激情ヱレキてる

はーこ

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Fuse3

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 これは一体どうしたことだ。

「去る2020年。東京オリンピックが開催されるはずだった年代の我が国において、『火力発電』が実に約70%もの割合を占めていた」

 ちょっとお花を摘みに出かけた隙に、窓際の前から3番目の定位置を占領されていたのだが。

 脈絡もなく突きつけられたのは、木製の背もたれに腕組みでふんぞり返る横暴なあつきからの挑戦状。
 この突発クエストを無事遂行しなければ、ランチタイムというHP回復の貴重な機会は、刻一刻と失われゆくに違いなかった。

「はぁ」

 呆れから来る生返事をこぼしながら、『やすめ』の姿勢で首をかしげてみせる。あかりも淡泊に見えて、売られた喧嘩は買う主義だ。

「発電したい分だけ原料を燃やせばいいんだから、取り扱いも調整も容易な『火力発電』が主体となるのも、当然だろうな」

「だけど、CO2排出問題が大きく立ちはだかったわね。原料の石油や石炭、天然ガスを輸入に頼っていたのも危険。主な輸出国である中東地域では武装組織によるテロも頻発していたし、いつ供給が絶たれたっておかしくない状況だったわ」

「同様に少ない原料で発電可能な『原子力発電』も、厳しい管理が必要なことや、放射性廃棄物の処理を巡って、発電割合はたったの4%程度」

 そこで注目されたのが、CO2を排出せず何度でも利用可能な、『太陽光発電』『風力発電』『水力発電』『地熱発電』『バイオマス発電』などのいわゆる『再生可能エネルギー』だった。

「『太陽光発電』は場所を選ばず、災害時にも利用しやすい」

「ただ、夜や悪天候時は発電できない。太陽光パネルの導入にも、それなりにコストがかかるでしょう」

「『風力発電』は夜、そして海上でも発電可能だ」

「でも風の強さが天候に左右されるのは『太陽光発電』と同じね。海の上で発電しても、地上までの送電線を整備しなくちゃならない」

「ほかに夜も安定的に稼働できる方法といえば、『水力発電』が代表的だが」

「まず開発できる場所が限られてて、大規模なものはそうそうつくれない。ダムに貯水可能な分しか発電できない上に、水の流れは簡単に変えられるもんじゃないから、発電量の調整も難しいわ」

「その点『地熱発電』は天候に左右されず、昼も夜も安定的に電力供給が可能だぞ」

「地質調査に時間もお金もかかりすぎるわよ。それに温泉地だとか観光地なことが大半だから、地域の人たちの協力が不可欠よ」

「廃材や家畜の排泄物などを原料とする『バイオマス発電』は……」

「要らないものを使うからクリーンな上、固体・液体・気体燃料になって夢はでっかく広がるけれど、資源が色んなところに散らばりすぎてる。ちまちま集める苦労を考えたら、大規模発電には向かないわよ」

「……以上の理由から、『太陽光発電』や『水力発電』『バイオマス発電』の発電量は全体の10%未満、『風力発電』や『地熱発電』に至っては1%未満にとどまっていたわけだ」

『火力発電』が主体の構図は変わらない。
 ところが、温室効果ガスの削減に苦心した日本政府の執念が、あるとき、とんでもない革命を起こす。

 ──人間の『怒り』をエネルギーに。
 
 世界に激震が走った。
 それこそが【激情汲み取り方式による人力発電】──いわゆる『人力発電』の確立なのだ。
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