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2話
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「おいしい……」
私は、渡されたサンドウィッチを頬張っていた。まだ温かく柔らかいお肉は、私の口の中で溶けるように消えて無くなった。
次に、猫のお姉さんがくれたリンゴを食べました。瑞々して甘くて、すぐ無くなっちゃいました。
さっきまで凄くお腹すいていたのに、お姉さんやお兄さんがくれた食べ物のお陰で今は満腹です!
お兄さんも、物凄く顔は怖かったのにとても優しい人でした。
「人間嫌い……じゃなかったのかな?」
私の知識は、偏っていたのかも……
本当は、みんないい人なのかも……
満腹になったお腹を擦りながら私は、宛もなく街の中を歩きました。
行く場所はありません。
今の人達がいい人でも、みんな同じ考えを持っているわけじゃない。人間だって悪い人は沢山いるもの……
ズキンッ……
「つっ」
その時、胸の辺りに強い痛みを感じました。
(胸が痛い……)
私は、視線を胸の上のある部分に向ける。
服の中を覗き見ると、無惨に砕けボロボロになった宝石がありました。
父だった人や、道中助けてくれた人達が、ナイフ片手に胸の宝石を削り奪っていったのが原因です。
「……っ」
痛くて苦しくて、その場に蹲りました。
周りに人影はなく、私は力なく地面に横たわりました。自分の体から光が発している事き気付かず……
・
・
・
それから、どのくらいの時間が経ったのかは分かりませんが、人の気配を感じて目を開けました。
「あっ!お目覚めですかぁ?」
知らない女の人が私を覗き込んでいて、話しかけて来ました。
人の姿に、頭に黒い猫のような耳のある女性です。
この方は恐らく……獣人族だと思います。
獣族や獣人の違いは、直ぐに分かります。人間の姿に動物的な要素があるのが獣人、動物の姿をし二足歩行なのが獣族です。
竜族や竜人族も同じです。
「ご気分はぁ、どうですかぁ?痛いところや、苦しいとかないですかぁ?」
「…………」
「あらぁ?もしかして、話せませんかぁ?」
喉も怪我してたのかしらぁ?、と女の人は私の口の中に手を入れて覗き込んできました。
「う、うぇっ……ぅ」
「ちょぉっと我慢してくださいねぇ」
女の人は容赦なく口の中に手を入れて、私の口を大きく広げると「うぅーん、大丈夫そうですねぇ」と言った。
「な、なにする……」
「貴方様に何かあるとぉ、主様が怒りますからぁ」
貴方様?
それは、誰を指しているのですか?
「まさか、竜神様が倒れてるとは思いませんでしたぁ」
……はい?
竜神様?
何を……言ってるのですか?
「だ れ の事を、言ってるのです、か?」
「決まってるじゃないですかぁ」
そう言って私を覗き込み、両手で脇を掴み持ちあげた。
(??持ち上げた??)
女の人の目線と同じ高さまで持ち上げられ、私は初めて自分の姿を女の人の瞳に映る姿を見て知りました。
(竜?!)
その瞳には、真っ白い鱗に青空のような瞳をした竜が唖然とした顔で映っていました。
「…………」
ど、どういう事でしょうか?!
ど、ドラゴン?!
(私がドラゴンになってます!!??)
受け入れ難い事実に現実から逃避しそうですが……女の人の次の発言で現実に引き戻されました。
「竜神様が目を覚まされたらぁ、お連れするよう主様に言われてますぅ。という訳でぇ、王様の元へ、ゴォ~」
(はぃぃ?!王様?!)
私が混乱してる間に……女の人はドラゴンになった私を、ふわふわのクッションを敷き詰めた籠に入れました。
そして、私が入った籠を持って歩き始めると周りを鎧を着た騎士が囲いました。
前と後ろに2人づつ、計4人の騎士に囲まれると……逃げたくなります……
あの時とは違うと頭では理解してますが……体はそうでも無いみたいです。
大きな扉の前、騎士の方が声高に入室の合図を出すと中から開かれ……目の前には、大勢の人……
皆が私に注目し、奥の中央に座る人が立ち上がる。
「……!!」
(ヒッ……!!)
イヤ
イヤダ
コワイ
ココニイタクナイッ!!
私の思いに応えるように、背中の翼が広がり力強く羽ばたく。クッションから足が離れ、私は……心の赴くまま窓から空に飛び立って行きました。
「え?!竜神様!!」
「竜神様っ!!」
沢山の人の声と、私のお世話をしてくれた女の人の声が重なる。
それでも、私の翼は止まらない。
「すごい、私……飛んでる!」
理由は分からないけれど、私がドラゴンになってるのは事実で、こうして空も飛んでいる。
初めて感じる自由に、心が弾む。
家に居た時も、追い出され逃げていた時も、そして竜神様と言われ世話された時も、自由を感じた事はなかった。
でも、今は違います。
心も体も軽く、お腹は空いていない。
胸の痛みも……今はない。
今まで、肌に感じる風を意識した事はあっただろうか……空を見上げた事は?
そんな余裕、ありはしなかった…彼らから逃げる事が最優先だったから。
空を飛びながら過去を振り返っていた私は、突如陰った影に上を見上げました。
「?…………!!」
私の竜の姿が……普通の大人の女の人の3分の1位の大きさだとすると、私の上を飛ぶ竜は……
街の中に建つ二階建てのお家3つ分の大きさ……
(自由の時間……短かったですね)
逃げられない
そう覚った私は、諦める事にしました。
元が人間だと知られたら、彼らは私を殺すでしょうね。生かす意味がありませんから……
大きな竜は私を一掴みすると、先程のお城に引き返して行きました。
お城の一角、大きな竜が降り立ってもまだ広いその場所はバルコニーでした。
バルコニーに降りた大きな竜は、眩い光を放つと人の姿に変わっていました。竜だったその方は、先程広間の玉座に座っていたお方……この国の王様でした。
「ふぅ、傷は開いていないな」
王様は私を抱き上げ、お腹や足、翼の裏や尻尾を念入りに調べます。
「だ、大丈夫、ですっ」
「ん、ライラからも報告は受けているが……自分の目で見た方が安心だ」
その後も、広間に行く途中ずっと王様は私の怪我の有無を念入りに……念入りに調べました。
ちょっと、恥ずかしかったです。
その間、王様は話もして下さいました。
まず、ライラと言うのは私の世話をしてくれた女の人らしいです。
それから、私が倒れていた場所は街からお城への道の途中だそうで、王様が視察の帰りに見つけて下さったそうです。
竜神様とは、竜人とはまた違うそうです。
純粋な竜の血を持ち、人の姿にはなれないそうです。殆どの竜神様は亡くなり、今存在しているのはこの国の南区に住まう老竜神のみだそうで、私を見た時は興奮したと王様は言いました。
……隠しても、直ぐにバレそうなので……素直に、自分は本当は人間なのだと白状しました。
「ふむ、では竜人なのだな?」
「違います……人間、です」
私が頑なに人間だと言い張るので、王様は顎に手を当てて考え出してしまいました。
でも、嘘はついてません。
私は、胸に宝石が付いた人間。
化け物ではあっても、竜人ではありません。
「普通の人間は、竜にはなれんのだかな」
王様は私を見て、言い聞かすようにハッキリと口にしました。
「まぁ良い、怪我が治れば真相も明らかになろう」
それから数日……私は殺される事はありませんでした。
ライラさんにお世話をされながら、美味しい食事と適度な運動を毎日繰り返し、すっかりと元気になっていました。
胸の痛みはまだ残ってはいましたが……
・
・
そして、再び広間に連れて来られました。
「もう、人の姿に戻れる筈だ」
「…?戻り方が分かりません」
「簡単だ、戻りたいと心で願えばいい」
(戻りたい?)
王様に言われ、私は心の中で強く人の姿に戻りたいと願いました。すると、王様が人の姿に戻った時と同じように、眩い光が周囲を明るく照らしました。
「つっ!!」
「おぉ」という驚きや感嘆な声が周囲から聞こえてきて、私はゆっくりと瞼を開きました。
最初に見たのは、自分の手です。
ちゃんと指が5本あります……
開いたり閉じたりを繰り返し、続いて周囲を見渡すと嬉しそうな顔や泣いてる人が見えました。
王様もライラさんも、嬉しそうに笑っています。
何がそんなに嬉しいのでしょうか?
「あの?」
「やはり、お前は竜人だよ。俺の仲間…いや家族だ」
王様は私の前に跪き、手を振りあげました。一瞬その手に恐怖を抱きますが、王様は私を殴らず頭に手を乗せて優しく撫でて下さいます。
頭を撫でる手の感触に目を細めそうになりますが……最後の言葉に、私は反応してしまいました。
だって……
「家族?」
家族だと言うのですから……
私の家族は……、いません。
母は死に、父は……結局誰か分かりませんでしたから。
「あぁ、竜人は繁殖力は低いが、生まれた子供は必ず竜人になるんだ。この国に存在する竜人は、俺と弟と……後は、お前だけだ」
と王様は言いました。
つまり……竜人が竜人以外と結婚し子を成しても、必ず竜人が産まれてくるのだそうです。
それは、相手が人間でも同じ事なんだそう……
まぁ…相手が人間だと、強い力を持つ竜人に負け母体が先に亡くなるケースが多いそうですが…
「お前の名は?」
「ティアナ……です」
「では、ティアナ。お前の母は?父は?」
「母は、セスティナ。父は……分かりません」
母は、自分が竜人とは言ってませんでした。出自証明書も人間と記載されていたと思います。侯爵様も疑問に思ってなかったみたいですし……
母は、私に父親の存在を伝えた事はありません。
母は亡くなるまで、その存在を隠し続けましたから……
「そうか……母親は竜人か?」
「違います」
「なら、父親が竜……___、_?」
王様の声が少し遠くなってきます。
また、胸に鋭い痛みが走ったからです。
「だ、大丈夫です……」
「おいっ!!」
怪我は無かった筈だと、王様は叫んでいます。
周りにいた人々の中から誰かが進み出て、外傷は治ってるはずだと言いました。
ドラゴンの姿だと、胸の宝石が隠れて気が付かなかったのかも知れません。
「だ、いじょうぶです。たぶん……胸の宝石が原因です、から……」
「宝石?」
そうでした…宝石の存在を忘れていました。
私は、やはり竜人じゃない……ただの……
力なく胸に手をやり服を捲ろうとしたけれど、どうしても上手くいかず……もたもたしていたら、目の前にいた王様が代わりに少しだけ捲り息を飲みました。
「っ!?」
そして、次の瞬間には怒りの形相に変わり「竜心の治療師を呼べ!」と叫びました。
(……りゅう、しん?)
ズキズキと主張を訴える胸の宝石に、意識を飛ばさないよう気を付けながら私は考えていました。
この胸の宝石は、化け物の象徴ではなかったのか?と。
竜心とは、なんなのだろう?と。
そして、この宝石、元に戻せるんだ……と。
「竜心は、竜人の命だ!誰にやられた!!だから、竜化したんだな……しっかりしろ」
「わたしは、化け物ではないんですか?」
「竜人だと言ってるだろう!」
「侯爵も婚約者だった人も、私を化け物と言いました」
その瞬間、この場にいた人全員から殺気の様なものを感じました。もちろん、王様からも感じます。
「私は…もう18になるのに、全然成長しないし、魔力は高いし、胸に宝石があって……人間ぽくないし…」
「……人間の国……マゼラスティ、カザルス、ジュモーグス……。そうか、ジュモーグスか……」
地を這うような声で国の名称を言い続け、私がジュモーグスで怯えた反応をすると、王様は直ぐに指示を飛ばし始めた。
「竜人に手を出すとか、愚かだな…竜心を知らぬアホ共め。いや、知ってて手を出したのか?ティアナが、ランテラスに辿り着くとは思わなかったのだろな」
王様のその言葉を最後に私は、広間に駆け込んで来た人達に抱き抱えられ連れて行かれました。連れて行かれた場所は神殿で、そこで祈りや竜水と呼ばれる物を飲んだりかけたり…
何日も過ごす事になりました。
私の胸の宝石……竜心は、神殿の祭司様達の力で元の形に戻りつつありました。
そんなある日、王様が神殿にやってきて弟さんを紹介してくれました。……王様も強そうでしたが、弟さんは屈強な戦士って感じの雰囲気でした。
その弟さんが、凄い事を言ったんです。
「ティアナ、ジュモーグスはもう存在しない。国そのものを滅ぼしたからな」
と。
「お前に酷い事をした人間は、一応連れて来たはしたが……」
弟さんは、私を見ながら言いづらそうに言葉を濁し全て王様である兄に任せたと伝えて来ました。
王様は、弟さんの言葉に怖い笑顔を浮かべ「俺に任せておけばいい、殺しはしない」と言いました。
私は、その日から更にひと月と少し神殿で過ごしお城に帰りました。これからは、お城が私の家になるそうです。
王様と弟さんの両親が、私を養子に迎え入れて下さったんです。
18歳なのに小さいのは、竜人では普通なのだそうです。けれど、痩せ細っているのは普段の生活が問題だったそうで……それに関しては、侯爵様たちに罰を与えたそうです。
その侯爵様ですが……
今は、奴隷をしているそうです。
……竜人や獣人達の……
死を選ぶことが出来ないよう、監視や猿轡をされて地下牢で生活をしてるそうです。
私は、追い出されたあの日から見ていないので状況は分かりませんが……
母が亡くなったのは、寂しかったし……父親が侯爵様じゃないと知ってショックでしたが、今は幸せです。
あの日……追い出されたから私は、自分の真実を知る事が出来たんです。
母が知っていたのかは、分かりませんが……
~完~
_____
勢いで書いた作品でしたので、読みづらかったら申し訳ないです。ありがとうございました(*ᴗˬᴗ)⁾
私は、渡されたサンドウィッチを頬張っていた。まだ温かく柔らかいお肉は、私の口の中で溶けるように消えて無くなった。
次に、猫のお姉さんがくれたリンゴを食べました。瑞々して甘くて、すぐ無くなっちゃいました。
さっきまで凄くお腹すいていたのに、お姉さんやお兄さんがくれた食べ物のお陰で今は満腹です!
お兄さんも、物凄く顔は怖かったのにとても優しい人でした。
「人間嫌い……じゃなかったのかな?」
私の知識は、偏っていたのかも……
本当は、みんないい人なのかも……
満腹になったお腹を擦りながら私は、宛もなく街の中を歩きました。
行く場所はありません。
今の人達がいい人でも、みんな同じ考えを持っているわけじゃない。人間だって悪い人は沢山いるもの……
ズキンッ……
「つっ」
その時、胸の辺りに強い痛みを感じました。
(胸が痛い……)
私は、視線を胸の上のある部分に向ける。
服の中を覗き見ると、無惨に砕けボロボロになった宝石がありました。
父だった人や、道中助けてくれた人達が、ナイフ片手に胸の宝石を削り奪っていったのが原因です。
「……っ」
痛くて苦しくて、その場に蹲りました。
周りに人影はなく、私は力なく地面に横たわりました。自分の体から光が発している事き気付かず……
・
・
・
それから、どのくらいの時間が経ったのかは分かりませんが、人の気配を感じて目を開けました。
「あっ!お目覚めですかぁ?」
知らない女の人が私を覗き込んでいて、話しかけて来ました。
人の姿に、頭に黒い猫のような耳のある女性です。
この方は恐らく……獣人族だと思います。
獣族や獣人の違いは、直ぐに分かります。人間の姿に動物的な要素があるのが獣人、動物の姿をし二足歩行なのが獣族です。
竜族や竜人族も同じです。
「ご気分はぁ、どうですかぁ?痛いところや、苦しいとかないですかぁ?」
「…………」
「あらぁ?もしかして、話せませんかぁ?」
喉も怪我してたのかしらぁ?、と女の人は私の口の中に手を入れて覗き込んできました。
「う、うぇっ……ぅ」
「ちょぉっと我慢してくださいねぇ」
女の人は容赦なく口の中に手を入れて、私の口を大きく広げると「うぅーん、大丈夫そうですねぇ」と言った。
「な、なにする……」
「貴方様に何かあるとぉ、主様が怒りますからぁ」
貴方様?
それは、誰を指しているのですか?
「まさか、竜神様が倒れてるとは思いませんでしたぁ」
……はい?
竜神様?
何を……言ってるのですか?
「だ れ の事を、言ってるのです、か?」
「決まってるじゃないですかぁ」
そう言って私を覗き込み、両手で脇を掴み持ちあげた。
(??持ち上げた??)
女の人の目線と同じ高さまで持ち上げられ、私は初めて自分の姿を女の人の瞳に映る姿を見て知りました。
(竜?!)
その瞳には、真っ白い鱗に青空のような瞳をした竜が唖然とした顔で映っていました。
「…………」
ど、どういう事でしょうか?!
ど、ドラゴン?!
(私がドラゴンになってます!!??)
受け入れ難い事実に現実から逃避しそうですが……女の人の次の発言で現実に引き戻されました。
「竜神様が目を覚まされたらぁ、お連れするよう主様に言われてますぅ。という訳でぇ、王様の元へ、ゴォ~」
(はぃぃ?!王様?!)
私が混乱してる間に……女の人はドラゴンになった私を、ふわふわのクッションを敷き詰めた籠に入れました。
そして、私が入った籠を持って歩き始めると周りを鎧を着た騎士が囲いました。
前と後ろに2人づつ、計4人の騎士に囲まれると……逃げたくなります……
あの時とは違うと頭では理解してますが……体はそうでも無いみたいです。
大きな扉の前、騎士の方が声高に入室の合図を出すと中から開かれ……目の前には、大勢の人……
皆が私に注目し、奥の中央に座る人が立ち上がる。
「……!!」
(ヒッ……!!)
イヤ
イヤダ
コワイ
ココニイタクナイッ!!
私の思いに応えるように、背中の翼が広がり力強く羽ばたく。クッションから足が離れ、私は……心の赴くまま窓から空に飛び立って行きました。
「え?!竜神様!!」
「竜神様っ!!」
沢山の人の声と、私のお世話をしてくれた女の人の声が重なる。
それでも、私の翼は止まらない。
「すごい、私……飛んでる!」
理由は分からないけれど、私がドラゴンになってるのは事実で、こうして空も飛んでいる。
初めて感じる自由に、心が弾む。
家に居た時も、追い出され逃げていた時も、そして竜神様と言われ世話された時も、自由を感じた事はなかった。
でも、今は違います。
心も体も軽く、お腹は空いていない。
胸の痛みも……今はない。
今まで、肌に感じる風を意識した事はあっただろうか……空を見上げた事は?
そんな余裕、ありはしなかった…彼らから逃げる事が最優先だったから。
空を飛びながら過去を振り返っていた私は、突如陰った影に上を見上げました。
「?…………!!」
私の竜の姿が……普通の大人の女の人の3分の1位の大きさだとすると、私の上を飛ぶ竜は……
街の中に建つ二階建てのお家3つ分の大きさ……
(自由の時間……短かったですね)
逃げられない
そう覚った私は、諦める事にしました。
元が人間だと知られたら、彼らは私を殺すでしょうね。生かす意味がありませんから……
大きな竜は私を一掴みすると、先程のお城に引き返して行きました。
お城の一角、大きな竜が降り立ってもまだ広いその場所はバルコニーでした。
バルコニーに降りた大きな竜は、眩い光を放つと人の姿に変わっていました。竜だったその方は、先程広間の玉座に座っていたお方……この国の王様でした。
「ふぅ、傷は開いていないな」
王様は私を抱き上げ、お腹や足、翼の裏や尻尾を念入りに調べます。
「だ、大丈夫、ですっ」
「ん、ライラからも報告は受けているが……自分の目で見た方が安心だ」
その後も、広間に行く途中ずっと王様は私の怪我の有無を念入りに……念入りに調べました。
ちょっと、恥ずかしかったです。
その間、王様は話もして下さいました。
まず、ライラと言うのは私の世話をしてくれた女の人らしいです。
それから、私が倒れていた場所は街からお城への道の途中だそうで、王様が視察の帰りに見つけて下さったそうです。
竜神様とは、竜人とはまた違うそうです。
純粋な竜の血を持ち、人の姿にはなれないそうです。殆どの竜神様は亡くなり、今存在しているのはこの国の南区に住まう老竜神のみだそうで、私を見た時は興奮したと王様は言いました。
……隠しても、直ぐにバレそうなので……素直に、自分は本当は人間なのだと白状しました。
「ふむ、では竜人なのだな?」
「違います……人間、です」
私が頑なに人間だと言い張るので、王様は顎に手を当てて考え出してしまいました。
でも、嘘はついてません。
私は、胸に宝石が付いた人間。
化け物ではあっても、竜人ではありません。
「普通の人間は、竜にはなれんのだかな」
王様は私を見て、言い聞かすようにハッキリと口にしました。
「まぁ良い、怪我が治れば真相も明らかになろう」
それから数日……私は殺される事はありませんでした。
ライラさんにお世話をされながら、美味しい食事と適度な運動を毎日繰り返し、すっかりと元気になっていました。
胸の痛みはまだ残ってはいましたが……
・
・
そして、再び広間に連れて来られました。
「もう、人の姿に戻れる筈だ」
「…?戻り方が分かりません」
「簡単だ、戻りたいと心で願えばいい」
(戻りたい?)
王様に言われ、私は心の中で強く人の姿に戻りたいと願いました。すると、王様が人の姿に戻った時と同じように、眩い光が周囲を明るく照らしました。
「つっ!!」
「おぉ」という驚きや感嘆な声が周囲から聞こえてきて、私はゆっくりと瞼を開きました。
最初に見たのは、自分の手です。
ちゃんと指が5本あります……
開いたり閉じたりを繰り返し、続いて周囲を見渡すと嬉しそうな顔や泣いてる人が見えました。
王様もライラさんも、嬉しそうに笑っています。
何がそんなに嬉しいのでしょうか?
「あの?」
「やはり、お前は竜人だよ。俺の仲間…いや家族だ」
王様は私の前に跪き、手を振りあげました。一瞬その手に恐怖を抱きますが、王様は私を殴らず頭に手を乗せて優しく撫でて下さいます。
頭を撫でる手の感触に目を細めそうになりますが……最後の言葉に、私は反応してしまいました。
だって……
「家族?」
家族だと言うのですから……
私の家族は……、いません。
母は死に、父は……結局誰か分かりませんでしたから。
「あぁ、竜人は繁殖力は低いが、生まれた子供は必ず竜人になるんだ。この国に存在する竜人は、俺と弟と……後は、お前だけだ」
と王様は言いました。
つまり……竜人が竜人以外と結婚し子を成しても、必ず竜人が産まれてくるのだそうです。
それは、相手が人間でも同じ事なんだそう……
まぁ…相手が人間だと、強い力を持つ竜人に負け母体が先に亡くなるケースが多いそうですが…
「お前の名は?」
「ティアナ……です」
「では、ティアナ。お前の母は?父は?」
「母は、セスティナ。父は……分かりません」
母は、自分が竜人とは言ってませんでした。出自証明書も人間と記載されていたと思います。侯爵様も疑問に思ってなかったみたいですし……
母は、私に父親の存在を伝えた事はありません。
母は亡くなるまで、その存在を隠し続けましたから……
「そうか……母親は竜人か?」
「違います」
「なら、父親が竜……___、_?」
王様の声が少し遠くなってきます。
また、胸に鋭い痛みが走ったからです。
「だ、大丈夫です……」
「おいっ!!」
怪我は無かった筈だと、王様は叫んでいます。
周りにいた人々の中から誰かが進み出て、外傷は治ってるはずだと言いました。
ドラゴンの姿だと、胸の宝石が隠れて気が付かなかったのかも知れません。
「だ、いじょうぶです。たぶん……胸の宝石が原因です、から……」
「宝石?」
そうでした…宝石の存在を忘れていました。
私は、やはり竜人じゃない……ただの……
力なく胸に手をやり服を捲ろうとしたけれど、どうしても上手くいかず……もたもたしていたら、目の前にいた王様が代わりに少しだけ捲り息を飲みました。
「っ!?」
そして、次の瞬間には怒りの形相に変わり「竜心の治療師を呼べ!」と叫びました。
(……りゅう、しん?)
ズキズキと主張を訴える胸の宝石に、意識を飛ばさないよう気を付けながら私は考えていました。
この胸の宝石は、化け物の象徴ではなかったのか?と。
竜心とは、なんなのだろう?と。
そして、この宝石、元に戻せるんだ……と。
「竜心は、竜人の命だ!誰にやられた!!だから、竜化したんだな……しっかりしろ」
「わたしは、化け物ではないんですか?」
「竜人だと言ってるだろう!」
「侯爵も婚約者だった人も、私を化け物と言いました」
その瞬間、この場にいた人全員から殺気の様なものを感じました。もちろん、王様からも感じます。
「私は…もう18になるのに、全然成長しないし、魔力は高いし、胸に宝石があって……人間ぽくないし…」
「……人間の国……マゼラスティ、カザルス、ジュモーグス……。そうか、ジュモーグスか……」
地を這うような声で国の名称を言い続け、私がジュモーグスで怯えた反応をすると、王様は直ぐに指示を飛ばし始めた。
「竜人に手を出すとか、愚かだな…竜心を知らぬアホ共め。いや、知ってて手を出したのか?ティアナが、ランテラスに辿り着くとは思わなかったのだろな」
王様のその言葉を最後に私は、広間に駆け込んで来た人達に抱き抱えられ連れて行かれました。連れて行かれた場所は神殿で、そこで祈りや竜水と呼ばれる物を飲んだりかけたり…
何日も過ごす事になりました。
私の胸の宝石……竜心は、神殿の祭司様達の力で元の形に戻りつつありました。
そんなある日、王様が神殿にやってきて弟さんを紹介してくれました。……王様も強そうでしたが、弟さんは屈強な戦士って感じの雰囲気でした。
その弟さんが、凄い事を言ったんです。
「ティアナ、ジュモーグスはもう存在しない。国そのものを滅ぼしたからな」
と。
「お前に酷い事をした人間は、一応連れて来たはしたが……」
弟さんは、私を見ながら言いづらそうに言葉を濁し全て王様である兄に任せたと伝えて来ました。
王様は、弟さんの言葉に怖い笑顔を浮かべ「俺に任せておけばいい、殺しはしない」と言いました。
私は、その日から更にひと月と少し神殿で過ごしお城に帰りました。これからは、お城が私の家になるそうです。
王様と弟さんの両親が、私を養子に迎え入れて下さったんです。
18歳なのに小さいのは、竜人では普通なのだそうです。けれど、痩せ細っているのは普段の生活が問題だったそうで……それに関しては、侯爵様たちに罰を与えたそうです。
その侯爵様ですが……
今は、奴隷をしているそうです。
……竜人や獣人達の……
死を選ぶことが出来ないよう、監視や猿轡をされて地下牢で生活をしてるそうです。
私は、追い出されたあの日から見ていないので状況は分かりませんが……
母が亡くなったのは、寂しかったし……父親が侯爵様じゃないと知ってショックでしたが、今は幸せです。
あの日……追い出されたから私は、自分の真実を知る事が出来たんです。
母が知っていたのかは、分かりませんが……
~完~
_____
勢いで書いた作品でしたので、読みづらかったら申し訳ないです。ありがとうございました(*ᴗˬᴗ)⁾
応援ありがとうございます!
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