ポーションが作れない錬金術師は、アトリエを追い出され家族を探す旅に出る

紫宛

文字の大きさ
8 / 12
本編

第5話 出発

しおりを挟む
「マルバくん、こっち向いてね」

カイムは、マルバを自分の方に向けると透明なローブを頭から被せた。すると……彼の姿は消え、見えなくなった。

透明ローブは光と水の力が影響してるらしい……んだけど、師匠に聞いたけど難しすぎて理解できなかった…

「うん、成功!」

そして、自分も同じようにローブを被り姿を隠した。しかし……お互いの姿が見えなくなってしまうので、ローブを被っている間は手を握って移動する事にした。

「マルバくん、絶対に離しちゃダメだよ」
「ウン、ダイ、ジョブ」

姿が消えるだけなので、匂いに敏感な魔物には気付かれてしまう。なのでカイムは、前に師匠であるアモルから貰った魔除まよけの香水を取り出し、自分達の周りに振りかけた。効果は1日続くので、これで今度こそ大丈夫な筈と2人は歩き始めた。


シャマイムの街から、歩いて1日ほどの距離に町があるって師匠に聞いた事がある。そこからは、次の町や村まではかなり歩く事になるって師匠が言ってました。普通は乗り合い馬車に乗るのが一般的とも。……こっそりと、手を引くマルバくんの方に視線を向け、思う。

きっと、馬車には乗せて貰えないだろうと。

だから、その町で食料や地図を入手して…自分達の足で歩いて隣国に行かなければいけない。師匠みたいに、一瞬で飛べるアイテムを作れれば良かったのかもだけど……意味ないか。行ったことある場所じゃなきゃ飛べないって、師匠言ってたし。

それに何より……私は、服とか飾り…良くても鎧とか靴しか作れない。作りたくても、レシピ通りに作っても違う物になっちゃうし。

もう一度、マルバくんの方に視線を向け、頑張ろうと心に誓った。……ひとりじゃないからと。

街道からそう遠くない森の中を、慎重に進んでいく。魔物にも人にも気付かれないと分かっていても、やっぱり怖いから。

自然と繋いだ手にも力が入ったらしく、マルバくんが「ダイジョブ?」と小声で声をかけてくれて、更にマルバくんからも、ギュッと握る力を込めてくれた。

……私達が小声で話すには理由がある。匂いは魔除の香水で消せるけど、声は隠せない。話し声が魔物を呼び寄せることもあるって、前に冒険者の人が話してるのを聞いたから。


お互いに今日が初めましてだったから、マルバくんと小声で沢山お話しました。マルバくんは、私の事を会う前から知ってたみたいだけど……

「ウガガ、ウガーウガ(おねぇ、有名だから)」
「有名?」
「ウガ、ウーガウガウガガ(うん、特別な服を作ってくれるって)」

回復効果のある服や、亜人の特性を隠す服や飾りを作ってくれるって、とマルバくんは話してくれました。それで会いに来たんだと。

ふたりで話しながら進めば、歩きにくく怖い森の中も何とか耐えられました。夜は、怖いけど焚き火とかしたら見つかりそうで、ローブを被ったまま2人で手を繋いで寝ました。もし万が一、寝てる間に手が離れたら困るから、布で2人の手を縛って…

2人とも夜中に何度も目を覚ましたけど、無事に朝を迎えられ町にたどり着くことができ、町に入る時は……マルバくんは見つかったら危険なので、私だけローブを外し、手は繋いだまま町に入る事にしました。

まずやることは、路銀を手に入れること。町の鍛冶屋さんや道具屋さんに行って持っていた服やアクセサリーを売りました。あまりお金にはならなかったけど、それでも地図と干し肉は買えたので良かったです。

「さ、もう行こうか」

小さなく頷くマルバくんの声を聞き、私達は町を出て北東に向かって再び歩き始めました。

ハイディオス帝国は、北東にある。地図を見ると……ハイディオス帝国は、雪の妖精が住む雪原を超え、山脈を超え、大きな川を超えた先にある。


歩きで行くにはかなり遠い国。
けれど、妙な確信があった……新しい出会いと、そんなに時間かからずに隣国ハイディオス帝国に行ける……そんな予感が。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!

蒼衣翼
ファンタジー
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。 ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。 しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。 強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。 そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。 一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

処理中です...