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97.とある居酒屋での情景4
しおりを挟む「いやなあ、熊須もあの噂を知っているだろ」
「知っているっていうか、
あんなの都市伝説の類に決まってるじゃん」
「けどな、こうしてそれを目の当たりにすると、
ちょっと怖いよな。
運営の遊び心ってレベルの噂じゃないだろ。
そもそもこの噂のせいでゲームの過疎化が
始まっただろう。運営も否定しないし」
「確かに気分のいいもんじゃないけど、
そんなことでき訳ないでしょ。
あんまり脅かすようなことを言うと、
千晴が怖がって愛しのアルフレートに
会いに行けなくなるじゃんよ」
「佐藤さん、一つ聞きたいけど、
ヴェルトゥール王国戦記がホームコンピュータの
画面の一角を占めてない?
それとキャラを削除したり、ゲームを削除することが
出来なかったりしない?」
「ちょっと、やめなって」
莉々子が清涼の発言を妨げようとした。
彼の言ったことは全て彼女のゲーム環境に
当てはまっていた。
ちょっとした設定の問題と軽く思っていた
千晴にとって、二人の真剣な表情が事の深刻さを
悟らせた。
「それはどういうこと?なんかやばいパターン?」
また、二人が押し黙ってしまった。
「ちょっと、気になるでしょ。教えてよ」
千晴が語気を荒げた。
声も大きかったのだろう、周りの客が
彼らの方に視線を送った。
清涼が雰囲気を察して、周りに頭を下げると、
興味をなくしたのか、また、酒を呑み始めて、
自分たちの話題に戻っていった。
「千晴があんまり怖がって、ゲームから
フェードアウトしちゃうと、
また、これと二人になるでしょ。
折角、呑み食いしながらの楽しいイベントが
無くなると思うと、ちょっとね」
流石にあそこまで思わせぶりの二人の態度と
発言を気にしない人間はそうそういないだろうと
千晴は思った。
「まあ、佐藤さんが気になるのも分かるよ。
知る限りの噂は教えるけど、もっと詳しく知りたいなら、
ネットやコミュニティーサイトで調べてみるといいよ」
そこからの呑み会は、何となく盛り上がらずに
おひらきとなった。
千晴は二人と別れるとマンションにそのまま、帰宅した。
清涼と莉々子は、千晴と別れると、河岸を変えて、
さしで呑んでいた。
「いやーあの噂って本当だったんだね。
ちょっと佐藤さんがどうなるか楽しみじゃない?
彼女、アルフレート君にハマっているし」
グラスを呑み干し、次のオーダーをする清涼だった。
「ちょっと、呑み過ぎよ。
千晴がどうこうなったら、私はゲームから撤収かなぁ」
「おいおい、結構な額を課金しているのにまじかよ。
サービス終了まで遊び尽くさないと、無駄金なるじゃんか」
今度は莉々子がグラスを空にして、次をオーダーした。
「でもさ、プレイヤー間で結構、話題になったでしょ。
キャラクターから話かけられて、住所や名前を
伝えらたって話。
結局、調べても何も無かったらしいけどね」
「あーあれか!
その後、そのキャラクターが闇堕ちしたって、話だろ。
どこまで本当のことやら」
ヴェルトゥール王国戦記に纏わる闇の話題で
盛り上がることなく、二人は何となく、
会話を打ち切り、各々、帰宅した。
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