【完結】嫁ぎたくないと叫んだ妹の代わりに、私が嫁ぐ事になりました。

紫宛

文字の大きさ
5 / 9

第4話(最終話①)

しおりを挟む
あの日から、私はセラフィーとしてサンドリアの歴史を学び、時にはルーファス様と一緒にオアシスにも出向きました。

サンドリアのマナーは、私のいた国とは全然違っていて……驚きの連続でした。
服の文化や食の文化も全然違う……

香辛料が良く使われているのかな?って思ってたらそうでも無いみたい。
私でも食べられそうな食事を出してくれました。

ルーファス陛下の隣で食べるのは緊張しますっ!まだルーファス陛下をルース様とは呼べないし……

3週間ほど経ってますけど……

今日も陛下と一緒に、砂漠に消えかけたオアシスを救いに行くことになっていました。

「準備は出来たか?フィー」
「はい、陛下」
「……ルースと、呼んではくれないのか?」
「……恥ずかしくて、私が呼んで良いのかも……」
「「なんか」などと言うな。お前には何度も助けられているのだから」
「……はい」
「みな感謝している。それを忘れないでくれ」

分かってはいるんです。
この国の人々からも、ハイル様も、そう言ってくれますから。

でも……

家族から必要とされなかった日々を思い出すニィナ。たとえ、ハイルと契約出来ても、何も変わらなかった日々を。

勉強もマナーも何一つ満足にこなせなくて、セラフィーと比べられる毎日……

セラフィーは、私なんかとは比べ物にならない優秀な巫女。

わたしは……




「巫女様!ありがとうございます!!お陰で、このオアシスも甦りました!」

ルーファス陛下と訪れたオアシスは、町と一体化していて、町の人々は王都から水を支給して貰っていたそうです。
砂漠に飲まれていくオアシスを見て、もう町を離れる覚悟を決めていたと聞きました。

私がハイル様に祈りを捧げると、今回も龍神様が降りて来て、ハイル様と会話をし消えました。前回も前々回も同じでした。

恐らくまた、この辺りの水脈に住み着いて貰えるよう頼んだのだと思います。
これで、南と西、北のオアシスに龍神様が住み着いた事になりますね。


「い、いえ、当然の事をしたまでですわ」
「これで、これで、町から離れなくてすみますっ!」

町長さんが、膝をつき私の手を握りしめ感謝する…涙を流しながら。

何度か見た光景……

私なんかの力じゃなく、龍神様のお陰…そう、ルーファス様に言ったことがある。
そしたら、「お前が祈ってくれたから龍神が来てくれたんだ」と言われました。

そうだったら、嬉しいな……と思う。



王都に戻ってくると、使用人の方が私達のところに走って来ました。事情を聞くと、私の家族が来ているそうです。

「なんで……」

結婚式は、1週間後です。
2、3日前に来るなら分かりますが…1週間前って…早すぎませんか!?

サンドリア王国は蛮族だから、来たくないのでは無かったんですか!?

(だいたい、察しはつくがな)
(え?)
(…………)

ハイル様は、ため息はつきましたが何も語りませんでした。

「どこにいる?」
「客室に通しています。呼びますか?」
「あぁ、そうしてくれ。第1の方だ」
「畏まりました」

ルーファス陛下は、険しい顔をしています。

私達は、陛下が言った第1応接室に向かって歩き始めました。

どうしましょう?どうしたらいいの?
セラフィーと入れ替わっている事がバレれば、私は……!

それに、もしセラフィーがルーファス様を気に入ったら?また入れ替われって言われたら?

い……いやだよ…。
私は……る、ルース様と離れたくない……!

たとえ身代わりでも、今は私がセラフィーなの!だから……っ!

「大丈夫だ」
「っ……」

私の顔が強ばっていたからなのか、ルース様の手が私の頭に乗せられる。

「大丈夫だから」

と、私の頭を優しく撫でてくれる。

(我もおる)

ハイル様も、頭を擦り付けて来る。

「心配するな」
(心配するでない)

そして、2人の声が重なる。


なんで……ルース様が……?



✾✾✾

私達が応接室に入った途端、セラフィーが大声で私を非難した。

「お姉さま!よくも、わたくしをこんな目に合わせましたわね?!許せませんわっ!私がルーファス様の妻になる予定でしたのにっ!酷いわ……!」
「……え?!」
「全くお前という奴は、王妃になりたいからと言って、セラフィーの代わりに行くなど……馬鹿げた事をしおってっ!」
「え?だって……お父様達が…」
「口答えするな!」
「っ!!」
「貴方の悪事に気付き、急いで来ましたのよ?全く、貴方にセラフィーの代わりなど務まるわけがありませんのに」

物凄い剣幕で、私に詰め寄るセラフィー達。
振り上げたお父様の手は、隣にいたルース様が掴み止めてくださいました。ただ険しい顔が更に険しくなりましたが…私の肩にいた、ハイル様の気配も冷たいものに変わる。

「すまないが、どういう事かな?」
「あぁ、ルーファス陛下。大変申し訳ありません。私の馬鹿娘が、貴方様にご迷惑をおかけしたようです。直ぐに連れて帰りますので、どうかご容赦を」
「ふむ、では、そちらのお嬢さんが本当のセラフィー嬢だと?」
「はい!私が本物の巫女セラフィーですわ!そこの出来損ないとは訳が違うのです!さぁ、私の手をお取りになって」

……ルース様は……、セラフィーの手を取りますよね……本物の巫女だもの。
私なんかとは、比べ物にならない優秀な巫女だもの。

けれど、ルース様はセラフィーの手を取りませんでした。

「俺を謀っていた……という事だな?」
「そこの馬鹿娘が悪いのです。罪は全てその娘にあります!如何様にも処分を」
「ほう…」

私の後ろにるザインさんが動きました。
あの時の契約通りに私を殺すのでしょうか?
俯き、ギュッと拳を握ります。

痛いのは嫌です……出来れば一思いにっ

(変な覚悟を決めるでない!周りを見よ)
(ハイル様?)
(大丈夫、心配するでないと、我もあの男も言ったであろう?)

「ザイン。この男の言う事は本当か?」
「いいえ。良くもまぁ、こんな嘘八百が言えるもんです」
「な!ザイン貴様!裏切るのか?!」
「おや、裏切るなんて人聞きの悪い。私は元々ルーファス様の側近ですので」

え?そうなの?!

私が振り返ると、ザインさんはいつもと同じ少し怖い笑みを向けてきた。
じゃあ、あの時言ったあの言葉は……

『私は別にあなたを殺したい訳ではありませんから』

最初から殺す気は無かったってこと?

「あなたは私に、ニィナ様を殺すよう命じましたよね?その契約書もありますから全て証言できますよ?」
「あ、い、いや……」
「他に言うことはあるか?」
「で、でも!私が本物の巫女であることは真実ですわ!」
「それも嘘だな」

え……
ルース様の言葉に驚きを隠せない。

「嘘じゃありませんわ!私は龍神王様を呼べますっ!」
「祖国で龍神を呼べなくなったから、急ぎニィナの元に来たのであろう?ニィナは龍神と契約をしている。そして、ニィナの力でこの国の水不足は解消された。上手いこと入れ替われば、龍神を呼べなくても王妃になれると思ったか?浅はかな子供の考えだな」
「ち、違っ!」

龍神を呼べなくなった?
セラフィーが?
どうして……

(当然だな、セイレーンで呼べたのも理由があるのだ。あの娘の力で呼んだわけじゃない)
(そうなのですか?)
(ああ)

「お前がセイレーンで呼べたのは、ニィナが居たからじゃないのか?」
「はぁ?!なんでそこで出来損ないが出てくるのよ!」
『愚かな……貴様が出来損ないと言う娘は、我と契約した真の巫女である』
「ハイル…さま?」
「はぁ!?ちび龍は黙っててっ!」
『我が名はハイル。龍神を総べる王である』
「なんですって!?」

ハイル様が、龍神王さま?!

嘘……

『我が愛しの娘を長きに渡り虐げた罪は、到底許せるものでなし。今後一切、我ら龍神は貴様らに力を貸さぬ。子々孫々に至るまで!
 それから、1つ教えてやろう。
貴様が龍神を呼んだのではない。貴様が呼ぶ時、ニィナもまた真摯に祈っていたから、我ら龍神は力を貸したのだ。貴様の力ではない!』
「そう言うわけだ、お前を妻に迎えても俺に利はない。それに、俺はこの娘を好いている」
「ルース様……私、離れたくない…ですっ」
「初めて愛称で呼んでくれたな。それに、お前の思いを聞けて、こんな時だが嬉しく思うぞ」

私を抱き締め、額にキスをしてくるルース様に私は顔が熱くなるのを感じる。

『お主、皆がおると分かっててやっておるな』

ハイル様の声がどこか遠く感じる。
恥ずかしくて、ルース様の胸に顔を埋めた。

顔を上げられないっ!!
私が顔を上げられないで悶々としている間に、ルース様がお父様達を牢屋にと側近の方達に指示してました。

「俺を謀った罪は重いぞ!この事は、セイレーン国にも抗議させて頂く」
「そんな……っ!」
「牢に入れておけ」
「はっ!」

カラムさんとザインさん、そして部屋の前にいた兵士さん達がお父様達を拘束していく。

「強制送還になるが、手続きに多少の時間がかかる!俺とニィナ嬢の結婚式が終わるまで大人しくしていろ!良いな!」
「私なんかで、本当に良いんですか?」
「なんかとか言うな。ニィナ、お前は立派な巫女だ。民の皆が感謝しているのは、ニィナになんだぞ」
「……はい」

鼻をすする。
涙が零れる。

『ニィナ、我が愛しの娘。我は其方の幸せを望んでおるよ』




───────

投稿、遅くなり申し訳ありません。
プロローグ含め本編5話で終わる予定でしたが、結婚式が入らなかったので……エピローグという形で6話目を投稿したく思います。

あともう少しだけお付き合い下さい(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
本編終了後、おまけを2話追加したく思っています。短めです。
よろしくお願いしますm(_ _*)m゛
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

望まない相手と一緒にいたくありませんので

毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。 一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。 私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!卒業式で噂の的です

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、アンジュ・シャーロック伯爵令嬢には婚約者がいます。女好きでだらしがない男です。婚約破棄したいと父に言っても許してもらえません。そんなある日の卒業式、学園に向かうとヒソヒソと人の顔を見て笑う人が大勢います。えっ、私婚約破棄されるのっ!?やったぁ!!待ってました!! 婚約破棄から幸せになる物語です。

婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。 しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。 そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……

まさか、今更婚約破棄……ですか?

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
チャールストン伯爵家はエンバー伯爵家との家業の繋がりから、お互いの子供を結婚させる約束をしていた。 エンバー家の長男ロバートは、許嫁であるチャールストン家の長女オリビアのことがとにかく気に入らなかった。 なので、卒業パーティーの夜、他の女性と一緒にいるところを見せつけ、派手に恥を掻かせて婚約破棄しようと画策したが……!? 色々こじらせた男の結末。 数話で終わる予定です。 ※タイトル変更しました。

おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。

ましゅぺちーの
恋愛
公爵家の令嬢であるリリスは家族と婚約者に愛されて幸せの中にいた。 そんな時、リリスの父の弟夫婦が不慮の事故で亡くなり、その娘を我が家で引き取ることになった。 娘の名前はシルビア。天使のように可愛らしく愛嬌のある彼女はすぐに一家に馴染んでいった。 それに対してリリスは次第に家で孤立していき、シルビアに嫌がらせをしているとの噂までたち始めた。 婚約者もシルビアに奪われ、父からは勘当を言い渡される。 リリスは平民として第二の人生を歩み始める。 全8話。完結まで執筆済みです。 この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

完結 この手からこぼれ落ちるもの   

ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。 長かった。。 君は、この家の第一夫人として 最高の女性だよ 全て君に任せるよ 僕は、ベリンダの事で忙しいからね? 全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ 僕が君に触れる事は無いけれど この家の跡継ぎは、心配要らないよ? 君の父上の姪であるベリンダが 産んでくれるから 心配しないでね そう、優しく微笑んだオリバー様 今まで優しかったのは?

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

無表情な奴と結婚したくない?大丈夫ですよ、貴方の前だけですから

榎夜
恋愛
「スカーレット!貴様のような感情のない女となんて結婚できるか!婚約破棄だ!」 ......そう言われましても、貴方が私をこうしたのでしょう? まぁ、別に構いませんわ。 これからは好きにしてもいいですよね。

処理中です...