の光の粒子となり、静寂の中に溶けていった。

神が消え、世界の根源に静けさが戻った。張り詰めていた空気が緩み、カイたちはその場に崩れ落ちる。
「終わった……のか……?」
ボルガンが、信じられないというように呟いた。
「ええ……。神は、もう……」
ルーナの瞳には、涙が浮かんでいる。長きにわたる、偽りの神の支配が終わったのだ。

気がつくと、彼らは天空の遺跡に戻っていた。傷だらけの体を引きずり、下界を見下ろす。そこには、もう神の軍勢の姿はなかった。
「カイ殿!」
「ルーナ様!」
地上から、黎明の同盟の仲間たちの声が聞こえる。彼らは、空に向かって、力の限り手を振っていた。戦いは、本当に終わったのだ。

だが、世界に真の平和が訪れたわけではなかった。絶対的な管理者を失った世界は、まるで羅針盤を失った船のように、ゆっくりと、しかし確実に軋み始めていた。各地で、力をつけた者たちが新たな支配者になろうと動き出し、小さな争いの火種が生まれ始めていた。
「ガハハ……。平和になったと思ったら、前より面倒なことになりそうじゃねえか」
ボルガンが、頭をかきながらぼやく。

「フン。だが、悪くない。俺たちの手で、俺たちの秩序を作れるということだ」
ガロウが、獰猛な笑みを浮かべた。
「ええ。これからは、誰かに押し付けられるのではない、私たち自身の未来ですわ」
ルーナの瞳にも、強い光が宿っている。
「そうだね。神を倒すのは、始まりにすぎなかったんだ」
カイは、仲間たちの顔を見渡した。

彼らの旅は、まだ終わらない。いや、ここからが本当の始まりなのだ。
「僕たちの手で、この世界を本当の意味で一つにする。それこそが、僕たちの本当の戦いだ」
「そうだな。やることは、まだまだ山積みだぜ!」
「うむ。退屈している暇はなさそうだ」
仲間たちの顔には、疲労の色はなく、未来を創る者としての覚悟が浮かんでいた。

カイは、空を見上げた。あの日と同じ、どこまでも青い空が広がっている。
「ありがとう、みんな。君たちがいてくれたから、僕はここまで来られた」
「何を今更。俺たちは、仲間だろう」
「そうだぜ!これからも、ずっとだ!」
「ええ、もちろん」
その言葉が、カイには何よりも嬉しかった。

彼らは、ゆっくりと遺跡を降り始めた。その先にあるのは、平穏な日常ではない。混沌と、困難に満ちた、いばらの道だ。
「さあ、行こうか」
カイは、立ち止まって仲間たちに微笑んだ。
「次の目的地は、まだ誰も見たことのない、新しい未来だ」
彼の言葉に、三人は力強く頷いた。最弱と言われた人族の少年と、その仲間たちの伝説は、まだ始まったばかり。神なき世界の最初の日、彼らの新たな旅が、今、再び幕を開ける。
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