五人の適合者

アオヤカ

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卑劣さを増していく

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シェルターは村から少し離れた茂みに作られた。
中はかなり広く作られているようで、村の人々が協力して10年以上かけて作ったものだ。
アルムたちが進むたび、日が段々と低くなり沈んでいく。
3人の兵士は急いでシェルターに向かう。
ここで初めて道に血の痕跡があった。
激しく争ったようで地面がえぐれている。
完全に日が暮れてからアルム達は到着した。
シェルターからは異様な雰囲気を醸し出していた。
「…………入るぞ。」 
アルムはそっとシェルターの入り口を開いた。
入り口を開けると同時に嫌な臭いが漂ってくる。
血生臭さ……。
アルムは無心で奥に進んでいく。
「…………。」
アルムはランタンで地面を照らし進む。
「………アルム。」
クロは心配して声をかけた。
「わかってる。」
アルムは返事が早かった。
足取りもどんどんと速くなる。
闇の中を進み…………心も焦っていく。
きっと大丈夫だと自分に言い聞かせながら…。
そして、アルムは歩みを止めた。
あとからクロとバーナードも追いついた。
「………これは……。」
「あぁ。」
アルムは強い光でシェルター内を照らした。
そこはハエが飛び交い、異臭とウジの巣窟だった。
……大量の村人がここで殺されたのだ。
アルムは一人ひとりの顔を見ていく。
昔の記憶から引っ張り出すように深い憎悪が増していく。
そして、おばあさんの隣で一番見たくない少女の死体を目撃した。
アルムは感情と真逆の表情をした。
「は…はは……なんでだよ。…この人達は…ルミは何の関係もねぇだろうがぁッ!」
怒号が響き渡る。光がカチッと一瞬だけ暗くなった。
変わり果てた少女と故郷の村人たちはカゲにより無残に殺された。様々な殺され方で…。
斬り殺され…頭を割られ…焼かれ…手足を斬られ………。
アルムは頭に血がのぼっていく。
血管からはじけそうな勢いで…。
バーナードはアルムの前に立った。
「…俺のせいだ。俺が警備のために各村に兵士を配置した俺のせいだ。俺を責めてくれ。俺のせいだ。俺の……せいなんだ。あいつらは悪くないんだ。………だから俺を責めてくれ。」
バーナードはアルムの前で崩れ落ちる。
「バーナードさん。俺はカゲに怒りを感じているわけじゃないですよ。鎧のカゲが元凶だ…。あいつは絶対に許さないッ!!」
アルムを見つめるクロは何かを感じとった。
「アルム!外にカゲの反応がある。しかもかなり大きい。」
アルムは鋭い目でシェルターの入り口に戻っていく。
「バーナードさん。誰にだって失敗はあるから仕方ないですよ。」
アルムは入り口を開けた。
「クロッ!…行くぞ。皆殺しだ。」
勢いよく外出ていくアルムに続いてクロも外に出た。
バーナードは目を閉じて深く考えていた。
辺りは暗くなり、視界が悪い。
とても戦いには向かないだろう。
クロが鋭い眼光で索敵を行う。
微かな音に気がついたクロはアルムに居場所をハンドサインで伝える。
アルムも目を閉じて耳の能力に頼る。
「……2体か。」
アルムとクロは適合武器を展開する。
バチバチと火花を放つ。
そして、燃えたぎる想いを乗せた。
アルムは全力の一振りをカゲに放ち、斬りかかる。
すると、2体かと思われたが村人が人質にされていた。
アルムは攻撃を直前で止めた。そして、勢いを殺して転がりながらある程度の距離をとった。
アルムはその卑劣な行為に怒りを更に積もらせる。
「てめぇらはどこまでいっても人じゃなねぇよ…。この野郎ッ。」
カゲは不気味な笑みを浮かべている。
学習しているのだ。
どのようにすれば人は攻撃が出来ないのかをよく知っているのだ。
多分、あの鎧のカゲが作り出したカゲの学習能力の高さだろう。
やはり…厄介だ。
しかも小さい子供を人質にとっている。
よく見えないが男の子だろう。
口元を押さえられているため、声が出せないのだろう。
カゲは不気味な音を出した。しかし、アルムには声に聞こえたらしい。
「……そうか…。」
そして、もう一度音が、聞こえた。その時、クロにも聞こえた。
「オレヲコ…ロスツモリダロ?シニタクナイ。」
明らかにこちらが敵のように言ってくる。
そして、その問いに対してアルムは…。
「お前は…あのシェルターの村人達を殺したのか?」
カゲは不気味な唸り声を出す。
「教えろよ。なぁ。」
唸り声は強くなる。
「なぁ。教えてくれよ。お前が、やったのか?」
カゲは大きく口を開けた。
「………イマ…。」
アルムは目元がビクリと動く。
「は?何を…。」
クロがアルムを捕まえて急いで緊急回避をする。
地面から大きなカゲが地面を揺らして現れる。
地鳴りはしばらく続く。
「………おいおい。二度も会いたくないね。曇天神ッ…。」
更に大きく…そして大きな牙と翼が生えた化け物がアルム達の前を塞ぐ。
神の鉄槌を下すとばかりに大きな武器を振り下ろそうとしていた。
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