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99.小さな邂逅
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不安に駆られる中で、誠一は久しぶりに啓示を受けた。
心に溢れてくる言葉に支配されることは
無かったが、四六時中、囁かれるのも
不快な気分になるものだなと改めて感じた。
しかし、その言葉は、以前に紡がれた鬼畜の所業のような
言葉でなく、身を案ずる言葉であった。
『体調は、大丈夫ですか?
あなたの本当の名前は何ですか?』
なんだろう、命令でなく、
何か質問されている気がした。
始めてのことで、啓示の意図が分からず、
聞き逃してしまい、ついつい、この屑神に
話し掛けてしまった。
「すみません、突然のことで驚いてしまい、
聞き逃してしまいました。
すみませんが、もう一度、お願いします」
『体調は、大丈夫ですか?
あなたの本当の名前は何ですか?』
今度ははっきりと聞き取れた。
そして、会話が成立していることと、
訪ねられた内容に誠一は、驚いてしまった。
誠一もゲームをプレイしていた経験上、
実際のところは、書き込みをしているのだろうとは
想像できた。
そして、今までのどうしようもなく自分を
苦しめた啓示から、この屑神が何の意図をもって
自分のことを調べようとしているのか分からず、
最低限の回答に留めることにした。
「アルフレート・フォン・エスターライヒ」
誠一は天井を見上げながら伝えた。
『いえ、あなたのその名前ではありません。
ステータスウィンドウに表情されている
もう一つの名前。誠一の苗字です』
天井を見上げながら、誠一は答えに詰まってしまった。
自分がゲームをプレイしていた時の
経験から自分のステータス詳細を
向こう側のプレーヤーは
把握しているだろうと判断した。
ただ解せないのは、キャラクターに
話しかけていることであった。
誠一がプレイしていた時は、思いもよらないことであった。
話し相手のいない陰キャな奴なのか
新しいプレイスタイルなのか判断がつかなかった。
「よく思い出すことができません。
誠一という名前以外に思い出そうとすると
ノイズがかかったように記憶が混濁します。
あなたに時間があるのでしたら、色々と助けて
頂けないでしょうか?」
折角の外部との接触を失うことが
惜しいような気がして、誠一は何とか相手の心を
つなぎとめる様に会話を続けた。
傍から見れば、天井に向かって
話し掛けているようにしか見えなかっただろう。
『働いているので、四六時中、
アクセスはできませんが、ある程度の時間を
割いてゲームをプレイすることはできます。
すみません、今日はもう寝ます』
相手が仕事しているが、日中のみの仕事で
あまりゲームにも興味も無ないことは
会話の端々から理解できた。
会話の成り行きから、何とか好意的な協力を
得ることはできそうな雰囲気であった。
だが、このプレーヤーが誠一に課した啓示は
どれも鬼畜の所業ばかりで、到底、心を
許すことはできなかった。
いつ何時、何がきっかけで、
手の平を返すか分からなかった。
そのため、上手く利用することだけを考えて、
プレーヤーとの繋がりが続くように努めることにした。
会話が終了し、誠一はエントランスホールに向かった。
心に溢れてくる言葉に支配されることは
無かったが、四六時中、囁かれるのも
不快な気分になるものだなと改めて感じた。
しかし、その言葉は、以前に紡がれた鬼畜の所業のような
言葉でなく、身を案ずる言葉であった。
『体調は、大丈夫ですか?
あなたの本当の名前は何ですか?』
なんだろう、命令でなく、
何か質問されている気がした。
始めてのことで、啓示の意図が分からず、
聞き逃してしまい、ついつい、この屑神に
話し掛けてしまった。
「すみません、突然のことで驚いてしまい、
聞き逃してしまいました。
すみませんが、もう一度、お願いします」
『体調は、大丈夫ですか?
あなたの本当の名前は何ですか?』
今度ははっきりと聞き取れた。
そして、会話が成立していることと、
訪ねられた内容に誠一は、驚いてしまった。
誠一もゲームをプレイしていた経験上、
実際のところは、書き込みをしているのだろうとは
想像できた。
そして、今までのどうしようもなく自分を
苦しめた啓示から、この屑神が何の意図をもって
自分のことを調べようとしているのか分からず、
最低限の回答に留めることにした。
「アルフレート・フォン・エスターライヒ」
誠一は天井を見上げながら伝えた。
『いえ、あなたのその名前ではありません。
ステータスウィンドウに表情されている
もう一つの名前。誠一の苗字です』
天井を見上げながら、誠一は答えに詰まってしまった。
自分がゲームをプレイしていた時の
経験から自分のステータス詳細を
向こう側のプレーヤーは
把握しているだろうと判断した。
ただ解せないのは、キャラクターに
話しかけていることであった。
誠一がプレイしていた時は、思いもよらないことであった。
話し相手のいない陰キャな奴なのか
新しいプレイスタイルなのか判断がつかなかった。
「よく思い出すことができません。
誠一という名前以外に思い出そうとすると
ノイズがかかったように記憶が混濁します。
あなたに時間があるのでしたら、色々と助けて
頂けないでしょうか?」
折角の外部との接触を失うことが
惜しいような気がして、誠一は何とか相手の心を
つなぎとめる様に会話を続けた。
傍から見れば、天井に向かって
話し掛けているようにしか見えなかっただろう。
『働いているので、四六時中、
アクセスはできませんが、ある程度の時間を
割いてゲームをプレイすることはできます。
すみません、今日はもう寝ます』
相手が仕事しているが、日中のみの仕事で
あまりゲームにも興味も無ないことは
会話の端々から理解できた。
会話の成り行きから、何とか好意的な協力を
得ることはできそうな雰囲気であった。
だが、このプレーヤーが誠一に課した啓示は
どれも鬼畜の所業ばかりで、到底、心を
許すことはできなかった。
いつ何時、何がきっかけで、
手の平を返すか分からなかった。
そのため、上手く利用することだけを考えて、
プレーヤーとの繋がりが続くように努めることにした。
会話が終了し、誠一はエントランスホールに向かった。
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