五人の適合者

アオヤカ

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世界の終焉

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アルムは森の中を歩く。
塔に近づくたび濃い霧に包まれていく。
足取りは遅くなり身体も重くなっていく。
「……ここさえ乗り切れば、長い戦いに終止符を打てる。」
アルムは塔を睨む。
黒い塔はより雰囲気を出している。
誰も引き寄せない絶対的なオーラ。
その造形に吐き気がする。
クロが周りを警戒している。カゲはあちらこちらで湧いている。少しでも大きな動きをすれば見つかってしまいそうだ。
「……やっぱりさっきからカゲが塔の周りに集まり始めている。」
カゲは塔に吸い込まれるように進む。
全てを相手にしていてはきりがない。
クロは全神経を集中させた。
転移によって塔内部に侵入できないか模索するためだ。
「……ここからなら天姫の元まで転移できる。」
クロは左手で空間の操作を試みていた。
四角いブロックがクロの手の上で踊っている。
「じゃあ、頼む。急いでいるからな。」
アルムは頭の布をしっかりと巻き直した。
少し、呼吸が乱れていた。
心拍が上がり、アドレナリンが分泌される。
気持ちの高まりも感じられる。
クロは正確な位置を座標から計算し、特定する。
四角いブロックは確定した場所を示していた。
「……行くよ。」
無愛想な合図で転移が開始される。
そして、光に包まれて塔の内部に侵入した。
光が屈折するように激しい振動で内部に突入する。


部屋の中で大きく光が入ってくる。無数の風によって資料が舞う。
天姫は少し驚いた表情してこちらを見ている。
「あの…私、言いましたよね?近くに来たら連絡してくださいと……。びっくりするからやめてくださいよぉ……。」
天姫は最後、完全に力が抜けるような声になっていた。
アルムは服についたホコリを払うとにっこりと笑った。
「すまなかった。こっちも余裕がなくてな。」
久しぶりの再会に全員が一度和む。
温かい雰囲気が広がっていく。
作戦によって疲れていた心が一瞬だけ救われたような気がした。
すると、次の瞬間嫌な痛みがアルム達に襲いかかる。
クロは部屋全体を見渡している。
「……ここはなんだが…変だ。」
クロは斧を展開する。
「どうした?」
アルムはクロに質問する。
「……上からかなり危険なものを感じる。」
アルムもその違和感には気がついていた。まるでピリピリと頭を突かれるような痛み。
「とりあえず、行きましょう。確認したのですが、塔の中はカゲがかなり少なくなっています…。」
外で大量にカゲが待ち伏せしていたからなのだろうか??
アルムは進むことを決める。
アルム達は扉を勢いよく開けて飛び出した。
この作戦が失敗すれば最後だ。階段を上り続けると頭痛が酷くなる。……最悪な痛みだ。
運命に近づいているのだろうか?
自然とそれを感じるのだ。
きっと痛みの発生源は屋上だろう。
俺達は夢中で屋上まで走る。
汗が落ちて地面に染み込む。
終わらせたいと考えるたびにいやなことばかり考えてしまうのだ。もし、負けてしまったらどうなるのだろうかと……。
前に進むと決めてから迷うことばかりだ。
止まることは許されないのだ。
前に進み続けるんだ。もっと前へ……もっと前へ。
屋上に到達した時、眩しい光に包まれた。
霧が濃くて見えなかったが、空は赤く色づいていた。
それは禍々しく恐ろしかった。
しかし、それ以上に前に立つ人間が異様に気になった。

「待っていた……。俺はこの時をずっと待ってたんだ。アルム。そして、俺に運命は味方したってわけだな。」
カリストレートは心が満たされていた。
空を見上げてゆっくりと呼吸している。
アルムはしっかりと地面を捉える。
「お前の想い描くような通りにはいかない。俺達はそれを止めにきた。全力で…。」
アルムは適合武器を展開する。
「なるほど。勝算があるってわけか。だがな、お前の読みは外れている。三人の適合者が揃って俺に立ち向かえば勝てると思っている訳だ。しかし、それでも力不足だ。…」
カリストレートが何か更に言いかける。
「お前の目的は儀式を行うことだ!俺達を殺すことはできない。そこがお前の弱点だ!すぐに殺してやる。」
アルムは剣を向ける。
カリストレートは満面の笑みで笑った。
「これは傑作だ!お前は馬鹿なんだよ!ここには全員が揃ってんっだよ!!馬ッッッッ鹿!!」
カリストレートは指を鳴らした。
空から落ちてきたのは鎧のカゲだった。
するとマレンが月姫を抱えていた。
その瞬間に表情が凍りつく。
「そんな……馬鹿な!?」
全員があまりの衝撃に固まる。
このままでは儀式が始まってしまう。
一刻も早くカリストレートを殺さなればならない。
アルムはすぐに適合武器でカリストレートに斬りかかる。
足の筋肉が切れる限界の速度で間合いを詰める。
そして、剣の出せる最大火力でカリストレートに攻撃したが、間に合わなかった。
「儀式の始まりだぁー。」
アルムの身体は硬直する。
カリストレートの頭すれすれで剣が動かなくなってしまう。
空に大きく五つの円が描かれる。それに合わせて全員に白い輪っかが巻かれた。吹き荒れる風と雷鳴。
塔の下のカゲが叫び始めた。
とても甲高い耳障りな叫び声だ。
そして、カゲは無数の天に届く黒い柱になった。それは世界中に広がり、まるで墓場のようだ。
それと同時に適合武器が輝き始めた。
アルム、月姫、天姫、クロ、カリストレートは地面から足が離れる。
「……何が…始まるんだ。」
もう……どうしようもない。
儀式は始まってしまったのだ。止めることはできない……。
カリストレートは涙を流す。
「素晴らしい……。これが世界の救済になる。我々の悲願は達成された。」
地面は色を失っていく。真っ黒に染まる。
「……クソッ!アルム!!動け!!なんとかしてくれ!!」
クロは斧で自殺しようとする。
しかし、首に攻撃が届かない。
攻撃が止まってしまう。
「アルムさん!!儀式を止めるにはこの輪を斬る必要があります!このまま天に連れて行かれたら、儀式は次の段階に進んでしまいます!!お願いです!!あなたにしかできない!!」
天姫は全力で叫ぶ。
アルムは必死に影の王の力を発動させるがやはり何もできない。
「お前達は生贄だ!!生贄に権限なんてあるわけ無いだろ??このまま大人しく天に召されろッ!!」
カリストレートは勝ちを確信していた。
本当に最後なのだ。
………………本当に最後なのだ。
………………………………………………本当に最後なのだ。









そして、数十メートル上空に上昇した時、突然上昇が止まった。
「えっ…………。」
アルムは焦りのせいで非常に速い呼吸だった。
そして、下を見たのだ。


「やっと私のやりたいことができるわ。人間って本当に扱いやすいわね。理想とか夢とか幸せとか……馬鹿じゃないの?私はね。圧倒的な力がほしいの。歪んだ力よ。馬鹿の理想はここで消えたわけね。」
マレンは目を見開いて両手を広げている。
「おいおいおいッ!!マレン何をしている??なぜ止めた?」
カリストレートは何が起こっているのかわかっていなかった。
「だからね~。バーナードも~カリストレートも~力が嫌いでしょ?特別な力は世界を…滅ぼすもんね。でもね~力がない人間に果たして理想なんて辿りつのかしら?」
五人は屋上まで戻ってきた。そして、マレンは真ん中に立つ。
「さぁ…偽りの影の王は死んだわ。それでは、ネタバラシをしましょうか。あなた達が持っている適合武器には私達の原点であるエネルギーが大量に溜め込まれているわ。それは儀式に使用できるものよ。でもね、他にも様々な使い方があるわ。そして、私はその膨大なエネルギーを使って、最古の影の王の力を超える神になる。…ここまで長かったわ。……影の王として君臨し続けて深い眠りについてしまった。……いつの間にか力は奪われていたのよ。でもね、意識の共有はできていたの……。私は力の持ち主を知っていた。だからあなたの村を襲った。あなたがここにたどり着くためにね。きっと仲間を集めて来てくれるって信じてたわ。」
マレンは鎧のカゲの姿になる。
「セカイヲツツムカゲトナレ!!」
マレンの命令によって何かが書き換えられた。
アルム達は激しい痛みが走る。電気が走るような痛みだ。
どんどんと適合武器のエネルギーを吸われていく。
適合武器に接続している人間は自分自身が適合武器なのだ。身体のエネルギーすらもマレンに吸われていたのだ。
「ぐわぁァァァァッ!!」
苦しさで前が見えない。
しかし、意識が飛ばない。
涙が溢れる。血が口から勢いよく流れてくる。
まるで全身を絞られているようだった。
雑巾のように大量の水分を絞られていく。
マレンの不気味な笑い声すらも耳には届かなかった。
「……マ……レ………ン……コロすッ!!」
アルムは必死に手を伸ばす。
マレンは顔だけ人間の姿に戻した。
そして、舌を出して挑発する。
「さようなら……偽りの王様。」
アルムは段々と意識が消えてきた。
さっきと違い、血が少なくなってきたからなのか?
月姫がアルムを必死に見ていた。
「た……すけ……」
俺は………なんの為に、戦ってきたのだろうか。
目の前にいるこいつ殺すためだ。
なのに……どうして…俺はこいつを殺せないんだ。
アルムの意識は奥底まで沈み込もうとしている。






「やっと間に合った。…………装填完了。兄貴に任せろ。反撃の機会は俺が作ろう。」
森の中でライフル構える男が立っていた。
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