【未完】砂漠の狼と元公爵令嬢

紫宛

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神聖王国と砂漠の国

第6話 奴隷令嬢、砂漠の国へ

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「起きろ」
地下室の中、男の声が響く。
髪を引っ張られ、薄く目を開ける。
あの日から、ずっと、拷問が続いていた。
血が出ない日が無いほどに、声が出なくなる程に、腫れて目が開きにくくなるほどに。
以前の私なら、身体中の痛みに悲鳴を上げていたでしょう。
ですが、私は、何も感じない。痛覚が麻痺したのか、何も感じなくなっていた。

「貴様の買い手が決まったぞ」
買い手……?
どこかに売られるのでしょうね。
男が、何かを言っている。
耳が……聞こえ難い
「__、___っ、おい、聞いてんのか!」
「貴様の買い手だが、砂漠の国ソルファレナだ」

ソルファレナ……太陽の神が愛した地、代々の王は、特別な能力を持っていると聞きました。
精霊も、多く存在していると。

そう言えば、精霊はどうしたのでしょうか?
最近……、あの日から、姿を見かけない。
キョロキョロと、辺りを少し見てしまった。
ソレがいけなかったのだろう。
男は、私を殴った。
殴る事は、日常茶飯事になり、頬に手を当て土下座し謝る。
「ふっ、教育の甲斐があったな。」
顔は、許しがあるまで上げてはならない。下げた頭を、男は上からグリグリと踏みつけた。

「なにを探してる?」
フルフルと否定しようとしたが、踏みつけられてて出来なかった。
「……ふっ、馬鹿が」
さらに強くグリグリと踏みつけられる。
流石に痛みが……
「……っ、……くぅ、や…やめ……おねが」
「アッハハハ」

足が離された。

安堵した……その瞬間に走った激痛は、勢いよく降ろされた足が頭に直撃したからでしょう。顔から恐らく血も出ている、鉄の匂いがしますから。
私は、……精霊にも見放されたのかな……
涙が頬を伝う。

実際は、彼女の首と手首、足首に付けられたリング型の魔道具が原因である。
精霊避けの魔法が施された、特別な魔道具。
一つだけでも、かなりの効果を発揮するのに、合計5つ付けられている。
それだけ、彼女の愛し子の力は強いのだ。
この事を知ってるのは、コレを持ってきた謎の女と、彼女を痛め付けてきた男達だけだ。


「良いか?何時までも夢見てんじゃねぇよ。新しいご主人様に可愛がってもらえ!」
ギャハハハハ
「来いっ!」
髪を引っ張り、引きずりながら、階段を登っていく男。
あの日から、外に出た事などありませんでした。
ずっと地下で過ごして来たから。
小屋の外に出て、鬱蒼とした森の中に馬車が止まっている。
手足を縛られ、馬車に詰め込まれる。
男達も馬車に乗り込み、走り出した。

ガタガタ、ガタガタ
森を抜け、さらに走れば道が砂だけになる。
砂漠地帯に入ったのでしょう。
砂塵が舞い踊る。

……


(砂漠の国……1度だけ、訪れたことがあります。陛下は、褐色の肌をして銀髪で、ガタイが良くて…)
挨拶の為、数分話しただけの私の事など、忘れているでしょうね。
(それに、今の私は奴隷……会った所で名乗る事など出来はしません)

馬車は、止まる事なく走っていく。
途中、商人の一団と遭遇したのだろう、話し声が、微かに聴こえてくる。

「__、_最近物騒でねぇ」
「ここいらも、魔獣が___ 」
「_____、気を付けなさいね」

その時……悲鳴が聞こえた。
遠くの方で、誰かが叫んでる。
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