『 使えない』と勇者のパーティを追い出された錬金術師は、本当はパーティ内最強だった

紫宛

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過去と闇

第22話 王都観光

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「うっわぁ~~」

私の目の前には、色とりどりの石で加工された綺麗で可愛い髪飾りが並んでいた。
その隣には、裾がふわりと広がる可愛いワンピースが置いてあるお店があって、その前のお店には、ちょっと派手な色のドレスが飾ってあるお店があった。

私はいま、王都の中心街に来ていた。
本当は今日、スノースノーに帰る予定だったのだけど、フォルスさんとザックさんの元にヴォルフさんが来て、何か話して一緒に出ていった。

その時、スノースノーに帰るのを次の日に変更する事と今日1日留守にする事を聞き、私とラハルさんとシグレさんで中心街に来ていた。

冒険者ギルドのある区画は、中心街から西にあり、冒険の役に立つ店が軒を連ねているが
その間、間に露店商がひしめき合い、とても賑わっていた。

ここ中心街は、王城に続く道で、とても広く様々な店が建っていた。
洋服店や、ご飯屋さん。
装飾店や、靴屋さんなど、行ったことのない店ばかり。

行き交う人々も、冒険者ではなく、一般の人達。猫耳の小さな女の子が、飴を舐めながら走って行き、母親の手を握り締めて笑い。
フルーツやパンが入った大きな紙袋を抱えたおばあさんに、おじいさんが奪い取るように受け取り、嬉しそうなおばあさんと一緒に目の前を歩いていった。

ザハルさんと行動してた時は、ギルド区から出る事はほとんど無く、依頼→達成→報告を繰り返すだけ。

中心街には行ったことがないって言ったら、ラハルさん達が連れてきてくれたんです!

興奮するなって言う方が無理です!

「もうすぐ花祭りがありますから、服を買っていきましょうか」
「サムアから託された。イレーネに服を買って来いって」
「北の地の花祭りは、どんな感じなんですか?」

楽しくて、嬉しくて、スキップしそうになるのを我慢し、ゆっくり歩く。

「そうですね、雪と花のコントラストや、万年雪を使った雪像が並んだりもしますね。夜にはキャンドルが灯り、とても幻想的ですよ」
「美味しい露店もたくさん出る」

聞くと、やっぱり東とは違うんだなぁとつくづく思った。

東の花祭りは、願い事を祈りながら魔力の花を作り、海に流すもの。人によって魔力の花は形が違うから、1つとして同じものがないから、とても綺麗な光景なの。
ザハルさんと行動するようになってからは、王都の花祭りに参加して、東の地の花祭りには参加出来ていなかった。

(また、いつか見に行きたいなぁ~)

「イレーネ殿?どうしましたか?」
「え?」
「ボーッとしてた。何か不安な事ある?」
「ご、ごめんなさい。何でもないです」

東の花祭りに思いを馳せていたら、ボーッとしていたらしい。

「では、どこから行きますか?」
「どこでも、付き合うよ」
「えっと、えと」

いきなり言われても決められない。
取り敢えず目に付いた、装飾店に向かったのがさっき。



装飾店のお店で

「これは、薔薇の髪飾り?……ちょっと派手…かな?」

薔薇の髪飾りを手に取り髪に当ててみる。
空色の髪に赤い薔薇は、少し派手だ。

(似合わない……)

「こっちは、カスミ草のヘッドドレス?」

様々な髪飾りを手に取っては髪に当ててみるが、似合ってないような気がして、棚に戻す事を繰り返していたら、ラハルさんが「失礼」と声掛けて、戻したヘッドドレスを手に取った。

私の三つ編みを解き、ふんわりとアップにしてヘッドドレスを付けた。

「良く似合っていますよ」
「ほんとう……ですか?」
「ええ」

嬉しくて、鏡を覗き込みながら笑みが零れた。

「店主、こちらの商品を頂けますか?身につけて行きます」
「はいよ!おぅ、嬢ちゃん、よく似合ってるぜ!」
「ありがとうございます!あっ、ラハルさん私、払いますよ!」
「ダメです。フォルスから、お金は預かっていますから大丈夫ですよ」
「で、でも!」
「イレーネには、沢山助けて貰ってる。気にしなくていい」
「そんなの、仲間ですから!それこそ気にしなくても良いんですよ!」

そうこう言い合っていたら、ラハルさんが会計を終わらせていて
「嬢ちゃん、こういうのは男に払わせときゃいいのさ!それでこそ男!ってもんさ!なっ!」
「そうです」
「分かりました、ありがとうございます」

次は隣の洋服店に向かった。
中に入ると、可愛らしい服が所狭しと並べられていて、目移りが凄いことになってしまいました。

ここでは、ラハルさんとシグレさんが2人して、私に合いそうな服をいくつか見繕ってきてくれました。いつの間にか店員さんも参加して、目の前には何着ものワンピースが並べられていました。

用意してくれた服全てに袖を通し、みんなの前に出ると、真剣な6つの目が私を上から下まで見ては、真剣な顔で相談し合ってました。

この服は、色合いが合ってなかったからダメ。
この服は、膝上丈だからダメ。
この服は、背中が開きすぎだからダメ。

と、ダメだしをしながら、服を選別していく3人。私はいつの間にか蚊帳の外です。
私が着る服なのに……。
でも、3人が真剣に選んでくれるのは、とても嬉しくて。選別が終わるのを、静かに座って待っていた。

「この3着ですね」
「ええ!この3つが特に似合っていましたわ!」
「ねぇ、1着だけじゃなくて、いっそ3着買っちゃえば?」
「それが良いですわ!この中から更に1着を選ぶなんて出来ませんもの」


3人が何か話しているが、私はウトウトしてて気付かなかった。
気づいた時にはワンピースを3着購入した後で、慌てる私に、どうしても選べなかったのだと言われ感謝して受け取った。

その後は、お洒落なご飯屋で遅めの食事をして、私が行きたかった素材屋巡りをして宿屋に帰ってきました。

フォルスさんとザックさんは、既に帰ってきていて、一緒に夕飯をとった。
食事をとりながら、今日の出来事を話し始める。ニコニコと笑顔で楽しそうに話す私に、フォルスさんもザックさんも、相槌を打ちながら、花祭りが楽しみだなと言ってくれました。


翌日、王都を発ちました。
次にこの街に来るのは、2ヶ月後
勇者王決定戦の時。


私の身に災難が降りかかることなど、この時の私は全く予想してなかった。
けれど、その災難のおかげで、大事な大切な思い出を思い出すことが出来るなんて、私は知る由もなかった。

勇者王決定戦まで、あと2ヶ月。



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