『 使えない』と勇者のパーティを追い出された錬金術師は、本当はパーティ内最強だった

紫宛

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過去と闇

第24話 クイーン・ロズ・フローズン

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『良かろう、相手になってやろう』

その一言でバトルは始まった。

氷薔薇の女王は、宙に浮き右手を高く掲げると上空に先の尖った氷の塊が無数に現れた。

彼女が右手を振り下ろす。

「!」

女王が生み出した氷の塊が私に向かって降り注ぐ。それをかわし、カバンから爆炎弾を取りだし魔力を込める。
顔を上げると目の前に氷の塊が迫っていて、時空魔法で空間を歪ませ塊を消す。
何時もなら、女王の傍と空間を繋げ攻撃を返すところだけど……女王は氷属性吸収を持っているから、氷属性の攻撃をしたら回復してしまう。

魔力を込めた爆炎弾を投げる。
投げた先と女王の背後に空間を繋げる。

『ギャアア』

爆発音が複数響き、女王が悲鳴を上げた。
続けて爆炎弾を投げるが、女王は前後に氷の壁を作り出し、爆炎弾は女王には届かなかった。

女王は、両の手を上げて、雪を巻き上げ嵐を起こす。私の足元が氷り始め凍結していく。

(まずい……!)

直ぐに飛び退いたけど、右足が凍っていた。
状態異常回復のポーションを口に含むと、凍っていた右足が回復していく。

『どうした?小娘、貴様の実力はこの程度かえ?』
「いえ!まだです!」
『ふむ、ならば良い。妾を楽しませよ』

次いでカバンから出したのは精霊石・炎。
精霊石は、一定時間精霊を呼び出すアイテム。呼び出される精霊は込める魔力量によって変わる。
私は最大まで魔力を込める。
そして、その精霊石を発動させると召喚されたのは……イフリート。
炎の最高位精霊だ。

イフリートは、私の指示を待っている。

「イフリート様、氷薔薇の女王に炎系魔法をお願いします!」

私がお願いすると、精霊イフリートはフレイムアローやイグニションといった魔法を発動させていく。

精霊イフリートが登場したあたりから、女王は少し焦りを見せ始めていた。
私は畳み掛けるように炎龍の息吹を使った。

イフリートの魔法と炎龍の炎のブレスが女王を襲った。


行ける!

そう思った……


でも、実際は……


氷に覆われ私の攻撃は彼女には届かなかった……?
否、届いたが大ダメージには至らなかったのだ。

氷が剥がれ始め、中から現れたのは……
先程の女王とは違い、顔に模様が現れ、髪は白い蛇になり、女王の周りに氷の塊が浮遊していたのだ。頭の上には、氷?の光る冠が輝き、彼女が動く度に、氷が舞って綺麗だった。

『ここまで妾を追い詰めるとは中々よ、妾に本気を出させるとはのぉ』
「これが本来の氷薔薇の女王……鑑定!」


※クイーン・ロズ・フローズン※
Lv195
体力19800
魔力25500
スキル
アイスニードル、ブリザード、ダイヤモンドダスト、絶対零度
氷 吸収、水 無効
弱点 炎、雷

先程まで与えていたダメージが回復している!

『さぁ、小娘!戦いはこれからじゃ!』

本気を出した女王に、フィールド外から心配そうにこちらを覗いていたフォルスさん達が息を飲んだ。

女王から休む間もなく氷の塊が降り注ぎ、氷のつぶてが地味にダメージを蓄積させていく。

視界が白く染まり、女王の位置が分からなくなる。イフリートが最上級魔法インフェルノを発動させ消えた。

大規模な爆発音が聞こえると、辺りを覆っていた霧が晴れ女王の位置と状態が見えた。
女王の頭の上にはバーが表示され、残りの体力の残量が分かり、今の攻撃でかなり体力を減らしてくれたようだった。

だが女王は余裕の表情だ。

精霊石は、あれ1つしかない。
今持ってるアイテムで、今の女王に対抗できるのは……炎龍の息吹と封魔石、爆炎弾はもう効果が無いよね……。

でも、たしか、マグマキューブ!

……があった!
全てのアイテムに最大まで魔力を込めれば、大打撃になるわ。
時空魔法を駆使し、倒してみせる!

「まだ、負けた、訳、じやない!」

行きも絶え絶えだけど、立ち上がった私に、女王は目を細め、嬉しそうに『かかってくるが良い!』と言った。

先ずは継続的にダメージを与えることが出来るマグマキューブに魔力を注ぐ。
それを魔法で女王の傍に送り発動させる。

すると、そこからフィールド全体にマグマが吹き荒れ女王と私に溶岩が降り注いだ。
私は自分に当たる溶岩を女王に送り、更に空間魔法を駆使し空に足場を作る。

マグマと溶岩で、フィールド内は灼熱地獄化してて降りられないからです!
でも、ちょっとやり過ぎたかな……?



でも、加減して女王にダメージを与えられない方が問題ですよね!
女王の傍を浮遊していた氷は溶け始め、熱さで顔を歪め始めた女王。

ですが、さすが女王です。
この状況でも、氷の塊を宙に出現させ攻撃を仕掛けてくるんですから。

私は封魔石に込められた魔法を発動させることにしました。

これは、どんなも封じ込め、魔力を込めれば発動させることが出来るアイテムです。
この中に封じ込めた魔法は、エクスプロージョン。インフェルノに続き最上級魔法の1つに数えられる魔法。

それを女王に投げる!

もう女王は、逃げる事が出来ないのか、その場を動かない。私が投げた封魔石が光を放ちエクスプロージョンが効果を発揮し大爆発を引き起こした。

爆風に飛ばせれながらも、足場を都度確保しながら空中に留まることが出来た。

「女王は!?」



女王が居たと思われる場所は、黒い煙で見えにくくなっていた。
マグマの力がなくなり始め、地面が見え始めていた。
油断は出来ないけど、かなりのダメージにはなったはずだよね?


注意深く覗くと……

『ふ……ふふ、ふははははは』

笑い声が響いた。

『久々じゃ、久々に楽しめたぞ小娘!』

女王は初めてあった姿ではなく、先程まで戦っていた姿でもなく、小さな子供のような姿に変わっていた。

『ああ。言うておくが、妾に戦う意思はないぞ。この姿では、満足に戦えんしのぉ』
「え?……じゃぁ」
『お主の勝ちじゃ!ほれ、氷の薔薇・原種じゃ。お主にくれてやるわ』

そう言って、女王は胸元から一輪の薔薇を取り出した。
光を放ち、銀色に輝く薔薇が私の手元に……


噛み締める余裕もなく、私の意識は、そこで途絶えた。

『ふむ、妾が負けたのは何百年ぶりかのぉ…エリクサーを本気で作ろうとするものが現れるとは……ふふ、楽しみになって来おったぞ。其方そなた、イレーネと言うたのぉ。妾は決めたぞ、其方と契約を交わそう!』

『妾の力は其方の物、其方の意思は妾の意思、汝と共に行き、汝と共に消えゆ』



氷薔薇の女王は、イレーネが気絶してるのをいい事に勝手に契約を交わしてしまった。

一部始終を見ていたフォルスは、開けた口が塞がらないみたいにポカンとしていた。
それを見た女王は『アホじゃ』と言って、消えた。

ただもう一度現れて『イレーネが起きたら、呼ぶのじゃ街に送ってやろう』と言って再び消えたのだった。

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