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本編
*41* 赤いギンガムチェックをまとって
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1羽のパピヨン・メサージュを、ゲストルームの入り口に向かって放つ。
純白の蝶はひらひらと光の粒子を舞わせながら、すぅ……とドアを透過して部屋の外へ。
十数分後、3回ノックを受けて待ちかねていた彼女を招き入れるのだけど、その後ろにはもうひとり分の人影があった。
「紹介するわね、セリ。この子はアンジャベル」
「おぉ……!」
思わず感嘆をもらしてしまった。華奢な少女の背後でどっしりと構えるその迫力に、圧倒されてしまったからにほかならない。
「ごきげんよう、マザー・セントへレム。アンジャベル・ウィンローズと申します。アンジーとお呼びくださいな、オホホ、なーんちゃって」
目を引く赤いギンガムチェックのエプロンに、三角巾。
ふわふわの赤毛をフリル状に咲く赤いカーネーションのバレッタでまとめたその人は、存在感抜群のふくよかな女性。
三日月型に弧を描いたペリドットの視線が、ベッドで寝息を立てる少年から、あたしのもとへ戻る。
「ママから話は聞いたよ。えらく楽しそうなこと企んでるそうじゃないか、セリ様ー?」
そうして、そばかすのあるまあるい頬にくしゃりとえくぼを刻んだアンジャベル──アンジーさんは、パチンッとまぶしいウインクを炸裂させるのだった。
「ウィンローズ邸のコック長であるこのアタシが、とっておきサプライズのお手伝いをしましょうねぇ!」
* * *
君は三つ星シェフか? とため息をつきたくなる凄腕ジュリくんの影に忘れ去られがちだけど、あたしだって、腹ぺこで暴れるちびっこモンスターたちを黙らせていた実績がある。
大学に入学、就職してからも研鑽を忘れず自炊に励んでいた、努力家星凛さんなのである。
ふっふっふ……秘められしそのスキルを、遂に発揮するときが来たようだな。
「やったるでぇ!」
赤いギンガムチェックのエプロンと三角巾が、今日のあたしの戦闘服だ。
「醤油と料理酒とみりんあります!?」
「ほいよ! 分量はどうする?」
「適量からの適量からの適量で!」
「卵はこっちにといてあるからね!」
「ありがとうございます! だしで巻いてやらぁ!」
「ライスの炊き具合もバッチリだよ! ん~、ツヤツヤもっちもち!」
「よっしゃいい感じに立ってるぜ、待ってろよ握ってやらぁあああ!!」
キッチンのことなら何でもござれ。アンジーさんのナイスサポートを受けながら奮闘すること小一時間、あたしは、やり遂げました……!
「さぁ食らうがいい、必殺──『おふくろの味』!」
「お……おぉ?」
パチパチ、とまばらな拍手が遅れて到着。ずる、と落ちたフリルの肩紐を定位置に戻す。
状況がよくわかっていないだろうに、目を白黒させながらも一応反応はしてくれるジュリ。ありがとう、優しいね。
咳払いをしたのちに、なんでもないように赤いギンガムチェック柄の胸を張り直した。
「星凛さんお手製肉じゃが定食だよ!」
──そうだ、ジュリにごはんを作ってあげよう。
体力が落ちてるだけで食欲は問題ないらしいとイザナくんづてに聞いてから、すぐさまペンを取った。
あたしの計画を伝えたところ、泣き疲れた我が子を寝かしつけているうちに、オリーヴが色んな準備を整えてくれてね。
──和食って、作れたりする?
そんな無茶ぶりにも見事応えてくれたわけだ。アンジーさんという、強力な助っ人を呼んできてくれて。
何故日本の台所顔負けな食材に調味料、調理器具までが完備されていたのかという問いに、オリーヴはこう答えた。
「薔薇園に次ぐ、わたくし自慢のコレクションですから」
──故郷の味は、恋しくなるものね、と。
ほんと頭が上がりません、薔子姉さん。
純白の蝶はひらひらと光の粒子を舞わせながら、すぅ……とドアを透過して部屋の外へ。
十数分後、3回ノックを受けて待ちかねていた彼女を招き入れるのだけど、その後ろにはもうひとり分の人影があった。
「紹介するわね、セリ。この子はアンジャベル」
「おぉ……!」
思わず感嘆をもらしてしまった。華奢な少女の背後でどっしりと構えるその迫力に、圧倒されてしまったからにほかならない。
「ごきげんよう、マザー・セントへレム。アンジャベル・ウィンローズと申します。アンジーとお呼びくださいな、オホホ、なーんちゃって」
目を引く赤いギンガムチェックのエプロンに、三角巾。
ふわふわの赤毛をフリル状に咲く赤いカーネーションのバレッタでまとめたその人は、存在感抜群のふくよかな女性。
三日月型に弧を描いたペリドットの視線が、ベッドで寝息を立てる少年から、あたしのもとへ戻る。
「ママから話は聞いたよ。えらく楽しそうなこと企んでるそうじゃないか、セリ様ー?」
そうして、そばかすのあるまあるい頬にくしゃりとえくぼを刻んだアンジャベル──アンジーさんは、パチンッとまぶしいウインクを炸裂させるのだった。
「ウィンローズ邸のコック長であるこのアタシが、とっておきサプライズのお手伝いをしましょうねぇ!」
* * *
君は三つ星シェフか? とため息をつきたくなる凄腕ジュリくんの影に忘れ去られがちだけど、あたしだって、腹ぺこで暴れるちびっこモンスターたちを黙らせていた実績がある。
大学に入学、就職してからも研鑽を忘れず自炊に励んでいた、努力家星凛さんなのである。
ふっふっふ……秘められしそのスキルを、遂に発揮するときが来たようだな。
「やったるでぇ!」
赤いギンガムチェックのエプロンと三角巾が、今日のあたしの戦闘服だ。
「醤油と料理酒とみりんあります!?」
「ほいよ! 分量はどうする?」
「適量からの適量からの適量で!」
「卵はこっちにといてあるからね!」
「ありがとうございます! だしで巻いてやらぁ!」
「ライスの炊き具合もバッチリだよ! ん~、ツヤツヤもっちもち!」
「よっしゃいい感じに立ってるぜ、待ってろよ握ってやらぁあああ!!」
キッチンのことなら何でもござれ。アンジーさんのナイスサポートを受けながら奮闘すること小一時間、あたしは、やり遂げました……!
「さぁ食らうがいい、必殺──『おふくろの味』!」
「お……おぉ?」
パチパチ、とまばらな拍手が遅れて到着。ずる、と落ちたフリルの肩紐を定位置に戻す。
状況がよくわかっていないだろうに、目を白黒させながらも一応反応はしてくれるジュリ。ありがとう、優しいね。
咳払いをしたのちに、なんでもないように赤いギンガムチェック柄の胸を張り直した。
「星凛さんお手製肉じゃが定食だよ!」
──そうだ、ジュリにごはんを作ってあげよう。
体力が落ちてるだけで食欲は問題ないらしいとイザナくんづてに聞いてから、すぐさまペンを取った。
あたしの計画を伝えたところ、泣き疲れた我が子を寝かしつけているうちに、オリーヴが色んな準備を整えてくれてね。
──和食って、作れたりする?
そんな無茶ぶりにも見事応えてくれたわけだ。アンジーさんという、強力な助っ人を呼んできてくれて。
何故日本の台所顔負けな食材に調味料、調理器具までが完備されていたのかという問いに、オリーヴはこう答えた。
「薔薇園に次ぐ、わたくし自慢のコレクションですから」
──故郷の味は、恋しくなるものね、と。
ほんと頭が上がりません、薔子姉さん。
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