五人の適合者

アオヤカ

文字の大きさ
49 / 56

故郷へ…

しおりを挟む
光の筋になって祠の村に到着する。
足が地面についた時故郷の懐かしさがアルムの心を穏やかにさせる。見慣れた景色は些細なことで鮮明な思い出を呼び起こすことができる。
そんなアルムとは違いクロはいつになく周りを警戒している。
自力では立てなくなっているバーナードは無言で絶望していた。
「…とりあえず、俺の家に行こう。」
故郷にも帝国の兵士は送り込まれているはずだ。
どの範囲までカゲ化したかわからない以上外にいるのは危険だ。
アルムはバーナードに肩を貸した。
自力で歩けないほど精神的に参っているようだ。
ゆっくりとした足取りで村の中の様子を見る。
なんだが…静かだな。
確かにカゲによって襲撃を受けたこの村は多くの村人を失ったが、まだ生き残りが多くいたはずだ。
それこそ……父が死んでも守り抜いた村人達だ。
「ルミちゃんは元気だろうか…。」
風の音が通り抜けていく。
昔の賑やかさはまったくない。
それどころか一人も見当たらない。
アルムの家に着くまで結局人には会わなかった。
「…………やっぱり何かおかしい。」
荷物を一旦地面に置いた。 
「バーナードさん。戦えますか?」
バーナードは静かにすみに座っている。
「……作戦は失敗だ。帝国軍は壊滅した。これ以上何かしても…。」
クロはバーナードの胸ぐらを掴んだ。
「おいクロ!」
アルムが止めようとした。
「……諦めるのか?僕達の為に戦った兵士の死を無駄にして諦めるのか?………たとえ数人しか生き残っていなくても帝国軍は…負けてない。なぜならその意志を継ぐものが生き残っているからだ。バーナードさんは諦める人じゃない。」
バーナードは顔を下にしてしばらく沈黙が続いた。
「俺が間違っていた……最初から凡人は凡人だった。何かできると思い込んでいたんだ。この両腕を失った日から俺は俺ではなくなっていたんだろう。」
バーナードは深く絶望している。生きる気力すらもう乏しく消え失せようとしている。
「………バーナードさん僕はあなたに鍛えられた。無知だった僕に知識と兵士としての力をつけてくれた。だから今………今度は僕があなたに希望を与える。人間は皆平等だ。しかし、経験を積めば大きな力を得ることだってできる。誰にだって訪れる平等な力だ。あなたが教えてくれた言葉だ。」
バーナードは唇を強く噛む。
ふっと力が抜けて立ち上がる。
「あぁそうだな。最後の悪足掻きといこう。…奴らを止める。」
アルムはクロスからもらった銃をバーナードに渡す。
「まずはこの村でカゲを討伐します。いいですね?」
バーナードはアルムの銃を受け取る。
「それで構わない。あまり騒がしくするなよ。アルム君。」
アルムはしっかりと頷いた。
「それとさっきから気になるのが…村人がどこにもいないことですね。……ッ!」
アルムは何かに気が付く。
「…何か分かった?」
クロはアルムの表情を読み取った。
「シェルターだ。村の人達は何かあるとシェルターに逃げ込むようにしている。」
「なら早く行くべきだ。カゲの襲撃を受けたかもしれないからな。」
バーナードは銃弾を確認しそう伝えた。
アルムは急いでシェルターに向かう。
その時、頭痛が起こった。
「う……ぐッ!」
頭がボケっとしてくる。視界がぼんやりとしてきて昔の何かを思い出す。
(お前はこの先、武器を使い世界の破滅に関わることになるそれでも使うかい?)
「なんだ……これ…。」
(君に忠告しておくよ。近い未来に人類を滅ぼす力が使われる。残念なことに私は逆らえない。君はもらった力ではなく、本物の力を手に入れなければならない。いいかい。これは本当に必要な時にまた思い出すよ。まだ手遅れになる前にね…………。使ってくれるかい?もし、儀式が行われてしまったら君の命と引き換えに影の王の力を使ってくれるかい?)
(どういう意味なんだ?教えてくれ!俺は鎧のアイツを殺すことが目的だ!)
(見せるよ君が辿り着く未来へ…これ見て決めてくれ。)


(……………………。)
(最後に聞かせてくれ。君は誰なんだ?)
(私は…いつか会える人間だ。君に託された思いを伝える者だ。)


「あぁ…使う。」
「………どうした?」
バーナードはアルムの体調を気にした。
「思い出したんです。やるべき事を…行きましょう。」
アルムは再び歩き出す。
草木が風で揺れている。
「絶対に許さない…誰もこれ以上失わない。」
アルムはシェルターに向かう。雰囲気はより悪くなり、
そこは惨劇の場所だった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者の様子がおかしい

しばたろう
ファンタジー
勇者は、少しおかしい。 そう思ったのは、王宮で出会ったその日からだった。 神に選ばれ、魔王討伐の旅に出た勇者マルク。 線の細い優男で、実力は確かだが、人と距離を取り、馴れ合いを嫌う奇妙な男。 だが、ある夜。 仲間のひとりは、決定的な違和感に気づいてしまう。 ――勇者は、男ではなかった。 女であることを隠し、勇者として剣を振るうマルク。 そして、その秘密を知りながら「知らないふり」を選んだ仲間。 正体を隠す者と、真実を抱え込む者。 交わらぬはずの想いを抱えたまま、旅は続いていく。 これは、 「勇者であること」と 「自分であること」のあいだで揺れる物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...