COLOR

アオヤカ

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17話 色彩無き世界を

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あれはどのくらい前のことなのだろうか。
アカは薄れていく意識の中で昔を思い出した。
身寄りのない私は施設で育てられた。
管理官と出会ったのはそこの責任者だったからだ。
他にも多くの子供達がこの施設に入れられていた。
日々、色を見る力を鍛える毎日。怪しい装置などをつけてのトレーニング。私が施設に入れられてから子供達は次々に居なくなった。死亡した説や逃げた説など色々とあるが、教えてもらったことはない。国がこの施設で何かしていたことは確かだ。
しかし、私は酷いことを受けていない。私の仲の良い友人達も酷いことをされた様子は無かった。だからこそ何をしているのかが不明だった。
私はある日を境に視界に異常を起こした。
施設で精密検査を行いそれが色持ちであることが判明した。
視界には赤色の混ざった世界が広がり、赤色の花や血などの特定の物に色がついていた。
そして、私に管理官が話しかけてきたのだ。

「君は色を集める資格がある。世界から色を取り戻す為に君の力を貸してくれないか?」

私はその話に乗った。誰かに必要とされる事が嬉しく感じたからだ。私は施設から離れた。そして、色彩一等官になった。

誰かに呼ばれている………。

全身の痛みが時間が進むたび大きくなる。
目が覚めると瓦礫の中で倒れていた。

「私は……油断したみたいね。」

シンが急いでこちらを向かってくる。

「アカさん……傷が治ってないですよ……。」

アカはその言葉を聞いて自分の身体を見る。
腹には大きな穴が空いており、内臓が損傷している。頭からも出血している。

「こんなことは初めてだよ。………多分、力を酷使しすぎてしまった。再生能力が著しく低下している。死ぬことはないが、このあとの作戦には参加出来ないかもしれないね。彼らを野放しには出来ない。アオ君やミロちゃんと協力して管理官の指示を仰ぎなさい。……………以上よ。」

アカは目を閉じる。ゆっくりと呼吸に集中し始めた。

シンは三佐管理官の元へ向かう。COLORの本部に彼は居るはずだ。道路を走り抜けていると街の様子はパニック状態だった。住民同士で争いが起こってもおかしくない状況だ。
更に追い打ちをかけるように電波ジャックされたテレビ、スマホ大型スクリーンなどが武装集団の放送に切り替わる。

(我々はこの国を変える。人々を機械のように、歯車のように扱うこの社会を破壊する。我々はこの国を許さない。我々はすでに一つの武装組織を壊滅させた。こうなりたくなければ、今すぐに国の指揮権を我々に譲れ!!我々ならこの国の人々を平和に導くことができる。今こそ不満を持つものよ戦え!同士よ!立ち上がれ!!)

自分たちの行動を正当化している演説のようなものが繰り返し伝えられている。街は更に混乱の渦にのまれる。

シンは本部に到着すると中は銃を持つ兵士が多く待機している。

するとアオとミロがシンを見つけてこちらに駆け寄ってくる。

「アカさんは??どうした?」

「それが……力を使い果たして休んでいます。」

アオは走って外に出ようとする。しかし、ミロが近くにあったパイプ椅子を頭に投げつけたことで動きが止まった。

「……あぁ。じゃあ三佐管理官に指示を仰げってことだな?」

「はい……。」

そして、エレベーターから降りてきた三佐は全体に向かって大きな声で注目するように伝えた。

「今、宣言よりも早く奴らが攻撃を開始した。負傷者がすでに出ている。住民も暴徒かしていると情報が入った!A班からC班までは各地区の制圧を行え!D班からG班までは奴らの本部を制圧する。色持ちも一緒に行動しろ!以上!解散。」

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