星夜に種を〜聖母になっちゃったOL、花の楽園でお花を咲かせる!〜

はーこ

文字の大きさ
42 / 70
本編

*41* 赤いギンガムチェックをまとって

しおりを挟む
 1羽のパピヨン・メサージュを、ゲストルームの入り口に向かって放つ。
 純白の蝶はひらひらと光の粒子を舞わせながら、すぅ……とドアを透過して部屋の外へ。

 十数分後、3回ノックを受けて待ちかねていた彼女を招き入れるのだけど、その後ろにはもうひとり分の人影があった。

「紹介するわね、セリ。この子はアンジャベル」

「おぉ……!」

 思わず感嘆をもらしてしまった。華奢な少女の背後でどっしりと構えるその迫力に、圧倒されてしまったからにほかならない。

「ごきげんよう、マザー・セントへレム。アンジャベル・ウィンローズと申します。アンジーとお呼びくださいな、オホホ、なーんちゃって」

 目を引く赤いギンガムチェックのエプロンに、三角巾。
 ふわふわの赤毛をフリル状に咲く赤いカーネーションのバレッタでまとめたその人は、存在感抜群のふくよかな女性。
 三日月型に弧を描いたペリドットの視線が、ベッドで寝息を立てる少年から、あたしのもとへ戻る。

「ママから話は聞いたよ。えらく楽しそうなこと企んでるそうじゃないか、セリ様ー?」

 そうして、そばかすのあるまあるい頬にくしゃりとえくぼを刻んだアンジャベル──アンジーさんは、パチンッとまぶしいウインクを炸裂させるのだった。

「ウィンローズ邸のコック長であるこのアタシが、とっておきサプライズのお手伝いをしましょうねぇ!」


  *  *  *


 君は三つ星シェフか? とため息をつきたくなる凄腕ジュリくんの影に忘れ去られがちだけど、あたしだって、腹ぺこで暴れるちびっこモンスターたちを黙らせていた実績がある。

 大学に入学、就職してからも研鑽を忘れず自炊に励んでいた、努力家星凛さんなのである。
 ふっふっふ……秘められしそのスキルを、遂に発揮するときが来たようだな。

「やったるでぇ!」

 赤いギンガムチェックのエプロンと三角巾が、今日のあたしの戦闘服だ。

「醤油と料理酒とみりんあります!?」

「ほいよ! 分量はどうする?」

「適量からの適量からの適量で!」

「卵はこっちにといてあるからね!」

「ありがとうございます! だしで巻いてやらぁ!」

「ライスの炊き具合もバッチリだよ! ん~、ツヤツヤもっちもち!」

「よっしゃいい感じに立ってるぜ、待ってろよ握ってやらぁあああ!!」

 キッチンのことなら何でもござれ。アンジーさんのナイスサポートを受けながら奮闘すること小一時間、あたしは、やり遂げました……!

「さぁ食らうがいい、必殺──『おふくろの味』!」

「お……おぉ?」

 パチパチ、とまばらな拍手が遅れて到着。ずる、と落ちたフリルの肩紐を定位置に戻す。
 状況がよくわかっていないだろうに、目を白黒させながらも一応反応はしてくれるジュリ。ありがとう、優しいね。
 咳払いをしたのちに、なんでもないように赤いギンガムチェック柄の胸を張り直した。

「星凛さんお手製肉じゃが定食だよ!」

 ──そうだ、ジュリにごはんを作ってあげよう。

 体力が落ちてるだけで食欲は問題ないらしいとイザナくんづてに聞いてから、すぐさまペンを取った。
 あたしの計画を伝えたところ、泣き疲れた我が子を寝かしつけているうちに、オリーヴが色んな準備を整えてくれてね。

 ──和食って、作れたりする?

 そんな無茶ぶりにも見事応えてくれたわけだ。アンジーさんという、強力な助っ人を呼んできてくれて。
 何故日本の台所顔負けな食材に調味料、調理器具までが完備されていたのかという問いに、オリーヴはこう答えた。

「薔薇園に次ぐ、わたくし自慢のコレクションですから」

 ──故郷の味は、恋しくなるものね、と。
 ほんと頭が上がりません、薔子しょうこ姉さん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...