五人の適合者

アオヤカ

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適合者クロ・マークス

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クロはこの街で生まれた人間だった。元から無口の人間だった。集団の中で空気のように存在感のない人間だった。
しかし、身体能力はどの人間よりも優れていた。
そして…あれと出会った。

クロはバーナードに連れられてとある部屋にいた。
「クロ。これが君を強くする武器だ。」
バーナードが布を外し、武器の姿が現れる。
「…………本当にいいの?」
クロは落ち込んだ顔を見せる。
「私が推薦した人間にそのような言葉は許されない。お前しか、この武器は扱えんよ。」
「………わかった。」
クロは斧を握った。
その瞬間、目の前に広い空がクロの目の前に現れる。
次第に雲は発生し、クロを包み込む。
黒い雲が視界を奪っていく。
雷がクロの周りを囲むように光輝く。
雷鳴が鼓膜を刺激する。鳥肌が立つ。
「覚悟はあるか?できているのなら掴むといい。」
雲の中から呼び声が聞こえる。
「………認めてもらえて嬉しい…だから…やる。…掴むよ。…………未来。」
クロは斧の意識を深めていく。接続されていく。血管が回路のように電気を通していく。斧はクロの思い描く形へ変わっていく。クロの斧は機械が変形しやすい形に変わり、様々な場面に対応が出来るようになった。
「成功だ。お前は認められたんだな。クロ。」
バーナードはとても喜ばしい気分になった。久しぶりに優しげな笑顔を見せた。
クロは現実の世界へ戻される。
「………俺のできることをするよ。」
クロも表情を出した。喜びだろう。それが素直に現れたのだ。
「クロ。お前には再戦の場を用意してやった。現役最強を倒してこい。」
バーナードは扉を開く。開いた先は闘技場だった。
声援が響き渡り、その先にクロスが立っていた。

クロは斧を強く握る。その武器は一般武器ではない、適合武器だ。王からの命令でクロは適合者に選ばれたのだ。
まさにここからは本物の戦場だ。
大きく深呼吸をする。
上級兵士の中では格の違いすらある人物だ。しかし、適合武器を手にしたクロは前のようには倒せないだろう。
クロは闘技場の真ん中に立った。
「まさか…次の戦闘が適合者になったクロとは…骨が折れるな。」
クロスは刀を抜く。
「今回は最初から本気だから……怪我すんなよ。」
目から来る殺気が静かなる者の強さを証明している。
「………もう最強は俺だよ。」
クロは斧を構える。

二人を見守る観客が静かになる。その中にアルムや月姫、天姫が応援に来ていた。
「勝ってください。クロスさん!」
アルムは抑えきれない衝動でウズウズしていた。
「大丈夫です。クロスさんは負けませんよ。そうですよね。お姉様!」 
天姫が月姫の横顔を見る。
「難しいことは確かね。クロスさんは適合武器を持っていない。対する相手は適合者。分が悪いのは当然よね。」
月姫は分析していた。
「そんな…負けてほしくないです!クロスさんは私達の憧れの存在です!勝ってください…クロスさん。」
天姫は手を握って願っていた。

クロは息を吐き出す。世界が一瞬、黒い光に包まれる。
黒と白の世界がクロスを襲う。
稲妻の中にクロが紛れ込んでいる。斧の刃先が開きブーストで回転しながらクロは攻撃をする。
「適眼発動。」
クロスはクロの攻撃を見切ると、しゃがみ込んでかわす。
クロスはそのまま上に円を描くように斬撃を入れるがクロには当たっていない。
「あれか…空間を歪める能力。」
クロは能力を使い、世界から消えた。
クロスは次の予測を行う。クロの攻撃パターンを数値化し、いくつかのパターンに絞り出す。そして、一つの攻撃に絞り出した。正面からの斧の攻撃だ。
クロスは刀でガードする。しかし、攻撃が行われない。それどころか、どこからも攻撃を仕掛けてくる様子がない。
一体何を考えている。そして、予測がまた現れる。それは一つに絞りきれなかった。3つのパターンが選択され、待機されている。パターンが絞りきれなかったのはこれが初めてだった。一つは投げる攻撃。2つ目は出力を使った技の攻撃。そして、3つ目は不明。不思議な選択肢だ。不明。何をしてくるかわからないと言われているようだ。ならば広範囲の攻撃を仕掛けるのみ。
「出力50%烈火ッ!」
刀から炎が広がっていく。全力のフルスイングで炎を周りに広げていく。黒い世界から赤い炎が輝き出す。白い稲妻が地面へと落ちてくる。
「…………待っていたよ、その攻撃を…。」
クロの姿が見える。一直線に刀を刺す。しかし、斧で防がれると弾き返される。
「電力60%……春雷。」
刃先の機械が閉じて鋭い刃になる。クロの体全体で雷を帯びながら一瞬のすきを狙う。攻撃は光の速さで切り裂き、音が遅れてやってくる。白い光がクロスの目に焼き付く。
「ゼロシステムッ!」
クロの攻撃をギリギリのところでかわす。クロの攻撃はクロスの後ろまで電撃を放ち地面をえぐる。
「これが、完璧な状態の適合者の力か…。」
息が荒くなる。クロスはちょっとしためまいが起こる。
新しい力がクロの心を騒ぎ立てる。
観客は何が起こったのかがわかっていない様子だった。
世界が元の色に戻ると観客の声援も戻ってくる。
「……次はもっと苦しくなるよ。」
クロは斧を天高く上げる。
「オーバー・ザ・ミラー…電力10%落雷。」
空が曇り、厚い雲が闘技場を覆う。
「落雷って言ったな。つまり、直接の攻撃じゃないんだな。」
クロスは空を警戒する。光輝き、雷が落ちる。しかし、明らかに闘技場の外に落ちようとしている。だが、雷が屈折しクロスの元へ落ちてくる。ゼロシステムを使い、かわすがそのたびに身体への負担がかかる。
「クソッ!」
雷の落ちるペースが早くなり、そのたびに屈折してクロスを襲う。雷鳴と衝撃がクロスの精神を削っていく。
クロスはクロの方向へ走る。
「自分の近くでは落とせないだろ!違うか?!」
クロは容赦なく雷を落とした。
「……電気を帯びている状態だからなんともない」
クロスは一撃くらってしまう。
「チッ!」

アルムはその光景を見ていた。
「まずい。かなり押されてる。このままだと、負ける。」
アルムは席を立ち上がる。そして、最前列まで走る。手すりに乗り上げて叫ぶ。
「負けるな!!クロスさん!あんたが最強の兵士だろ!」
アルムの応援がクロスの耳に届いた。
「…たく…わかってるよ。俺は負けるわけにはいかない。」
クロスは笑う。そして、全身の力を振り絞るように構える。刀は技を出していないが炎が…現れる。
クロは察した。ここが勝負の決め手であることに…。
クロは低い姿勢で攻撃の構えをする。雷の音が落ちる瞬間に二人の兵士が動く。
「出力100%…神火疾風ッ!!」
クロスの炎が…赤く光り刃を高温にする。灼熱の炎がクロスと共に時間の外側へ空間の歪みすらも飛び越えてクロの姿を捉える。火花を散らし空間を切っていく。偽物の空間が正真正銘の本物へと戻っていく。いや…斬り裂いているのだ。そして、反対側から黒い雷を纏った少年が機械を起動させながら屈折を利用して自身を加速させていた。斧はありえないエネルギーを保ち今尚、力を膨張させている。溢れ出す電気が黒ではなく七色の光へ変わる。
「…電力100%日雷ッ」
雲の中から一筋の日光の光が差し込み、より鮮やかに色を滑らかにする。
武器同士がぶつかり合い、火花を散らす、空間が…歪む。衝撃波に土煙が混ざり、状況がわからなくなる。
「これで終わりだぁぁッ!!」
クロスの生命の炎と共に大きくなる炎がぶつかる。
「…蹴散らせぇぇッ…!」 
それを跳ね返す電撃で必殺の一撃を放つクロ。
両者の勢いが止まらない。
そして、どちらかが倒れた。そのエネルギーを黒い空間が…呑み込む。全てのエネルギーが別の空間に送られる。

土煙の中で一人の斧使いが拳を上げている。
それは新しい適合者が誕生した瞬間だった。
クロスは力尽き倒れている。クロは行き過ぎたエネルギーが観客に被害を出す前に消し去ったのだ。
世界はまた新しく変わろうとしている。
観客は新しい適合者を拍手で迎い入れた。
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