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第十章 別の観点
ここは西の果て 恋する魔法姫は兄を身代わりに海を越える
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神聖国、王宮。
「なんだと。」国王フール二世は、声を荒げる。
先日、遠征した兵は、すべて捕虜になってしまったという。そして、兵に給料を払わせる目的で派遣した者も、一緒に捕まってしまったと。報告している者は、だんだん顔色が悪くなっていく。
「流石に殺されてはいないようですが。」と大臣の一人が言うと、別の者が
「しかし捕虜を取り返す金がない。」と言う。そう、金。
「あちらは、賠償金も支払うように、と言ってきています。彼らが荒らした民家や街道について。」くっ。
なんてことだ。重い沈黙。それを破るように声を上げる者がいる。
「あちらは異教徒と言っても過言ではございますまい。ほれ、このような書物を手に入れましたぞ。このような思想がまかり通っておる場所など滅ぼされても文句は言えますまい。宗教裁判をいたせば、すべてうまくいきましょうぞ。」大司教だ。この度の遠征もこの者の発案だった。言うことは、聖職者の寛大、慈悲とは対極にある。
「そうか。」
「ええ。私にお任せください。」此度のことなど最早欠片も覚えていない。
「…どうか。」
「…あなたの罪は許されました。神はいつもあなたの側に。」
告解を聞く、ずっと。人は、どういった立場であれ、拠り所を求め、己の存在の不確かさを嘆く。そう言って、私を助けてくださった人は、奇跡の具現で。しかし。
「失礼します。こちらを。」差し出されたのは。この世の神を問い直したくなる内容。
「…美味しいですね。」鰊の塩漬けに玉ねぎのみじん切りがのっている。塩が利いていて美味しい。
「でしょう?」どうだ、って感じにエルンストさんは笑う。帰り道に鰊料理の美味しいお店があると言われて一緒にきたのだ。店は、気になっていたが、入りにくかった店だ。色々と。
「こちらもどうぞ。」と。小さな樽を差し出してくる。
「これは…。」
「麦酒です。」いい笑顔だ。仕方ない。「こういくんだ。」「いけいけー。」などと無責任な野次が聞こえる。
「いただきます。」ぐっといった。
「お、姉ちゃんいけるクチだね。」
「まあ飲みねぇ。飲みねぇ。」…樽が増えた。
「今日はごちそうさまでした。」と言うと
「いやー。こちらこそ。楽しかったですよ。」また行きましょうと言われる。エルンストさんは最近色々連れていってくれる。ウォール風の料理屋とか、香辛料の利いた料理を出す店、露天の立ち並ぶ通りとか。この間は仕立て屋に連れていかれた。「…学生に見せたくない。」とかつぶやいて、「これは私との時だけ。」と、さっぱりしたデザインのワンピースを仕立てて贈ってくれた。今着ているのもそれだ。
「しかし、お強いですね。ポター氏は、一杯でつぶれていたけれど。」
「…そうですか。」弱い風にしとけば良かった。うっかり飲み比べで勝ってしまい、猛者に顔を覚えられてしまった。次こそ勝つ、とか言っておごってもらった。
「…あなたは不思議な人ですね。姫君なのに、気取ったところもなくて。こんな私のような者に、慕っていたとおっしゃるし。」
「私のようなとか、言わないでください。私は、どうしたらあなたに、良く見られるか、いまだに分からないですし。今日もうっかり飲んでしまったと思っているんですけれど。」…酔っていたんだろう。ぽろっと。
「…そのままで十分ですよ。」
ふと。エルンストさんの顔が近い。目を閉じると唇に重なる気配がして。そっと深くなった。
「なんだと。」国王フール二世は、声を荒げる。
先日、遠征した兵は、すべて捕虜になってしまったという。そして、兵に給料を払わせる目的で派遣した者も、一緒に捕まってしまったと。報告している者は、だんだん顔色が悪くなっていく。
「流石に殺されてはいないようですが。」と大臣の一人が言うと、別の者が
「しかし捕虜を取り返す金がない。」と言う。そう、金。
「あちらは、賠償金も支払うように、と言ってきています。彼らが荒らした民家や街道について。」くっ。
なんてことだ。重い沈黙。それを破るように声を上げる者がいる。
「あちらは異教徒と言っても過言ではございますまい。ほれ、このような書物を手に入れましたぞ。このような思想がまかり通っておる場所など滅ぼされても文句は言えますまい。宗教裁判をいたせば、すべてうまくいきましょうぞ。」大司教だ。この度の遠征もこの者の発案だった。言うことは、聖職者の寛大、慈悲とは対極にある。
「そうか。」
「ええ。私にお任せください。」此度のことなど最早欠片も覚えていない。
「…どうか。」
「…あなたの罪は許されました。神はいつもあなたの側に。」
告解を聞く、ずっと。人は、どういった立場であれ、拠り所を求め、己の存在の不確かさを嘆く。そう言って、私を助けてくださった人は、奇跡の具現で。しかし。
「失礼します。こちらを。」差し出されたのは。この世の神を問い直したくなる内容。
「…美味しいですね。」鰊の塩漬けに玉ねぎのみじん切りがのっている。塩が利いていて美味しい。
「でしょう?」どうだ、って感じにエルンストさんは笑う。帰り道に鰊料理の美味しいお店があると言われて一緒にきたのだ。店は、気になっていたが、入りにくかった店だ。色々と。
「こちらもどうぞ。」と。小さな樽を差し出してくる。
「これは…。」
「麦酒です。」いい笑顔だ。仕方ない。「こういくんだ。」「いけいけー。」などと無責任な野次が聞こえる。
「いただきます。」ぐっといった。
「お、姉ちゃんいけるクチだね。」
「まあ飲みねぇ。飲みねぇ。」…樽が増えた。
「今日はごちそうさまでした。」と言うと
「いやー。こちらこそ。楽しかったですよ。」また行きましょうと言われる。エルンストさんは最近色々連れていってくれる。ウォール風の料理屋とか、香辛料の利いた料理を出す店、露天の立ち並ぶ通りとか。この間は仕立て屋に連れていかれた。「…学生に見せたくない。」とかつぶやいて、「これは私との時だけ。」と、さっぱりしたデザインのワンピースを仕立てて贈ってくれた。今着ているのもそれだ。
「しかし、お強いですね。ポター氏は、一杯でつぶれていたけれど。」
「…そうですか。」弱い風にしとけば良かった。うっかり飲み比べで勝ってしまい、猛者に顔を覚えられてしまった。次こそ勝つ、とか言っておごってもらった。
「…あなたは不思議な人ですね。姫君なのに、気取ったところもなくて。こんな私のような者に、慕っていたとおっしゃるし。」
「私のようなとか、言わないでください。私は、どうしたらあなたに、良く見られるか、いまだに分からないですし。今日もうっかり飲んでしまったと思っているんですけれど。」…酔っていたんだろう。ぽろっと。
「…そのままで十分ですよ。」
ふと。エルンストさんの顔が近い。目を閉じると唇に重なる気配がして。そっと深くなった。
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