転生者と蘇生者。勇者を助けたら、望みもしないの転生させれらてた。平和な世の中なんで、元の世界と前世の知識でまったり無双漫遊生活を満喫すること

ゆうた

文字の大きさ
2 / 17

2. 転生

しおりを挟む
死して、肉体より切り離された陽翔の魂は、
イメージするならば漆黒の闇の中にあった。
それが死後の世界かどうか彼に
判断することはできなかった。
ただ意識は明確にあり、自分の生き様を
思い返していた。
しかし、それは今際の際の走馬灯のような記憶の濁流とは
違っていた。
 惰性で過ごしていた高校生活。
誰に期待されるでもなく、打ち込むものもなく、
何事にも努力を怠り、卒業後に働く気もなかった。
専門学校か適当な大学に進学するしか
将来のビジョンが陽翔には無かった。
そんな陽翔が何の因果か分からないが、
この世界に突然、召還された。
そして、人類からの理不尽な期待を負わされた。
最初は、死にたくないという思いと
理不尽な期待に反発するだけだった。
しかし、いつしか世界の救済という思いが
心の大半を占めるようになっていた。
5名の仲間の辛抱強い助けや指導も
陽翔の気持ちに多大な影響を与えていた。
いつしか彼の実力と能力は
他の仲間と遜色ないものまでに成長した。

『まあ、あいつらならやり遂げるだろう』
無味乾燥な人生を歩んでいた陽翔にとって
異世界での数年は、何人にも代えがたい経験だった。
死後の意思がどこに流されていくのか
一抹の不安があったが、己の人生に概ね満足していた。

どろりどろりどりと突然、陽翔は、
自分の意思が零れるような錯覚に捕らわれた。
それは、何かに陽翔の意思がゆっくりと握り潰され、
そこから漏れ出るような感覚であった。
それはまるで腐った蜜柑を拳で
握り潰している様であった。

 少しづつ失われていく意識と記憶の中で陽翔は、
異世界での様々な事を思い出していた。
消えゆく陽翔の心には、恋心を抱いていた女性の
容姿が占めていた。
くそっダメもとでも告白しておけば、良かった。
後悔の念がよぎったが、陽翔の心は、
どこかに全て零れ落ちていった。

不意に瞼が開いた。

瞳に映るのは青々とした雲一つない空だった。
陽は強く、一度開いた瞼を再び、閉じた。
再び瞼を開くと、一人の女性が映った。
視覚から他の情報を得ようとも
身体が思うように動かなかった。
脳裏に泣き叫ぶ声が聞こえている様な気がしたが、
暫くするとその声は弱々しくなり次第に聞こえなくなかった。
陽翔は、自分の置かれた状況を整理しようと、
可能な限りの情報を得ることに努めた。

人の話し声が聞こえる。

聴覚から聞き慣れた異世界の言葉と少し違うが、
理解することはできた。

臭かった。

嗅覚から臭いの下を辿り、それが後方から
漂ってくることを理解した。

じめじめしていた。

触覚から布地に包まれて、想像したくないものが
潰れてこびりついていると理解した。

口の中に水が溜まった。

味覚からそれがごく普通の涎であることを理解した。

両手、両足があり、それを動かそうとするが
いまいち思うように動かなかった。
ひとつひとつを掻い摘んで考察し、
一つの結論に陽翔は達した。

「ぎゃー」と元気よく陽翔は声を出した。
声はまだ、泣き声しか出せなかったが、
そこには陽翔の驚きが含まれていた。

『何故か赤子になっている』

 そう結論付けて、早や5年。
陽翔は、元の世界、前回の異世界での経験を活かして、
この世界で呆気なく死なないように努めた。
魂に刻まれた特殊技能やスキルは、
子供、基礎能力では発動させても
大したことはできなかった。
分からない文字もあったが、
概ね読むことができた。

 この世界は、名前の伝わる6名の英雄が
魔の王を打破した時代から400年の時が過ぎていた。
彼らの名は、ブレッド、ガイグリフォン、
リーリア、ソフィア、オリヴェル、陽翔であった。
その中でリーリアと陽翔が帰らぬ人であった。
彼らの物語を読み終えたとき、陽翔の瞳より
自然と涙が溢れ出た。

「あいつらやりやがったか」

陽翔は夜な夜な書物を読み漁った。
彼らの後の人生を知りたくもあったし、
彼らのもたらした平和の変遷も知りたかった。

「僕のいる国は、そうかブレッドが建国したのか。
うーん、エルフのソフィアは生きていても
おかしくないのに記述があいまいなんだよな」
人心地で書物を前に呟く陽翔だった。
時節、真っ暗な森から魔物の遠吠えが聞えてきた。

陽翔の住むこの地域は、
ブレッドが建国したログリーナ帝国の僻地だった。
陽翔は、子爵の6男だったが、母は、
正妻でなく側室だった。
父は正妻やお気に入りの側室と帝都に常駐しており、
僻地の領地は代官を置いていた。
陽翔の母も帝都にいた。陽翔に貴族としての教養を
教える者は皆無であった。
六男であることから、将来、子爵家を継ぐことも
一部の領地を受け継ぐことが可能性が限りなく低い陽翔に
積極的に関わろうとする使用人は皆無であった。
 それを良いことに陽翔は自由気ままに生活をした。
世界は平和であり、森を徘徊する魔物は弱く、
国家間での争いはほとんどなく小康を保っていた。

「ああいい天気だ。みんな、ありがとう。
もう一度、生きられることに感謝するよ」
この世界で生を受けて、10年がたったある日、
陽翔は青空に向かって、そう呟いた。
無論、青空がその感謝に応えることはなかった。
仲間が勝ち取ったこの平和を陽翔は享受し、
楽しむことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

処理中です...