『 使えない』と勇者のパーティを追い出された錬金術師は、本当はパーティ内最強だった

紫宛

文字の大きさ
23 / 41
過去と闇

第17話 冬が終わり春が来る

しおりを挟む
あれから、フォルスさんと合流し、スノースノーの街を拠点に依頼をこなして行った。
スノーウルフの群れや、アイスバードの奇襲、ブルーワームの産卵を阻止、と様々な討伐以来があって、3ヶ月という日数があっという間に過ぎていった。

その中でブルーワームの産卵が、とても印象に残ってる。アロイス雪原の北の方に、いくつも重なった不思議な円が沢山ある場所があって。何体ものブルーワームが、そこに集まってきて、口から卵を吐き出すらしいの。

でも、それを許しちゃうと、ブルーワームが増えすぎて、町が危険にさらされるから、定期的にブルーワームの産卵時を狙って討伐を行うんですって。
ブルーワームは、平均Lvが110の大型モンスター。北の勇者でも、大量にいるブルーワームの討伐は大変で危険らしいので、産卵時は腕利きの冒険者も一緒に依頼をこなすんだそうで……圧巻でした。

貴重な体験でした。


そしてサムアさんとも打ち解けることが出来、女子トーク?に花を咲かせたりもしました。
私に似合う服を、わざわざ王都から取り寄せたり、美味しいお菓子を作ってきてくれたりと甲斐甲斐しく世話をしてくれ、前のパーティでは感じなかった優しさが、周りに溢れていて泣きそうになりました。



長かった冬が終わりを告げ、暖かな春が来る。


春だけは2回王都に行く必要があるそうです。1回は春の初めに報告のため、2回目は勇者王決定戦に参加するからだそう。


3年に1度の勇者王決定戦……


前回は東の勇者と一緒に参加し、フォルスさん達と戦った。
フォルスさん達の連携は、凄まじくザハルさん達では太刀打ちできる相手ではありませんでした。速攻で負けると思ってたのですが、意外とザハルさん達は頑張ってたのか良い所まで闘えたのを覚えています。

【実際はイレーネが、時空魔法とアイテムでサポートしまくったため、北の勇者が本気で闘っても、苦戦を強いられただけだった。
ザハル達の実力は、皆無である】

「では明日、王都に報告へ?」
「ああ、ザハルの件があるから、イレーネは1人になるな、基本はザックかシグレと共にいろ」
「はい。王都でしたら、私の時空魔法で転移出来ますけど、歩いていくんですか?」
「うん、道中のモンスターの遭遇率を調べないと行けないからね」
「もし、危険なモンスターが出た場合は、その都度討伐して行くんですよ」

王都まで魔法で一瞬、歩いても問題が無ければ2日程で着く距離。それを依頼がなくても、モンスターの遭遇率を調べ、危険があれば道行く冒険者に注意喚起する。
だから、王都に行く時は余裕を見て早めにスノースノーを出るんだって。


ザハルさん達は、王都を拠点にしていたのは、私が転移魔法を使えていたから。
でも、私がいないなら、サンシェルに拠点を移したのかな……?
だとすれば、王都にいない可能性が高いかも!

「1人でも、大丈夫かも知れません」
「……いや、心配だから、ザックとシグレの傍にいてくれ」


この3ヶ月、フォルスさん達と行動して分かった事だけど、フォルスさんもラハルさんも心配性です。ラハルさんなんて、母親のような心配の仕方だった。お母様の記憶ないけど……

ザックさんは、お兄様のような感じです。
シグレさんは、まだ掴めません、不思議な感じの人です。


心配されるのは……
なんて言うか、凄く嬉しくて、恥ずかしくて、照れくさいです。

 
  
 
次の日 ギルド北の支部

「イレーネちゃあ~~ん!寂しいわぁ!」

うわっぷ!

サムアさんが抱きしめてきた。
これも、日常過ぎて今ではすっかり慣れました。

「サムアさん、ほんの1週間、留守にするだけですよ」
「ぐす。イレーネちゃん、王都で良い男が出来たら紹介してね♡お祝いするから!」
「え……で、出来ませんよ!私と付き合いたいなんて奇特な人、いませんよ!」
「…………」

(ん?なんか視線を感じる?)

後ろを振り返ればフォルスさんが、とてもいい笑顔で微笑んでいた。
なんか、とても怖い気がするのは気の所為なのかな?

「イレーネちゃん、そんな風に、自分を卑下しちゃダメよ。あなたの事が好きな私が悲しいわ」
「私も、悲しいですね」
「ぼくも……悲しい」
「あ、ごめんなさい」
「謝らないの!ただ、私達がイレーネちゃんの事が好きだって知ってて欲しいの。分かった?」
「はい……」

「じゃ、行くぞ」

「イレーネちゃぁぁん!気を付けてねぇぇ~!!あんた達ぃ!しっかりイレーネちゃん守るのよ!傷付けたら承知しないから!」


筋肉質な男性が女性の言葉を使いながら、腕を振り回す勢いで手を振ってくれた。私も、振り返りながら手を振る。





しおりを挟む
感想 100

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

【 完 結 】言祝ぎの聖女

しずもり
ファンタジー
聖女ミーシェは断罪された。 『言祝ぎの聖女』の座を聖女ラヴィーナから不当に奪ったとして、聖女の資格を剥奪され国外追放の罰を受けたのだ。 だが、隣国との国境へ向かう馬車は、同乗していた聖騎士ウィルと共に崖から落ちた。 誤字脱字があると思います。見つけ次第、修正を入れています。 恋愛要素は完結までほぼありませんが、ハッピーエンド予定です。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

『「毒草師」と追放された私、実は本当の「浄化の聖女」でした。瘴気の森を開拓して、モフモフのコハクと魔王様と幸せになります。』

とびぃ
ファンタジー
【全体的に修正しました】 アステル王国の伯爵令嬢にして王宮園芸師のエリアーナは、「植物の声を聴く」特別な力で、聖女レティシアの「浄化」の儀式を影から支える重要な役割を担っていた。しかし、その力と才能を妬んだ偽りの聖女レティシアと、彼女に盲信する愚かな王太子殿下によって、エリアーナは「聖女を不快にさせた罪」という理不尽極まりない罪状と「毒草師」の汚名を着せられ、生きては戻れぬ死の地──瘴気の森へと追放されてしまう。 聖域の発見と運命の出会い 絶望の淵で、エリアーナは自らの「植物の力を引き出す」力が、瘴気を無効化する「聖なる盾」となることに気づく。森の中で清浄な小川を見つけ、そこで自らの力と知識を惜しみなく使い、泥だらけの作業着のまま、生きるための小さな「聖域」を作り上げていく。そして、運命はエリアーナに最愛の家族を与える。瘴気の澱みで力尽きていた伝説の聖獣カーバンクルを、彼女の浄化の力と薬草師の知識で救出。エリアーナは、そのモフモフな聖獣にコハクと名付け、最強の相棒を得る。 魔王の渇望、そして求婚へ 最高のざまぁと、深い愛と、モフモフな癒やしが詰まった、大逆転ロマンスファンタジー、堂々開幕!

【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに 11年後、もう一人 聖女認定された。 王子は同じ聖女なら美人がいいと 元の聖女を偽物として追放した。 後に二人に天罰が降る。 これが この体に入る前の世界で読んだ Web小説の本編。 だけど、読者からの激しいクレームに遭い 救済続編が書かれた。 その激しいクレームを入れた 読者の一人が私だった。 異世界の追放予定の聖女の中に 入り込んだ私は小説の知識を 活用して対策をした。 大人しく追放なんてさせない! * 作り話です。 * 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。 * 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。 * 掲載は3日に一度。

処理中です...