植物の巫女は虐げられ追放されるも、実は彼女の知らない能力があった

紫宛

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第3話 ラ・メール国

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お金は無いから歩いて隣の国に渡って、そこから船に乗りたいのだけど……



あのね、私は大地に触れれば植物の気配を探る事が出来るの……西の方……
強い水の気配がするさらに向こう側、植物の気配がとても薄い地域がある。今私は、その場所を目指してるの。

実りが豊かな国は、私を必要としないだろうから……だから、どうせなら私の力を必要としてくれる所に行きたいと思ったのよ。

だけど、船に乗るのもお金が必要だから……どうにかして稼がないと…… 

私に出来ることと言ったら……植物を育てること?
力を使ったことは無いけど、使い方は分かってる。

私は、服のポケットからいくつかの種を取り出す。この種は、プフランチェを出る時にこっそりと教会から盗み出したもの。

私が、花壇や畑で育てた植物の種たち。

その中でも、売れそうな希少な薬草の種を地面に埋めて、私は力を使った。埋めた薬草の種が元気に育つように、地面に手を着いて力を送ると……

種から芽が出て、一気に育つ。
本当は、一気に育てない方が良いのだけど……今回は仕方ないかな。品質は少し下がってしまうけど、それでも希少な薬草であることは間違いないし、売れるはず。

プフランチェを出たことがないから知らなかったのだけど……隣の国はラ・メール国と言って、海で交易する小国なんだそう……曖昧なのは、書物でしか知らないから。国から出たことがないもの、仕方ない。

海というのは、大きい水溜りだと書物に書いてありました。本物を見るのは初めてです。どれだけ大きい水溜りなのかな?端が見えないって書いてあったけれど、本当かなぁ?



ラ・メール国の港町バハル

「いらっしゃい!いいお魚入ってるよ!買っていきなよ」
「奥さん!活きのいいのが入ってるよ!見ていきな!」
「そっちの若いの!魚食べな!大きくならないよ!」

活気のいい声が、町の中を飛び交っている。
体格のいいおじさんや、少し太ったおばさんが行き交う人々に声をかけて呼び止めている。

私は、その人たちを見ながら町の中を進む……

……

…………

………………

薬草……どこに売ればいいんだろ?

町の人に声かけようにも、店の人の声の方が大きくて私の声はかき消されてしまう。

「困りました、どこに行けば良いのかな」
「どうした?あまりキョロキョロしてる拐かされるぞ?」

でも、そんな中私に声をかけてくれた人がいたんです。振り向いて確認したら、褐色の肌で背が高くて私と同じ白い髪をした男の人……

目の色は、綺麗な赤……

「拐かされる?」

って、どういう意味?

「……?拐かすの意味を知らないのか?」
「すみません、勉強不足で……」
「いや、いい。それより、どうした?何か探してるようだったが?」
「薬草を売れる所を探してたんです」
「なに?薬草だと?!」

男の人は、とても焦ったような興奮してるような声で聞いてきたから、私は1歩引いてしまう。でも、お兄さんは気付いてないみたい。私が引いた分、1歩詰めてきたから。無意識なのかな?

「これなんですけど、売れるところ知りませんか?」

服の中にしまっていた薬草を取りだして、お兄さんに見せる。袋は持ってないからなのだけど、お兄さん後ろ向いちゃった。

どうして?

??

「おま、町の中で服に手を入れるな!」
「ご、ごめんなさい?」

よく分からないけど、怒られたので一応謝っておきます。

「はぁ。おい、薬草、見せてみろ」
「はい、これなんですけど……」
「クラル草か……かなり希少だな」

クラル草は、回復薬の材料になる薬草で、プフランチェでしか取れない希少な薬草です。クラル草はあまり出回らないので、ハイレン草が代用して使われると書物に書いてありました。

ハイレン草も回復薬の材料になりますが、効果はクラル草よりもだいぶ劣るそうです。

「それから、レニティブ草、フェブレ草です」
「鎮痛と熱病に関する薬草だな」
「はい、どちらもプフランチェで取れる薬草です」
「それをなんでお前が持ってる?」

……あ、盗んだと思われてる?

「わ、私、植物の巫女なんです!元ですけど……盗んではいません!」

元の部分だけ声が小さくなってしまった。仕方ない。うん、仕方ない……

「植物の……」
「はい、船に乗って西の国に行こうと思ってて……その、お金が必要で……」
「……シャムス・サハラーァ」

さっきまでの興奮とは違って、急に真剣な顔で悩み始めてしまったお兄さん。

シャムス・サハラーァ国
それは、植物が育たない砂だらけの国……と書物に書いてあり、気になった私はその国に行くことにしたんです。もしかしたら、必要とされるかも?と思って。

「……俺は」
「?」

お兄さんの真剣な目が、私を見つめています。

「海を渡った先、シャムス・サハラーァ国の者だ」
「!!」
「お前が行きたいと言うなら、連れてってやってもいい。その薬草を俺に売ってくれるなら」
「良いですよ?それに、お金は入りません」
「そうか……なに?」
「に、西の国に連れて行ってくれるなら、お金は入りません。必要なら差し上げます」

西の国に連れて行ってくれるなら、わざわざ売る必要無いものね!船のお金を作りたくて薬草を育てただけだし。

「いや、こんな希少な薬草を貰うんだ。無償なんて有り得ないだろ」
「無償じゃないですよ?だって、タダで船に乗せてもらうんですから!」
「……はは、そうだな」

お兄さんは、申し訳なさそうな顔から笑顔に変わって自分の前髪をかきあげました。その仕草を見た周りの女の人達が悲鳴をあげる。

そういえば……
キルシュ様が同じ仕草をした時も、仲間の巫女達が悲鳴をあげてたなぁと私は呑気に思っていました。

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