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第6話 ヴェイグの想い(ヴェイグ視点)
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プロキオン王国での最初の討伐は、森の奥に住むキマイラと決まった。奴らは決まった住処を作らず、食料を求めて移動するタイプの魔獣だ。だが必ず、ある条件の村の近くの森に住む事が判明している。
それは……食料となる人間が住んでいて更に、守る者が居ない村を奴らは狙っている。守る者とは、冒険者や騎士と言った者たちのことだ。
プロキオン王国には、冒険者や傭兵は長く留まらず、騎士を各村や町に派遣する事も無い。聖女の力に頼り過ぎているのだ……
だが、最近魔獣が活発になってきている。
聖女によって保たれ続けた平和は、何故か終わりを迎えていた……聖女が居るにも関わらず、だ。
故に、我がアルクトゥルス王国では、アイリスなる少女は偽物では無いか?という意見がではじめていた。
「レヴィン、キマイラ討伐のメンバーだが……」
「承知しておりますよ。クソ共は、私が仕方なく引き受けましょう。ええ、仕方なく」
ハハ、笑ってはいるが、滅茶苦茶怒ってやがるな。当然だよな、ミナージュ殿に対するあの態度みたら……
思い出すのは、先程の地下牢での出来事だ。
数時間前、俺はレヴィンと共にミナージュ殿が連れてかれた地下牢に行った。本来なら、地下牢に入れさせる気は無かったのだ……俺達は。
王城での話の前から、ミナージュ殿を討伐隊に参加させる旨は聞かされていたから…。各砦に連絡し、専用の部屋を用意していた……が、王城での話でクソ聖女が討伐に参加すると言い出しやがった。そして、クソ王子も付いてくる……と。
だから、用意していた部屋はクソ聖女に使われ隣の部屋はクソ王子が使うことになったのだ。
……その事を、ミナージュ殿に伝えに地下牢に行ったのだ。彼女は、喉を焼かれ何も話せなくなっていた。普通、犯罪者とはいえ高位貴族の喉を焼くなど非道な扱いではないか?
まるで……自分達に不利な発言をさせないよう、ミナージュ殿の口を封じた…としか思えない。
いま、仲間に命じプロキオンの内政を調査しているが……十中八九、口封じだろうと俺達は確信している。
全く……痛々しくて見ていられん。
神はなぜ、彼女にこのような試練を与えたのだろうか…何故あの女を聖女に選んだのだっ!
地下牢に入れた事、鎖で繋ぐ様なことをしてしまった事、何度謝罪しても許される行為では無いっ!!
俺は、なんて無力なんだ……
プロキオンは、聖女を有している国で俺達はプロキオンには逆らえん。だが、ミナージュ殿にこんな仕打ち……くそぉっ!
なのに、彼女は
『___この命、捨て駒にでもお使い下さい』
だと?!
既に生きる事を諦めた瞳……生気の宿っていないその瞳は、俺たちの為に使ってこそ意味があるのだと、彼女は言いやがった。
そんな筈はない!
俺達の為にその命を散らしたら、俺達は一生自分を許すことは無いだろう。聖女を殺しても、プロキオンを滅ぼしても、自ら命を絶ってもっ!許せる筈がないっ
解放出来ない辛さを、俺もレヴィンも、多くの仲間達もが感じている事だろう。
そんな時だ、奴らが来たのは……
ここには、誰も通すなと言ったのに、よりによって何で奴らが顔を出すんだ?!
ミナージュ殿を追い詰めた癖に、謝罪だと?頭がおかしいんじゃないか?!王子のクソ野郎は、ミナージュ殿の喉を焼いた張本人だというのに、馬鹿にした発言。
なんで、こんな奴が王族なんだよ。
虫唾が走る……!
『貴様が、無様に死ぬ瞬間を楽しみにしている』だと?!
ふざけるな!死ぬのは、貴様らの方だ!と言いたかったが……今はまだ、言えない。
聖女信仰が強いこの国で聖女を害せば、ミナージュ殿を助けるどころか俺達もただじゃすまない。そうなれば、ただの無駄死にだ……ミナージュ殿だけでも助かるなら、やるがな。
(はぁ。聖女の能力も、本物だしな……偽物であれば事は簡単なのだがな)
「そうそう、ヴェイグ。地下牢だけど、どうしましょうか……ベッドと暖かい布団は、当然必要不可欠。それから、私の信頼する女性魔道士を2人ほど見繕っておきましたよ。キマイラ討伐後になりますが……ミナージュ様の世話をする様命じておきました」
「助かる。俺の国からは男しか連れて来てないからな…プロキオンは信用出来ないし、他の国の事情が分からない今は、お前に頼るしかない」
アルタイルにカノープス、アケルナルの傭兵……
彼らが、ミナージュ殿にどのような感情を持ってるか調べる必要がある。
翌日、プロキオンの森にキマイラ討伐にやってきた。だが、いくら奥に進んでも……キマイラも配下と思しき魔獣も一切出てこなかった。
レヴィンに連絡を取り、砦にいる魔道士に連絡を取らせ探索魔法を使って貰った。こういう時、直ぐに探索魔法が使えないのは痛い所だ。
朝の段階なら、まだ活動時間じゃないはずなんだがな……!
そして、レヴィンから来た連絡に戦慄した。
既に近くの村に移動を開始したらしい……!
今から急いで、間に合うか?!
いや、間に合わせるしかないっ!!
皆に状況を伝えキマイラを追いかけようとした、その時だった……
「…………」
「なっ?!」
彼女が、足元に手を当て何やら魔法をかけているのを見たのは!
(ダメだっ)
そうして、俺と目が合うと頷き駆けて行ってしまった。
「待てっ!ミナージュっ!」
俺が叫ぶように呼んでも、彼女の足が止まることは無かった。だから、彼女の鎖の音を頼りに全力で走ったさ。同じように討伐隊のメンバーも、焦った様な顔をして全力で足を動かし走っていた。
いま、俺達の意識が重なったのを理解した。
全員の思いは、同じだった。
『ミナージュを、死なせたくない』
木々の間をすり抜けて、彼女の走った方に向かって走り続ける。既に鎖の音は聞こえない。女性とはいえ、魔法で強化した足に追いつけるはずは無い。
それでも、間に合わせるんだ。
例え彼女が、死を望んでいても俺は望まない。
必ず、間に合わせる!守ってみせる!
それは……食料となる人間が住んでいて更に、守る者が居ない村を奴らは狙っている。守る者とは、冒険者や騎士と言った者たちのことだ。
プロキオン王国には、冒険者や傭兵は長く留まらず、騎士を各村や町に派遣する事も無い。聖女の力に頼り過ぎているのだ……
だが、最近魔獣が活発になってきている。
聖女によって保たれ続けた平和は、何故か終わりを迎えていた……聖女が居るにも関わらず、だ。
故に、我がアルクトゥルス王国では、アイリスなる少女は偽物では無いか?という意見がではじめていた。
「レヴィン、キマイラ討伐のメンバーだが……」
「承知しておりますよ。クソ共は、私が仕方なく引き受けましょう。ええ、仕方なく」
ハハ、笑ってはいるが、滅茶苦茶怒ってやがるな。当然だよな、ミナージュ殿に対するあの態度みたら……
思い出すのは、先程の地下牢での出来事だ。
数時間前、俺はレヴィンと共にミナージュ殿が連れてかれた地下牢に行った。本来なら、地下牢に入れさせる気は無かったのだ……俺達は。
王城での話の前から、ミナージュ殿を討伐隊に参加させる旨は聞かされていたから…。各砦に連絡し、専用の部屋を用意していた……が、王城での話でクソ聖女が討伐に参加すると言い出しやがった。そして、クソ王子も付いてくる……と。
だから、用意していた部屋はクソ聖女に使われ隣の部屋はクソ王子が使うことになったのだ。
……その事を、ミナージュ殿に伝えに地下牢に行ったのだ。彼女は、喉を焼かれ何も話せなくなっていた。普通、犯罪者とはいえ高位貴族の喉を焼くなど非道な扱いではないか?
まるで……自分達に不利な発言をさせないよう、ミナージュ殿の口を封じた…としか思えない。
いま、仲間に命じプロキオンの内政を調査しているが……十中八九、口封じだろうと俺達は確信している。
全く……痛々しくて見ていられん。
神はなぜ、彼女にこのような試練を与えたのだろうか…何故あの女を聖女に選んだのだっ!
地下牢に入れた事、鎖で繋ぐ様なことをしてしまった事、何度謝罪しても許される行為では無いっ!!
俺は、なんて無力なんだ……
プロキオンは、聖女を有している国で俺達はプロキオンには逆らえん。だが、ミナージュ殿にこんな仕打ち……くそぉっ!
なのに、彼女は
『___この命、捨て駒にでもお使い下さい』
だと?!
既に生きる事を諦めた瞳……生気の宿っていないその瞳は、俺たちの為に使ってこそ意味があるのだと、彼女は言いやがった。
そんな筈はない!
俺達の為にその命を散らしたら、俺達は一生自分を許すことは無いだろう。聖女を殺しても、プロキオンを滅ぼしても、自ら命を絶ってもっ!許せる筈がないっ
解放出来ない辛さを、俺もレヴィンも、多くの仲間達もが感じている事だろう。
そんな時だ、奴らが来たのは……
ここには、誰も通すなと言ったのに、よりによって何で奴らが顔を出すんだ?!
ミナージュ殿を追い詰めた癖に、謝罪だと?頭がおかしいんじゃないか?!王子のクソ野郎は、ミナージュ殿の喉を焼いた張本人だというのに、馬鹿にした発言。
なんで、こんな奴が王族なんだよ。
虫唾が走る……!
『貴様が、無様に死ぬ瞬間を楽しみにしている』だと?!
ふざけるな!死ぬのは、貴様らの方だ!と言いたかったが……今はまだ、言えない。
聖女信仰が強いこの国で聖女を害せば、ミナージュ殿を助けるどころか俺達もただじゃすまない。そうなれば、ただの無駄死にだ……ミナージュ殿だけでも助かるなら、やるがな。
(はぁ。聖女の能力も、本物だしな……偽物であれば事は簡単なのだがな)
「そうそう、ヴェイグ。地下牢だけど、どうしましょうか……ベッドと暖かい布団は、当然必要不可欠。それから、私の信頼する女性魔道士を2人ほど見繕っておきましたよ。キマイラ討伐後になりますが……ミナージュ様の世話をする様命じておきました」
「助かる。俺の国からは男しか連れて来てないからな…プロキオンは信用出来ないし、他の国の事情が分からない今は、お前に頼るしかない」
アルタイルにカノープス、アケルナルの傭兵……
彼らが、ミナージュ殿にどのような感情を持ってるか調べる必要がある。
翌日、プロキオンの森にキマイラ討伐にやってきた。だが、いくら奥に進んでも……キマイラも配下と思しき魔獣も一切出てこなかった。
レヴィンに連絡を取り、砦にいる魔道士に連絡を取らせ探索魔法を使って貰った。こういう時、直ぐに探索魔法が使えないのは痛い所だ。
朝の段階なら、まだ活動時間じゃないはずなんだがな……!
そして、レヴィンから来た連絡に戦慄した。
既に近くの村に移動を開始したらしい……!
今から急いで、間に合うか?!
いや、間に合わせるしかないっ!!
皆に状況を伝えキマイラを追いかけようとした、その時だった……
「…………」
「なっ?!」
彼女が、足元に手を当て何やら魔法をかけているのを見たのは!
(ダメだっ)
そうして、俺と目が合うと頷き駆けて行ってしまった。
「待てっ!ミナージュっ!」
俺が叫ぶように呼んでも、彼女の足が止まることは無かった。だから、彼女の鎖の音を頼りに全力で走ったさ。同じように討伐隊のメンバーも、焦った様な顔をして全力で足を動かし走っていた。
いま、俺達の意識が重なったのを理解した。
全員の思いは、同じだった。
『ミナージュを、死なせたくない』
木々の間をすり抜けて、彼女の走った方に向かって走り続ける。既に鎖の音は聞こえない。女性とはいえ、魔法で強化した足に追いつけるはずは無い。
それでも、間に合わせるんだ。
例え彼女が、死を望んでいても俺は望まない。
必ず、間に合わせる!守ってみせる!
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