ここは西の果て 恋する魔法姫は兄を身代わりに海を越える

原李子

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第九章 女子的視点

ここは西の果て 恋する魔法姫は兄を身代わりに海を越える

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 「…。」お話は聞いた。なんとなくウォール王国に連れて行ってしまえば、危険なこともないし、地位や仕事も用意できる。…そう、どうにかなると、思っていた。けれど、甘くない。彼はここで、やるべきこと、立ち向かうべき物がある。とてもじゃないが、来てもらえそうにない。
 「私がもっと…。」魅力で骨抜き?とかできていたらなあと。現実は、兄様の方が美人だ。客観的に。
 淡い金髪、広い額、知的な顔立ち。抜けるように白い肌。そして、豊かな胸。自分の胸部を見て、複雑な気持ちになる。兄様だと、ひょっとしたら、骨抜きに出来るのかもしれない。兄様の友人も、複雑みたいだし。
 『本は手に入ったか?』と兄様の声がする。
 『…兄様。兄様はエルンストさんのお知り合いだったんですか?』つい責めるように言う。
 『…まあ。彼はネディ自治領の代表の一人だよ。お婿さんには難しいかもしれないよ。だから、もう、諦めたらどうだ?大体君と彼とじゃ違いすぎるし。彼も、ほら、大人の女性の方が色々、君みたいな手を出すのも憚られるようなお嬢さんよりはいいと思うし。』兄様は一息に言う。兄様は正直だ。しかしそれが美徳と言いたくない。
 『で、本は?』と能天気に聞いてくる。
 『私が、エルンストさんを連れていく時に一緒に持って帰ります。』
 『そんな!』それ以上言ったら送るまい、とか思った。

 「エマ先生。お食事をお持ちしました。」とマリーさんが来た。
 「ありがとうございます。本も、エルンストさんにいただきました。」
 「なんの本なんですか?」と聞かれる。…相手の人いるんだっけ。可愛いし、優しいし、こんな女の子なら良かったかも。
 「これ。内容は、最近北の地域で起こっている宗教論争の意見書みたいな。」
 「はー。さすがポター先生。難しいもの読むんですね。」と感心したように言う。と、言うか。持ち出しが出来る本なんだろうか。神聖国の密偵が、手紙に目を光らせている。普通に送ったりしたら、面倒なことになったはずだ。兄様の蔵書には、そういうのが多い。…頭はいいはずなのに鈍い。しかし。思わずじっと、マリーさんをみてしまう。
 「どうしたんですか。」
 「うん。マリーさん、いいお嫁さんになりそうだなとか思って。」
 「ええ?私がですか?彼からは、もっとおしとやかにしろとか言われますけど。」と笑う。うん、可愛い。
 「見る目ないのね。その人。こんなに可愛いのに。ああ私もこのくらい可愛かったらなあ。」 
 「エマ先生は十分魅力的だと思いますけど。すごくきれいだし、頭もいいし。」
 「…でもエルンストさんにとって魅力的ではないと思うわ。子供っぽいし。」
 「そんなことないと思います。…多分」
 「…ありがとうございます。」マリーさんの精一杯は分かる。だから。
 「今は無理でもきっと。」
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