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1話 白黒の世界
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視界から喜びを感じることがなかった。
何に例えればいいだろうか。
現実味がなくてぼやけているような感覚…目が悪い人のそれよりも酷いような視界だろうか。
物には白黒で色がついておりどんな物にも鮮やかさがない。全て…新聞の中の世界のようになってしまったようだ。
でも…それを知っている人間はほとんどいない。
なぜなら僕達は生まれた時から白と黒の世界だけで生きていたからだ。
昔どこかで聞いたことがある。
洞窟で実験を行った科学者がいた。
人間を洞窟に閉じ込めて三段階に人を配置した。
一人目は一番奥で松明の光しかない世界。
二人目は奥の松明の光と一人目の影がある世界。
三人目は松明の光と二人の影を見ている世界。
三人目は科学者によって外の世界を見せられた。
三人目は奥の二人に世界の真実を伝えた。
世界はこんなにも広いと光と影だけの世界ではないと…。
声だけで伝えた。
しかし、奥の二人は信じなかった。
なぜなら彼らの世界は松明の光だけの世界と影のある世界だったからだ。
見たこともないものを信じることすらなかった。
つまり実験として、人は見たものすべてが世界であると認識する。
僕らの世界に置き換えると色の無い世界は当たり前であり、当然のことなのだ。
そして、僕も今まで奥の二人と同じ存在だった。
少年は目が死んでいた。いつも見ている景色を眺めながら電車に揺られていた。
眼鏡が光で白く光る。建物も人も大体が黒くある。
光が白くてそれがあたりまえ。
電車の揺れにそっと頭が傾いた。
駅に到着し、電車から降りる。
ため息をつきながら改札口へと消えていく。
街の高層ビルが少年の心を押し潰す。
空を見上げた。
灰色の空に一人高々と飛ぶ見たこともない色のワンピースを着た少女がいた。
空を飛ぶ少女が、こちらを見ているような感じがした。
少年は大きく目を見開く。
そして何かを感じて走り出した。
少女が、着陸したビルの屋上に駆け上がる。
階段を一段一段登り、扉を開けた。
少女は風でワンピースが揺れている。
ワンピースは白と何か他の色(?)でできたデザインになっていた。
「そ…その色はなんですか?」
少年は目を輝かせて聞いた。
少女はゆっくりと歩いてくる。
「ふーん。これを色と認識してるんだ。君面白いね。名前は?」
少女は首を傾げている。
「僕はシン。君は?」
「私はね…アカ。」
少女は前髪を整えていた。
「うん。じゃあシン君。ここは危ないからすぐに逃げたほうがいいよ。」
シンはキョトンとする。
「一体何のことで…」
言葉の途中でビルが揺れる。
シンは地面に倒れる。
見上げると少女の近くに化け物がいた。
「うわぁぁ!なんだあれは!?」
少女はため息を吐いた。
「本当にしつこいなぁ。せっかく楽しいお喋りをしていたのに…。」
右手から赤色のナイフが現れる。
背中が曲がった化け物は鋭い爪で襲いかかる。
静かに斜めに切り込みを入れ、赤色の薔薇が飛び出る。
薔薇が噴水のように飛び出し、化け物は倒れた。
「こんなものかな。」
その姿はとても美しかった。地面に広がる薔薇と白と赤色のワンピースがとても画になる。
「今のは…一体…。」
シンは…怯えていた。
「今のは…うーん。なんて言えば良いかな。この色を狙う生き物?って言うのかな。まぁ…あなたじゃ初めて遭遇する化け物だと思うけど…結構いるんだよね。困っているんだよね。」
指で自分の頬をあてて話すアカ。
「そんな…こと今はどうでもいいです!僕は感動しました!」
シンの言葉に驚くアカ。
「えっと…そんなに輝いた目で見られると恥ずかしいじゃないか。」
アカは少し恥ずかしそうにシンを見る。
「この世の中にこんなにも美しいものがあったなんて僕…知りませんでした!」
少年は立ち上がり少女の姿に惚れ惚れとしている。
「私達は世界の誰も知らない色を集めているの。白と黒しかない世界が嫌いなの。いつか色で世界を救いたいと考えているんだけどね。」
赤色のナイフを息でフッと消す。
シンは眼鏡を勢いよく外す。
「僕にも協力させて下さい!一緒に行きたい!本当の世界を見たい!」
少年の願いが切実に伝わっていく。
少女は笑う。
「…いいよ!……君!面白いねッ!気に入った。」
少女はワンピースを指差す。
「この色の名前を教えてあげる。赤色って言うんだよ。名前と同じなのは私がこの名前をパクったからなんだ。赤はよく情熱的と表現されることがあるそうだ。赤色は色の中でも重要な色なんだ。って言ってもあなたじゃわからないよね。おっとかなり一人で喋ってしまった気がするよ。………何か質問は?」
少年は質問したい事を一気に伝える。
「1つ目は何色ぐらいあるんですか?」
「うーん。700万くらい?」
凄く適当な答えを聞いた気がするが次を質問する。
「2つ目はなぜその赤色を知っているんですか?」
「そうだね。(理)ってのに契約したら赤を貰ったの……で能力として元々赤色だった物を自由に操る能力を得たってわけ。だから赤色の服を着ていれば空も飛べる。赤色のものなら手元に取り出すこともできる。って感じ。」
一気に現実のないことを言われた。まぁいいや。
「じゃあ最後に…先程(私達)って言いましたよね。」
「そうだね。私達はグループで活動していてね。
COLORって言うんだよ!かっこいいでしょ!まぁ…3人しかまだいないんだけどね…。」
シンは覚悟を決めた。
「グループに入らせてください。」
「いいよ!」
アカはすぐに返事をする。
「そんな簡単に…。」
シンが少し困惑する。
「私がいいんだから大丈夫だよ。君といると退屈しなそうな気がするんだ。よろしくね。」
アカは手を差し出した。
シンは固く手を握った。
「じゃあ案内するからついてきてね。」
ビルの屋上の扉はゆっくりと閉められた。
何に例えればいいだろうか。
現実味がなくてぼやけているような感覚…目が悪い人のそれよりも酷いような視界だろうか。
物には白黒で色がついておりどんな物にも鮮やかさがない。全て…新聞の中の世界のようになってしまったようだ。
でも…それを知っている人間はほとんどいない。
なぜなら僕達は生まれた時から白と黒の世界だけで生きていたからだ。
昔どこかで聞いたことがある。
洞窟で実験を行った科学者がいた。
人間を洞窟に閉じ込めて三段階に人を配置した。
一人目は一番奥で松明の光しかない世界。
二人目は奥の松明の光と一人目の影がある世界。
三人目は松明の光と二人の影を見ている世界。
三人目は科学者によって外の世界を見せられた。
三人目は奥の二人に世界の真実を伝えた。
世界はこんなにも広いと光と影だけの世界ではないと…。
声だけで伝えた。
しかし、奥の二人は信じなかった。
なぜなら彼らの世界は松明の光だけの世界と影のある世界だったからだ。
見たこともないものを信じることすらなかった。
つまり実験として、人は見たものすべてが世界であると認識する。
僕らの世界に置き換えると色の無い世界は当たり前であり、当然のことなのだ。
そして、僕も今まで奥の二人と同じ存在だった。
少年は目が死んでいた。いつも見ている景色を眺めながら電車に揺られていた。
眼鏡が光で白く光る。建物も人も大体が黒くある。
光が白くてそれがあたりまえ。
電車の揺れにそっと頭が傾いた。
駅に到着し、電車から降りる。
ため息をつきながら改札口へと消えていく。
街の高層ビルが少年の心を押し潰す。
空を見上げた。
灰色の空に一人高々と飛ぶ見たこともない色のワンピースを着た少女がいた。
空を飛ぶ少女が、こちらを見ているような感じがした。
少年は大きく目を見開く。
そして何かを感じて走り出した。
少女が、着陸したビルの屋上に駆け上がる。
階段を一段一段登り、扉を開けた。
少女は風でワンピースが揺れている。
ワンピースは白と何か他の色(?)でできたデザインになっていた。
「そ…その色はなんですか?」
少年は目を輝かせて聞いた。
少女はゆっくりと歩いてくる。
「ふーん。これを色と認識してるんだ。君面白いね。名前は?」
少女は首を傾げている。
「僕はシン。君は?」
「私はね…アカ。」
少女は前髪を整えていた。
「うん。じゃあシン君。ここは危ないからすぐに逃げたほうがいいよ。」
シンはキョトンとする。
「一体何のことで…」
言葉の途中でビルが揺れる。
シンは地面に倒れる。
見上げると少女の近くに化け物がいた。
「うわぁぁ!なんだあれは!?」
少女はため息を吐いた。
「本当にしつこいなぁ。せっかく楽しいお喋りをしていたのに…。」
右手から赤色のナイフが現れる。
背中が曲がった化け物は鋭い爪で襲いかかる。
静かに斜めに切り込みを入れ、赤色の薔薇が飛び出る。
薔薇が噴水のように飛び出し、化け物は倒れた。
「こんなものかな。」
その姿はとても美しかった。地面に広がる薔薇と白と赤色のワンピースがとても画になる。
「今のは…一体…。」
シンは…怯えていた。
「今のは…うーん。なんて言えば良いかな。この色を狙う生き物?って言うのかな。まぁ…あなたじゃ初めて遭遇する化け物だと思うけど…結構いるんだよね。困っているんだよね。」
指で自分の頬をあてて話すアカ。
「そんな…こと今はどうでもいいです!僕は感動しました!」
シンの言葉に驚くアカ。
「えっと…そんなに輝いた目で見られると恥ずかしいじゃないか。」
アカは少し恥ずかしそうにシンを見る。
「この世の中にこんなにも美しいものがあったなんて僕…知りませんでした!」
少年は立ち上がり少女の姿に惚れ惚れとしている。
「私達は世界の誰も知らない色を集めているの。白と黒しかない世界が嫌いなの。いつか色で世界を救いたいと考えているんだけどね。」
赤色のナイフを息でフッと消す。
シンは眼鏡を勢いよく外す。
「僕にも協力させて下さい!一緒に行きたい!本当の世界を見たい!」
少年の願いが切実に伝わっていく。
少女は笑う。
「…いいよ!……君!面白いねッ!気に入った。」
少女はワンピースを指差す。
「この色の名前を教えてあげる。赤色って言うんだよ。名前と同じなのは私がこの名前をパクったからなんだ。赤はよく情熱的と表現されることがあるそうだ。赤色は色の中でも重要な色なんだ。って言ってもあなたじゃわからないよね。おっとかなり一人で喋ってしまった気がするよ。………何か質問は?」
少年は質問したい事を一気に伝える。
「1つ目は何色ぐらいあるんですか?」
「うーん。700万くらい?」
凄く適当な答えを聞いた気がするが次を質問する。
「2つ目はなぜその赤色を知っているんですか?」
「そうだね。(理)ってのに契約したら赤を貰ったの……で能力として元々赤色だった物を自由に操る能力を得たってわけ。だから赤色の服を着ていれば空も飛べる。赤色のものなら手元に取り出すこともできる。って感じ。」
一気に現実のないことを言われた。まぁいいや。
「じゃあ最後に…先程(私達)って言いましたよね。」
「そうだね。私達はグループで活動していてね。
COLORって言うんだよ!かっこいいでしょ!まぁ…3人しかまだいないんだけどね…。」
シンは覚悟を決めた。
「グループに入らせてください。」
「いいよ!」
アカはすぐに返事をする。
「そんな簡単に…。」
シンが少し困惑する。
「私がいいんだから大丈夫だよ。君といると退屈しなそうな気がするんだ。よろしくね。」
アカは手を差し出した。
シンは固く手を握った。
「じゃあ案内するからついてきてね。」
ビルの屋上の扉はゆっくりと閉められた。
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