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本編
*17* ランチタイムの受難
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お腹いっぱい食べた後は、気ままにお散歩をするのが最高のひととき。
だけど遅刻から始まった今朝の食後に関しては、いつも通りに行きそうもなかった。
会食堂を1歩出たその先では、熾烈な争いが繰り広げられていたからだ。
「セリ様が倒れたのは私の責任です。煮るなり焼くなりお好きにしてください!」
「無抵抗の女性に無体を働いて喜ぶ趣味嗜好は持ち合わせておりません」
「何故ですか! 私の謝罪はゴミよりも価値のない聞くに堪えないものだからですか!?」
「そうではありません。私の趣味はセリ様です。ゆえに貴方のご要望にはお応えいたしかねますと申し上げました」
「それはそれで納得できないです!」
「なんて趣味してるんですかー!」と地団駄を踏むかのごとく声を張り上げるネモちゃん。
うん、あたしもそう思──「私もセリ様を趣味にしますー!」──いや、思い直した。
対して「ご遠慮願います。減りますので」と真顔のゼノさん。
毎度のことながら、あたしは何を見せられてるんだろうか。
「母さんさ……」
「うい」
「ほんっと油断も隙もないよね。まだ2日目だよ?」
「すんません」
先述のようなことがあり、ジュリくんからお叱り(というか呆れ?)の言葉を受ける羽目に。
お膝の前で手をそろえて俯いた頭上から、「ビビィ~!」という特徴的な鳴き声と共に滴り落ちるものがある。
べちゃあっとあたしの脳天に張りついたわらびの、安堵の涙だ。心配してくれたのは嬉しい。
だがしかし、めちゃくちゃ冷たい。氷水の雨漏りをしているみたいだ。
はぁ……と、もう一度ため息がこぼされた。
「ウィンローズの民がみんな恋しちゃうヴィオさんをオトしちゃったなら、もう街歩けないね?」
「そうだよね……刺されちゃうよね……」
「刺され……? うん母さん、オレが言ってるのはそういうことじゃなくてね?」
違ったらしい。でもよく考えてみればそうだ。
セフィロトが常に目を光らせているエデンでは、犯罪率が極めて低いんだった。
襲ってくるにしてもモンスターだろう。
花屋のおばさんしかり、いい人たちばかりなのに失礼なことを言ってしまった。猛省。
「そうおっしゃらないでください、ジュリ様。私がセリ様にご不便はおかけしません」
「のわぁ!」
ふわぁって! なんかふわぁっていい香りがしたと思ったら、今度はむにゅってした!
やわらかいものがね、後頭部に当たってるの!
「はいアウトー! ヴィオさんもナチュラルに母さんの背後取るのやめてよね!」
「いけませんか? こんなにも愛し合う恋人同士なのに」
「そっかぁ、それじゃあグッと180度回転させた母さんを見てみようか! 心底驚いた顔してるから!」
「では失礼。ほう……これはいつにも増して、お可愛らしい」
「違うそうじゃない! 何なの、ヴィオさんって母さんが絡むとリアンさん並みにちょっと困った人になるの!?」
「聞こえてますわよー、ジュリ様ー」
リアンさんの合いの手が聞こえた気もしたけど、確認のしようがない。
おっぱいのついたイケメンと名高いヴィオさんの極上クッションにジャストフィットして、身動きが取れないんだ。
そうこうしているうちに肩を抱きすくめられ、「つれない方ですね。この腕の中で、何を考えていらっしゃるのですか、私の可愛いひと?」と耳元へじかに吐息を吹き込まれたら、もうダメだった。
「ヴィオ姉様ずるいです! ネモもセリ様ぎゅってしたいです!」
「──ヴィオ様、折り入ってお話がございます。お時間を頂戴したいのですが」
あ、これアカンやつ。あたしじゃどうにもならん。
パタパタと駆け寄ってくるネモちゃん、つかつかとやたら靴音を反響させて歩み寄るゼノの姿を目の当たりにし、思考停止する。
脳内で処理できる許容量はとっくに限界突破していた。
「うん、カオスだね!」
しまいには、半ばヤケ気味のジュリが、爽やかにシャイニングスマイルを弾けさせた。
だけど遅刻から始まった今朝の食後に関しては、いつも通りに行きそうもなかった。
会食堂を1歩出たその先では、熾烈な争いが繰り広げられていたからだ。
「セリ様が倒れたのは私の責任です。煮るなり焼くなりお好きにしてください!」
「無抵抗の女性に無体を働いて喜ぶ趣味嗜好は持ち合わせておりません」
「何故ですか! 私の謝罪はゴミよりも価値のない聞くに堪えないものだからですか!?」
「そうではありません。私の趣味はセリ様です。ゆえに貴方のご要望にはお応えいたしかねますと申し上げました」
「それはそれで納得できないです!」
「なんて趣味してるんですかー!」と地団駄を踏むかのごとく声を張り上げるネモちゃん。
うん、あたしもそう思──「私もセリ様を趣味にしますー!」──いや、思い直した。
対して「ご遠慮願います。減りますので」と真顔のゼノさん。
毎度のことながら、あたしは何を見せられてるんだろうか。
「母さんさ……」
「うい」
「ほんっと油断も隙もないよね。まだ2日目だよ?」
「すんません」
先述のようなことがあり、ジュリくんからお叱り(というか呆れ?)の言葉を受ける羽目に。
お膝の前で手をそろえて俯いた頭上から、「ビビィ~!」という特徴的な鳴き声と共に滴り落ちるものがある。
べちゃあっとあたしの脳天に張りついたわらびの、安堵の涙だ。心配してくれたのは嬉しい。
だがしかし、めちゃくちゃ冷たい。氷水の雨漏りをしているみたいだ。
はぁ……と、もう一度ため息がこぼされた。
「ウィンローズの民がみんな恋しちゃうヴィオさんをオトしちゃったなら、もう街歩けないね?」
「そうだよね……刺されちゃうよね……」
「刺され……? うん母さん、オレが言ってるのはそういうことじゃなくてね?」
違ったらしい。でもよく考えてみればそうだ。
セフィロトが常に目を光らせているエデンでは、犯罪率が極めて低いんだった。
襲ってくるにしてもモンスターだろう。
花屋のおばさんしかり、いい人たちばかりなのに失礼なことを言ってしまった。猛省。
「そうおっしゃらないでください、ジュリ様。私がセリ様にご不便はおかけしません」
「のわぁ!」
ふわぁって! なんかふわぁっていい香りがしたと思ったら、今度はむにゅってした!
やわらかいものがね、後頭部に当たってるの!
「はいアウトー! ヴィオさんもナチュラルに母さんの背後取るのやめてよね!」
「いけませんか? こんなにも愛し合う恋人同士なのに」
「そっかぁ、それじゃあグッと180度回転させた母さんを見てみようか! 心底驚いた顔してるから!」
「では失礼。ほう……これはいつにも増して、お可愛らしい」
「違うそうじゃない! 何なの、ヴィオさんって母さんが絡むとリアンさん並みにちょっと困った人になるの!?」
「聞こえてますわよー、ジュリ様ー」
リアンさんの合いの手が聞こえた気もしたけど、確認のしようがない。
おっぱいのついたイケメンと名高いヴィオさんの極上クッションにジャストフィットして、身動きが取れないんだ。
そうこうしているうちに肩を抱きすくめられ、「つれない方ですね。この腕の中で、何を考えていらっしゃるのですか、私の可愛いひと?」と耳元へじかに吐息を吹き込まれたら、もうダメだった。
「ヴィオ姉様ずるいです! ネモもセリ様ぎゅってしたいです!」
「──ヴィオ様、折り入ってお話がございます。お時間を頂戴したいのですが」
あ、これアカンやつ。あたしじゃどうにもならん。
パタパタと駆け寄ってくるネモちゃん、つかつかとやたら靴音を反響させて歩み寄るゼノの姿を目の当たりにし、思考停止する。
脳内で処理できる許容量はとっくに限界突破していた。
「うん、カオスだね!」
しまいには、半ばヤケ気味のジュリが、爽やかにシャイニングスマイルを弾けさせた。
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