死に場所を探す悪役令嬢は、討伐隊の隊長に愛されました(R15)

紫宛

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第3話 森に住まう魔獣

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翌日、日が昇る前に牢の鉄棒を叩く音で目が覚めた。それは、ガンガンという強い音ではなく、カンカンという気を使ったような音でした。

「あ、お目覚めになりましたか?」

私が地面から起き上がると、牢番の方が声をかけてくれました。食事や水桶を専用の出入り口から入れられ……

「ゆっくり、準備して下さいね。必要なものがあったら言って下さい!」
「……」

優しい言葉をかけてくれました。
私は彼に「ありがとう」と口を動かしました。声は出ませんが……

桶の中は冷たく綺麗な水で溢れ、目を覚ますには丁度良かった。今までは、侍女がしてくれた事も今後は一人……

お城の地下では食事は出ず、水は濁っていたのに……ここでは、綺麗な水と温かい食事。

その後、牢番の方とレヴィン様が来て、女性用の騎士服を持ってきてくれました。

「…………?」

(私が着てもいいのですか?)

服を指さし、自分を指さし頭を傾げると、レヴィン様は笑顔で頷いてくれました。

「その格好では、戦えません。いま、鎖を外しますね」

そう言って鎖を外すと、
レヴィン様は、外に居るから着替えたら知らせて欲しいと言って出て行った。

流石にレヴィン様を待たせる訳にはいかないでしょうから、急いで着替えましたが……服のサイズが、調度良い。

どうして、分かったのでしょうか?



「…………」

外に出て、準備が出来た事を視線で伝える。

「良かった、サイズは問題なさそうですね」

私は頷く。

「では、行きましょうか」
「……?」

あれ?鎖は良いのでしょうか?
逃げられないように、両手と両足には鎖で繋ぐのが規則だったはずです。
戦いにくいですが、私は基本魔道なので問題ありません。

「……鎖は……後で、付けさせて頂きます……」
「……」

なんで後なのか分かりませんが、私は取り敢えず頷く事にしました。罪人の私が知るべきでは無いでしょうから…

階段を上って砦の中を移動し、ヴェイグ様の執務室に入った。なぜ執務室なのか、すぐに分かりました。ヴェイグ様の手に鎖が握られていましたから…

「すまん、ミナージュ殿」

そう言って謝罪しながら、ヴェイグ様は冷たく重い鎖を私の両手両足に付けていきました。

その顔は、酷く辛く悲しそうで……後ろを振り返るとレヴィン様も、2人の副官と思しき方々も皆一様にヴェイグ様と同じ表情をしていました。

どうして、そんな表情をするのか理解出来ません。
私は罪人だと、この国だけじゃなく、各国にも伝えられているでしょうに。


鎖を取り付けたヴェイグ様は、私を連れて外に出ました。

外には既に、多くの人が集まっていた……


 聖女アイリス様とククルト様と腕利きの騎士数名、そして私が参加するプロキオン王国。
 ヴェイグ様と騎士団長様、そして多くの騎士様が参加するアルクトゥルス王国。
 レヴィン様と魔道士団長様、そして攻撃や回復、補助に長けた魔道士が参加するアヴィオール王国。
 鳥と心を通わし、鳥の扱いに長けたアルタイル公国。
 海に浮かぶ孤島から、船の扱いに長けたカノープス公国。
他にも、各国を旅する冒険者や傭兵が多く参加している。

皆様の視線が私に集中するけれど、ククルト様達のように私を蔑む視線は多くは無かった。寧ろ、先程のヴェイグ様達の表情や視線に似た感じがしました。

「皆の者、良く集まってくれた。本日から、各国を周りながら魔獣の討伐を開始する!しかし!無茶や無謀な事はするな!連携を取りながら、各個撃破するよう心掛けろ。良いな!」
「はっ!」

ヴェイグ様の言葉に、その場に集まった者達がしっかりと返事をする。もちろん私も、頷きました。
……ただ、私はヴェイグ様の言葉に反し、無茶も無謀もみんなの為なら惜しみなく発揮させて頂きますが…

「初めて参加する者は知らんだろうが、討伐隊は死人も多く出る危険な仕事だ!敵わないと判断したなら、逃げる事も視野に入れろ!死ぬ事は、名誉では無いことを知れ!」

(死ぬ事は、名誉では無い……)

名誉では無いかもしれないけれど、私はそれによって許される。聖女にした嫌がらせは、それだけ重罪なのだから……

「今回は、プロキオン王国の森に住まう、キマイラが討伐対象だ!主力部隊は2チーム。前もってリストは張り出しておいたから、別れてくれ。既に被害が出ている、心してかかれ!」
「はっ!」

私は、ヴェイグ様と同じチームです。
私は討伐に強制参加です、監視がしやすいようにヴェイグ様の部隊に配属されたんだと思います。

「ちょっと!どうして、私たちはレヴィン様の部隊なんですか?!危険な前線部隊の方が回復を必要としてると思うんですけどっ?!」

レヴィン様のチームから、声が上がりました。
聖女アイリス様です。

きっと、ヴェイグ様と一緒に行きたいのと、私が死ぬのを見たいんだと思います。

「そうだ、後方なんて……俺様の力が発揮できないじゃないか!」
「万が一にも、聖女様に傷をつける訳には行きませんから。それに、ククルト様は聖女様の護衛でしょう。聖女様から離れるのは得策ではありませんよ」
「でもっ!」
「ダメ、です」

レヴィン様は笑顔で、アイリス様の言葉を却下しました。討伐は、遊びではありません。
1人の意見を聞いて、連携に支障をきたせば全員の命に関わります。

「レヴィン、後ろは任せたぞ」
「ええ、分かっています」

ヴェイグ様の号令で、私達は森に入って行きました。

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