星夜に種を〜聖母になっちゃったOL、花の楽園でお花を咲かせる!〜

はーこ

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本編

*11* 太陽の祝福

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 外気にふれ、陽光にふれた琥珀色の液体が、キラキラと揺れる木漏れ陽のように輝きを放つ。
 そしてあたしの手のひらにふれた途端、まばゆいシルエットをかたち作ったのだ。

 やがて光が消え去ったとき、手の中には、ずしりと重みのあるゴールドの星形ブローチがおさまっていた。

「なに……何が起きたの!?」

「瓶の中身は、『ソルロス』──『太陽の雫』という名を持つ、特別な樹液でして」

「樹液……それが、なんで急に光って……?」

「これはひとたび陽光にふれることで周囲の魔力に反応し、ピアスであったり、ブローチであったり、様々な装飾品にかたちを変えるものです」

「それじゃあ、ヴィオさんがプレゼントしてくれたピアスも……!」

「えぇ、『ソルロス』から作り出したものです」

 星形のブローチを、まじまじと見つめてみる。
 これが元はヴィオさんがくれたピアスと同じ、樹液からできたものだなんて。

「『ソルロス』の樹は、我がウィンローズのみにしか自生しません」

 聞けば『セフィロト』のように樹木は神聖な存在とされているため、ウィンローズでは古くから幸福の象徴として愛されてきたのだという。
 ふれた者の心をかたちにする。それが、『太陽の雫』──

「ですからウィンローズでは、『想い』を込めた『ソルロス』のアクセサリーを、大切な人に贈る習慣があるのです」

 つまりまたしても、リアンさんにしてやられたってわけね。
 古くからの習慣なら、「さぁ、わかりませんねぇ」なんてことはないはずだから。

「私の独りよがりではいけませんから、このまま仕舞っておくつもりでした。けれどあなたからお手紙をいただいて、迷いが晴れた。薔薇のお返しに、この花を。あなたの幸福を願わずには、いられなかった」

「大切な人に贈る、幸福のしるし……」

「えぇ、そうです。ですからセリ様も、大切な方にその星を贈られるとよろしいでしょう。ジュリ様か、母上か。あのドールは、個人的にお勧めできませんが」

 そう言っておどけてみせたヴィオさんに、なるほど。ひとつうなずいてから、ひと言。

「わかりました。それじゃあ、どうぞ」

「……え?」

「え?」

「……私に?」

「逆になんでこの流れで、ヴィオさん以外の人に渡すと思ったんです?」

 ぴし、と石像みたいに固まってしまったヴィオさん。
 本気の本気で、あたしの『大切な人』に自分がカウントされていないと思っていたらしい。んなアホな。

「ヴァイオレット」

「っ」

「ですよね? このお花」

 慎ましくも気高い、薄紫の花。
 あたしの両耳を彩る小花は、『彼女そのもの』だ。

「これで少しは、対等になれるかなって」

 守ってもらった。助けてもらった。
 いっぱいいっぱい勇気を与えてくれたヴィオさんだから、やっぱりこの星は、ヴィオさんが持っているべきだと思う。

「押しつけます、返品不可です。なんちゃって。えへへ」

 呆然と脱力した右手に握らせたら、ほら。収まるところに収まったでしょう。

「びっくりしたけど嬉しかったです、ヴィオさんの気持ち。素敵なお花をありがとう。髪で隠れちゃうのが、もったいないなぁ」

「いえ……いいんです」

「うん?」

「この想いは、あなたが秘めてくれさえいれば」

 押しつけたブローチごと、絡め取られる右手。

「吐露すれば楽になるかと思ったのに、熱は募るばかり……本当に、どうしたらいいのでしょうね」

「ヴィオさん、」

「好きです、セリ様……あなたが好きです、どうしようもなく」

 するりと頬を擽られ、ちゅ、と耳元で響くリップ音。

「ひゃ……ヴィオさん」

「セリ様」

「やだ、くすぐったい……!」

「逃げないで、私の可愛いひとマイ・リトル・レディー

 擽ったさに身をよじっても、しなやかな腕に余計に抱き込まれてゆくだけ。
 ちゅ、ちゅ……と繰り返される耳朶へのキスに、ふれた場所だけじゃない、身体の芯から燃え上がるようだ。

 あなたを愛している、愛しくて愛しくて堪らないのだと、『心』が伝わってくる。
 深い深い情愛の蔓に、全身が絡め取られてしまう。

「──ねぇ、セリ様。ご存じですか」

 手足の力が抜けて、しがみつくので精一杯。
 そんなあたしを抱きとめ、俯く頭上を捉えたペリドットは、どんな色をしているだろう。
 少なくとも、言い訳ができないくらい朱に染まった耳を薄紫の小花ごと食む彼女の問いから、逃げることはできなくて。

「耳を甘噛むキスは、求婚の証なんです」

 ──落ちて、落ちて。私と同じところまで。

 甘い痛みを伴う囁きは、どんな毒薬よりも悩ましい疼きを、あたしに与えた。
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